仏教は現代の悩みを解決できるのか?!悩みに対話でこたえる『VS仏教』発売!!!

2019年12月27日、『VS仏教 “ブッタの教え”は現代の悩みに勝てるのか!?』が出版社トゥーヴァージンズより出版されます。この本は人間関係・お金・恋愛・仕事などにまつわる「現代の悩み」に対して、気鋭の僧侶たちが宗派を超えて「法話」をもって解決する。いわゆる法話の本……

だけではないのです。

この本には大きな特徴が2つあります。一つは悩み相談が極めて現代的なこと。ちょっと悩みの一覧を見てみると……

「友人のインスタがうざい」
「働く意味がわからないからニート」
「二次元好きでリアルの女性を愛せない」
「親が毒親で・・・」

と並んでいます。現代社会が生み出す「リアル」な悩みに対してお坊さんたちはどう答えるのか。

もう一つの特徴は、お坊さんの法話の後に「納得がいかない!」とツッコむ相談者たちです。

法話を聞いて「めでたしめでたし」では終わらない。SNS時代だから出てくるコミュニケーション。現代の悩みにお坊さんはどう答えるのか。

今回はそんな『VS仏教』でコラムを書いた青江覚峰さん、企画者の古川哲さん、そして実際に悩みに答えられた細川晋輔さんにお話を伺いました。


—〈相談→法話→対話〉という双方向の法話本、というところが新しいですね。まず、どうしてこのような法話本を作ろうと考えたのですか?企画が生まれたきっかけや、制作に対する想いをお聞かせください。

(古川哲)
まず、青江さんや彼岸寺の皆さんに出会って、様々な方法や取り組みで〈現代に活きる仏教〉を伝える個性豊かなお坊さんがこんなにもいるんだということを知り、お坊さんのイメージが変わったことが大きいと思います。そんなお坊さんの「法話」をまず自分が聞いてみたい、そして多くの人にも聞いてもらいたいという思いがありました。

また、仏教井戸端会議の「お題法話」に参加して、普段法事の時に聞く法話とは違う、ワイワイと盛り上がりながら「法話」を話されているのを見たのが、今回の企画にも繋がっています。お葬式や法事の時に聞く「死」をテーマにした法話だけではなく、普段の生活にも活かせる法話あるんだととても驚き、仏教の智慧を生活レベルで身近に感じることができました。

私たち一般の者にとって近くて遠い存在の「お坊さん」に有難い法話をいただくだけではなく、「対話」をして、どんな関係性を持つことができるのかを読者の方々に探っていただきたいということもあります。「仏教はお葬式の時にだけ」というように思っている方と、「悩み相談」を通して「法話と対話」でどれだけ距離が詰められるのか? お坊さんと悩み相談者(ひいては読者)、双方向での確認作業の場みたいな本になればいいなと。

—タイトルもユニークですが、このタイトルはどんなところに由来しているのでしょう。

(青江覚峰)
「VS仏教」と聴くと思わず仏教と他の宗教を戦わせるの?とか、仏教同士(宗派間で)戦うの?と思うかもしれません。まずそういったところで目を引くのが第一!あざといですね(笑)

でも、実際に戦うのは現代の「悩み」です。もともと仏教は”抜苦”といって人々の持つ苦しみを取り除くことを目標の一つにしていました。そして苦、悩みというものは時代によって少しずつ変わるもの。では、現代の悩みにはどんな言葉が響くのか?仏教の智慧は悩みをときほぐすことができるのか?という挑戦状を叩きつけるような気持ちでこのタイトルをつけました。

—相談を受けて法話をし、さらに対話を重ねるというのはお坊さんにとってもなかなか難しいことだと思いますが、細川さんは実際にやってみて、どのようなことを感じられましたか?

