「仏教聖典」でおなじみの仏教伝道協会では「BDKシンポジウム」として、今まで仏教に関する講演会を実施しております。
この度は「ブッダはどこにいるのか? ~仏塔・浄土・仏性から考える~」というタイトルで、インド仏教の専門家である僧侶2人をお招きして、講演と対談をおこないます。
仏教の大きな特徴の一つに「多様性」があります。インドから始まり、世界各地に伝わっていくなかで、その土地の文化に根差した、様々な形で教えを伝えてきました。この特徴は、特に日本において顕著です。日本では様々な宗派が存在し、それぞれが多種多様な形で仏陀の教えを伝えてきました。
多様性を特徴とする日本の仏教ですが、よく眺めてみると信仰のあり方について、共通する考え方が浮かび上がってきます。
一つは、私たちの生きる世界(娑婆)とは異なる世界である「仏国土(浄土)」におられるブッダを信仰するという考え方です。例えば、西方極楽浄土におられる阿弥陀仏への信仰(『無量寿経』、浄土宗・浄土真宗)や、霊山浄土におられる久遠実成の釈迦牟尼仏への信仰(『法華経』、天台宗・日蓮宗)などが挙げられます。こちらは、自分の「外」におられるブッダへの信仰だと言えましょう。
もう一つは、私たち全てが「ブッダそのもの(仏性)」を有しているという考え方です。例えば、坐禅や問答を通して、「真実の自己を明らかにする(己事究明)」伝統(臨済宗・曹洞宗など)が挙げられます。こちらは、自分の「内」にあるブッダへの信仰だと言えます。
こうしたブッダをめぐる考え方の違いは、どのようにして起こったのでしょうか?
インドのクシナガラにて、ブッダは80歳でこの世を去ります。それまでブッダをより所としていた弟子たちにとって、何をより所とするのかという点で、大きく二つの態度が生まれました。一つは、ブッダが説いた教え(法)をより所とするという態度です。もう一つは、ブッダの遺骨を納めた仏塔を、「ブッダそのもの」と捉えて、自らのより所とするという態度です。この大きく異なる二つの態度の相克が、後に日本の仏教における「外なるブッダ」と「内なるブッダ」という二つの考え方の源流となります。
この仏塔への信仰は、古代インドから現代のスリランカやタイ(テーラワーダ仏教圏)やネパール(チベット仏教圏)に至るまで、一貫して見られます。日本でも、京都・東寺の五重塔や奈良・薬師寺の西塔・東塔などは、日本の仏教の象徴的なモニュメントとして、現在も人が絶えません。こうした仏塔という場を巡っては、私たちに馴染みの深い経典の中でも、様々な登場の仕方、語られ方をしてきました。
今回のシンポジウムでは、仏塔信仰の専門家でアフガニスタンなど現地のフィールドワークを重ねてきた井上陽先生(浄土真宗本願寺派僧侶)と、仏性思想の専門家で『月刊住職』誌の連載でもお馴染みの鈴木隆泰先生(日蓮宗僧侶)をお招き致します。今回は対談の時間を設けており、異なる立場からのライブ感あふれる対話と、新たな視点の提案が期待されます。
「仏塔から浄土へ」、あるいは「仏塔から仏性へ」。果たして、皆様にとっての「ブッダはどこにいるのか?」。日本の仏教を大きく支えるブッダの捉え方の源流を、インド仏教の専門家とともに尋ねていきましょう。
◆第35回BDKシンポジウム ブッダはどこにいるのか? ~仏塔・浄土・仏性から考える~
日 時 : 2024年7月19日(金) / 18:00-20:30
会 場 : 仏教センタービル(東京都港区4丁目3-14)/オンライン同時開催 ※ZOOM を使用
参加費 : 2,000円
学割:1,500円(申し込み時に学校名・学部名・学年を備考欄にご記入下さい)
※会場・オンライン共に要事前申込/事前支払
定 員 : 会場60名/オンライン 100名
※見逃し配信あり
申込み:https://www.bdk.or.jp/event-2/symposium35.html
【タイムテーブル】
18:00 開会(17:30開場)
18:10 講演1 井上 陽 「外在するブッダとの出遇い~仏塔から浄土信仰へ~」
18:40 休憩
18:50 講演2 鈴木隆泰 「内なる仏をもとめて~仏塔と仏性~」
19:20 休憩
19:30 対談 「ブッダはどこにいるのか?」
20:30 閉会
【講師プロフィール】
井上 陽 (いのうえ あきら)
1970年京都生まれ。龍谷大学大学院博士後期課程仏教学専攻単位取得退学。修士(文学)。Whitman Collge講師(アメリカ・ワシントン州)、相愛大学人文学部准教授を経て、現在、相愛大学非常勤講師。浄土真宗本願寺派僧侶。
専門はインド仏教、特にインドおよびその周辺地域の仏塔信仰の系譜を研究。
著書にThe Sūtra of Contemplation on the Buddha of Immeasurable Life, 2nd Edition(共著:英訳『観無量寿経』)、論文に「インド及びその周辺地域出土銘文の〈衆生〉について」「仏牙舎利攷」「ストゥーパと出家者」など多数。
鈴木 隆泰(すずき たかやす)
1964年東京都生まれ。東京大学工学部・文学部卒業。同大学院人文社会系研究科博士課程中退。博士(文学)(東京大学)。東京大学東洋文化研究所助手を経て、現在、山口県立大学国際文化学部教授。日蓮宗善應院住職。
専門はインド哲学仏教学・宗教学。2004年に日本印度学仏教学会賞受賞。
著書に『葬式仏教正当論』(興山舎)、『内在する仏 如来蔵』(春秋社)他がある。