皆さん、こんにちは。私は埼玉県の川越市にある天台宗・最明寺で副住職をしております千田明寛(せんだ みょうかん)と申します。この度、私の住む川越市で行政と寺院と市民団体が手を取り合って「フードパントリー」を開催することになりました。全国で初の試みになるであろう、この取り組みについて紹介させてください。
そもそも「フードパントリー」とはなにか?
皆様は「フードパントリー(food pantry)」という言葉をご存知でしょうか。お恥ずかしながら、私もこの活動に参画するまで全く知りませんでした。
「パントリー」とは英語で食品や飲料を日ごろから備蓄するための場所を意味します。
いま、仏教界で普及してきた寺院からひとり親家庭や、生活に困窮している人に食べ物をお裾分けする「おてらおやつクラブ」、そして子供たちに食事を提供する「こども食堂」を開催する寺院も増えて参りました。
「フードパントリー」もやはり食料品を必要としている方に渡すための活動で、決まった日に決まった会場で事前に備蓄してあるそれらを、提供する支援になります。内容は調味料や、飲料、加工食品、お米や生鮮食品など多岐にわたります。
今回、長きに渡りフードロス問題に取り組み、食品メーカーや農家・個人などから廃棄される前の食品を引き取り、必要な人に届ける日本初のフードバンク、セカンドハーベストジャパン様が川越でのフードパントリーに食品を提供してくださることになりました。
観光地・川越が抱える貧困問題
私の住む川越市は、埼玉県随一の観光地として栄える街です。「小江戸・川越」というフレーズを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。2019年に訪れた観光客数は775万人(長崎市と同等)オリンピックでゴルフ競技の会場になっていることから、外国人観光客も非常に多く、街は観光産業で賑わいをみせる一方で、問題も存在しております。
川越市が2018年度におこなった「子どもの生活に関する実態調査」では、人口約35万に対して最も支援が必要な「困窮層」は市民の約9%(11人に1人)、「周辺層」まで含めるとその数は約28%(4人に1人)の割合までになります。全国の子どもの貧困率が、13.9%(7人に1人)であることを考えると、決して他人事でありません。
そんな中で、川越の様々な市民の方で構成される『なくそう!「子どもの貧困」川越シンポジウム実行委員会』が川越市の「令和元年度提案型市民協働事業」として行政と連携しながら、具体的な支援活動を行ってまいりました。
そして、今回フードパントリーを開催するにあたり、一番ネックになる部分は広い会場の確保だったそうです。無償で借りれて、大勢の人を受け入れることが出来、かつフードバンクから提供された食べ物を開催日まで備蓄できる場所……それらの条件をクリアできる場所として「お寺」が注目されております。
お寺をフードパントリーとしての活用
でも、なぜそこで「お寺」という選択肢で出てきたのでしょうか。やはり一般の方々からすると少し近寄り難い雰囲気があるのも事実だと思います。
実は川越は埼玉県で人口比率で見た時に、一番寺院数が多い寺町です。その数は、65ヵ寺。(参考までに近隣の坂戸や鶴ヶ島、ふじみ野市が平均して5,6ヵ寺)
川越が「小江戸」と呼ばれているのは、昔の江戸のような古い町並みを有していることもさながら、古くから存在する寺院がその景観を構成しているとも言いかえることが出来ます。つまり、この街は寺院が常に人々の身近にあった街でした。
その川越を東西南北の4つのエリアに分割し、各地域で超宗派のお寺を会場にしたフードパントリーの計画が進んでおります。
最明寺がその一つに選ばれたのは、「おてらおやつクラブ」の活動がきっかけでした。最初は一人で行っていましたが、徐々に地域からお菓子を持参してくれる方々が増え、今では市民団体の方々から子ども貧困解決に向けて、何か一緒に出来ないかと声をかけられる機会も増えて参りました。
いよいよ3/28に第1回目のフードパントリーが始まります
お寺を会場にしたのは、その広さだけではありません。フードパントリーの開催日は、お通夜が入らない友引の前日の土日。お寺が確実に使える休日を実施日とすることで、利用者とお寺含む提供者の相互の負担を減らしました。
第一回目の開催は、3/28(土)に西側エリアの最明寺が配布会場となります。ハーベストジャパンからいただいた食べ物を、川越市の児童扶養手当支給家庭の先着60家庭にお越しいただき、欲しい食べ物を選んでいただきます。当日の食べ物を配るボランティアスタッフには、地域の大学生なども巻き込み、地域と連動した動きになりそうです。
先日の川越市長の面談の際にも「川越のお寺がもっとこのような活動に精力的になってくれれば」とのお言葉をいただけたのも、寺町の川越らしさを表していると感じました。
行政と市民団体と寺院が連携した、街を挙げたこの事業。地域に必要とされる寺院へ、寺町の川越の挑戦が始まります。
現在、川越で活動してきた実行委員会の活動の報告集を作成するためにクラウドファンディングも同時に進められております。こちらは「子どもの貧困問題」を知るための入門として、またそれを解決するための「実践ガイドブック」として活用していきたいと考えております。
やはり、いきなりフードパントリーを開催すると言っても具体的に何をしているのか団体なのか、言葉では説明しづらい部分もあるかと思います。市民や企業、寺院の協賛を今後得て行くためにも、自分たちの団体が行ってきた活動の軌跡を、写真などを用いて一冊の本として出版することを目標としました(発行は1000部ほどを予定しております)
宜しければ、この報告書の作成費に向けたクラウドファンディングに是非ご協力のほどよろしくお願いいたします(3月30日締め切り)
・クラウドファンディングサイト