【お坊さんのための動画配信講座④】オンラインの光と闇

みなさんこんにちは。富山県の善巧寺・雪山俊隆と申します。

お寺のオンライン活用事例として、そのキッカケや現状報告をします。参考になればさいわいです。

配信のキッカケ

善巧寺では、わりと早い段階からお寺のホームページを作成していまして(2003年頃)、当時からオンライン活用を模索してきました。その根幹には、次世代の人たちへ声を届けたかったからです。ご存じのとおり、現代は、都会田舎を問わずに別居がスタンダードなので、お寺からの案内はおじいちゃんやおばあちゃんでストップする場合がほとんどです。

10数年前にショックな出来事がありました。法事の折りに施主へ「息子さんはどうされました?」と聞くと、「いや~あいつは忙しいからね」と返事が返ってきました。そこまでは想定内だったのですが、もう少し聞いていくと、今日法事をやること自体を伝えていなかったのです。忙しくて参加出来ないまでは理解できますが、それを親が先読みして(気を使って)、じいちゃんの法事をやること自体を伝えていないということに、大きなショックを受けました。せめて、やっていることだけでも知っていれば、離れていても、「あぁ、今日は実家でじいちゃんの法事をやってるんだなぁ。もうまる2年かぁ」と、思いを馳せることができます。でも、そのこと自体を知らなければ、じいちゃんのことは頭にもよぎらないでしょう。悲しいかな、現在はこういうことが、珍しくないことになってきていると思います。

一方で、インターネットを使った発信は、当時役員さんたちの反応があまりよくありませんでした。「そういうことに時間使わんと、ちゃんと人に会いにいかっしゃい」とお叱りを受け、それはその通りだと思いネットでの活動はある程度使い分けるようにしていました。

こうして、いつか全世代がネットに繋がるようになった時、もっと有効に使えるようになるだろうと思っていたのですが、ここ数年の状況を見ていると、いよいよ70代の方たちもかなりカバーし始めた印象です。そんな中で今回のコロナウィルスの影響を受けて、法事のキャンセルが相次ぐことが予想がされたため、ひとつの選択肢としてオンラインでの法事参加もできることを案内しました。これは、終息後も活用できるものだと思っています。

先にあげた例のように、遠方にお住いのお孫さんや、寝たきりで病院や施設から出られない人へも、インターネットを介して参加を促せます。ただ、画面越しではなかなか参加意識を持ってもらうのは難しいと思い、ネット参加者には故人へのメッセージを事前に送ってもらうようにしました。法事中に自分の言葉が紹介されると、見方が全く変わってくると思ったからです。

以上、オンラインの可能性に期待を持っている話となりましたが、以下、オンラインの問題点にも触れておきます。

配信には、一方通行(YOUTUBE LIVEなど)と双方向(zoomなど)のやり方があります。いくつか試した結果、理想は双方向の配信方法がよいと思います。特に法事においては、型どおりのおつとめはいつも通りに出来るものの、内容の説明や法話の時にコミュニケーションがないと、とても難しいと思います。ただし、zoomなどを活用して行う場合、事前に参加する方々とテストする必要があり、一組でもうまくいかないと断念せざるえません。ソフトをダウンロードしてもらう工程も人によってはかなりハードルの高いものとなります。

オンラインでは何が削ぎ落とされるのか

オンラインでの法事や法座配信を行ってみて、改めて浮き彫りになったのは、「場力(本堂のもつ空間力)」と「お付き合い(しがらみ)」が削ぎ落とされることでした。本堂の場力は想像以上に大きく、仏様の前にただ座っているだけでも、いろんなことを思い起こしたり、自分を振り返ったりして心を動かす力があります。

また、通常の法座では、「あの人がいるから行こう」とコミュニケーションをキッカケに来られる人や、なんとなくの慣例で来ている人たちがほとんどだったのではないかと気付かされました。お寺側としては、一生懸命につとめる「読経」と「法話」によって、人が来てくれていると思いたいところですが、それはかなりレアケースなのかもしれません。

需要が低い現実

オンラインによって空間力やコミュニケーションが削ぎ落とされた結果、残されているのは、「読経」と「法話」です。それに対する需要は極めて低いと言わざるえません。法事の場合は、故人を偲ぶという大きな前提があるので参加意識が違いますが、法座や法要の中継は、予想以上に厳しいものだということを実感しました。

数字的に言ってしまえば、どこの法要中継も常時10人前後の視聴がふつうで総人数も100人を超えることは少ないです。それもSNSの告知をたまたま見た人が大半だと思うので、門徒さんや信徒さんが見てくれているケースはかなり少ないのではないでしょうか。これは、ネットの利用者が少ないというわけではなく、「ネットに繋げてまで見ようという人がほとんどおられない」ということだと思います。プロスポーツやライブの無観客中継の話題に乗って、お寺でも無参拝中継をしようかという話をよく耳にしましたが、ただ中継するだけでは、「オンラインでも無参拝」になる可能性が充分にあるので、よくよく気を付けたい問題です。

それでもあの人に届けたい!~法座体験談~

それらのことを踏まえて、休止している法座の中継を試験的に行いました。上記で述べているとおり、ただ公開するだけでは誰も見てくれないので、寺報への掲載はもちろん、これまで法座に参加してくれた方の名簿100名ほどに案内を出して、メールアドレスの交換をしている方にはダイレクトメールを出しました。その中で見てくれた人は10人ほどでしょうか。

配信自体は欲張り過ぎたこともあっていろいろと失敗しました。パソコンのパワー不足とWi-Fiの不安定さの影響で映像がカクカクになったり、肝心のお話しでも、反応が見えないカメラに向かって話す難しさにぶち当たり、思ったようには全くいきませんでした。終わった後は、どっと疲れてかなり落ち込みましたが、「見たよ!」の連絡を10件ほどいただいて、なんとか気を取り直しました。今後は、双方の環境が整えば、不特定多数に発信するYOUTUBE LIVEではなく、相手の顔が見えるzoomなどのサービスのほうが適しているかもしれないので、その可能性も探りながら進めていこうと思っています。慣れないことはトライ&エラーを繰り返すしかないので、今後も挑戦していきます。

YOUTUBEチャンネル続々と

僧侶のYOUTUBEチャンネルも急増中です。おそらく、これまでも頭の片隅にネット配信を考えていた人はたくさんいたと思うのですが、「法話は対面で伝えるもの」という考え方と、動画として残すことのリスクを恐れて後回しにしていたんじゃないでしょうか。それが、この緊急事態をキッカケに、結界が壊れて雪崩のように入ってきた印象です。

善巧寺さんのサイトでまとめられている仏教系動画の数々

個人的にピックアップしたリストには40チャンネルほど。おそらく数百チャンネルはかるくあると思います。インターネット創成期の時もホームページを作るのに、クレーム対応やウィルスなど、ネガティブなニュースを鵜呑みにし過ぎて後手後手になりがちでしたが、そういう心配をしている方へ一言申しておくと、
「大丈夫です!よほどのことをしない限り誰も見ませんから!」
いまやSNSに登録するのと同じぐらいの状況になっていますから、気後れせずにどんどん参加して欲しいです。

仏教系動画まとめ>>http://www.zengyou.net/?page_id=5812

善巧寺のチャンネルでは、先代の書籍を朗読しています。これを10回分溜まるごとにCD化して、法座の参加者や希望者へ配布することにしました。YOUTUBEの告知に対する反応より、モノ(CD)をプレゼントしたほうが好反応をもらっています。インターネットは情報を蓄積していくのに適しているため、YOUTUBEにおいても、お寺や仏教の情報を蓄積していくデータベースとしての活用を考えています。

機材・準備について

最後に少しだけ機材について。YOUTUBEでライブ配信をする条件は、まず「インターネット回線」と「パソコン」、そして「カメラ」「マイク」です。カメラとマイクは多用な選択肢があり、画質と音質的には以下のような順番になります。

動画:PC備え付けカメラ < webカメラ < デジカメ&キャプチャー(PCへ繋ぐ機器)
音声:PC備え付けマイク < webカメラ内蔵マイク < 専用マイク

予算との兼ね合いにもなりますが、マイク内蔵のwebカメラ以上を推奨します。善巧寺の場合は、お経や法話を少しでも聞きやすく届けたいことを優先して、「ミュージシャンのためのカメラ」と呼ばれている「ZOOM Q2n」を購入しました。webカメラとして認識するためPCへはコード1本でつなぐことができ、映像もそこそこ良く、臨場感のある音声がとれるので満足しています。このカメラにはマイク入力端子が付いているので、本堂に備えている音響を繋ぎ、既存のマイクや音楽を取り込むこともできます。おススメです!

このカメラは、富山の善興寺さんや福井の長松寺さんも使用しているので、興味のある方はご確認下さい。

尚、ここから先は、映像にテロップ入れたり編集出来るフリーソフト「OBS」や、数台のカメラを操るスイッチャー「ATEM Mini」という機材があったり、カメラ画質を求めれば一眼レフが欲しくなったりと、底なし沼が待っています。そもそも何をしたいんだっけ?と原点に立ち返りながら楽しんでいきましょう!情報交換お待ちしております。

以上、富山より現状報告でした。

彼岸寺は、仏教とあなたのご縁を結ぶ、インターネット上のお寺です。 誰もが、一人ひとりの仏教をのびのびと語り、共有できる、そんなお寺です。