(細川晋輔)
まず、インスタについての悩みをはじめ、現代の人はこんな悩みを持っているんだということを知ることができたのはとても良い機会でした。もっと簡単な悩みが良かったというのはありますが(笑)でも、禅の言葉を選ぶ時間を通して、自分もすごく勉強になりましたね。

今回の本のお話が来たとき、「難しいけれど逃げちゃいけない」と思いました。それもお坊さんの役目だと。教えをしっかり理解していないと、また、好きじゃないときちんと伝えられないものです。そういった意味では、ソムリエみたいな感じでそれぞれの悩みと向き合いました。

また、私の思いとして、仏教を説き伏せるのでなくて「説き尽くしたい」というのが目標なんですよね。「これだ」って説き伏せるのではなくて、機会があれば説き尽くす。仏道を明らかにしていくことを楽しむ、つまり道楽ですね。それができたら、お坊さんとしていちばんいいんじゃないかなと思います。

法話後の相談者との対話については、双方向性というのはあらためて大事だなと思いました。対話によって、私自身も気づかされることがありましたし。一方で、相談者からのツッコミが素朴な疑問であるほど、なかなか困りましたね。お寺に生まれた私自身、「そういうものだ」と当たり前に思っていたことについて、あらためて「それはなぜか?」ということを考える、そして自らを省みる、よいきっかけになりました。

—相談や対話をする中で心がけたこと、気をつけたことなどはありますか?

(細川晋輔)
「門より入るものは家珍にあらず」という言葉もあるように、悩みの答えというのは結局、自分で出さないと意味がないと思います。だから普段、どなたかの悩みをお聞きするときも、私から答えを明確に示すことはなくて、傾聴といいますか、答えが出るところまでお話を聞くようにしています。傾聴の勉強をしなくても、昔のお坊さんはそういったことを自然とやっていたのではないかと思います。悩みに対してただ頷くだけでも、お茶をすすめるだけでもいいのでは、と。

そして答えを私から出さないこと、ご自身で見つけてほしい、ということです。「対話の結果」が大事なのではなくて、「対話の中」に答えがあるのではないかな、と。私との対話の中で相談者の方が答えを導き出してくれたら、と。自分が出した答えがいちばん力を貸してくれるのではないかなと思います。答えは全然示さなくて、背中や香りから学んでいく。「薫習」という言葉もあるように、背中を見て学んでいって自分で気づく、というイメージでしょうか。

—今回6人の宗派の違うお坊さんが登場されていますが、悩みに対する向き合い方など、宗派によって違いや特色など感じた部分はありましたでしょうか?

(青江覚峰)
宗派というか、個人かもしれませんが、違いはたしかにありますね。仏教用語を表に出してお坊さんとして凛とした声が聞こえるようなお話をされる方や、柔らかい口調できついことをお話される方、まるで落語家のような語り口が聞こえてくる方など、本当に読んでいて唸るものばかりです。ぜひ皆様も読みくらべていただきたいです。

—ネタバレ的ですが、現代的な悩みに、仏教の智慧は答えを出せるのか……という部分がすごく気になります。この本を作るにあたって手応えのようなものはありましたか?

(青江覚峰)
正直に言えば、はじめはすごく難しいかと思いました。打ち合わせの段階で出た単語が「二次元」「腐女子」「インスタ映え疲れ」「毒親」と書いてあります。これを見たときに「こんなネットスラングのような言葉、知らない人もいるのではないか?ネットスラングだからこその微妙なニュアンスに対して的確に返せるのか?」と思いました。

しかし、原稿が送られてきたときにそれは杞憂だと思いました。まず感じたことはこの本に出ているすべてのお坊さんに共通することは人の悩みを聞いたときにその本質を捉えることがすごく上手いということです。

—余談ですが、青江さんも悩みを抱えることがおありだと思います。もしこれまで「仏教のこんな教えや言葉に救われた!」というものがあればお教えください。

(青江覚峰)
急に真面目なものを入れてきましたね。ケンユウさん、怖いです。今だから言えることですが、僕はお坊さんになる前、色々と辛いことがあった時期がありました。そのときに出会ったのが中村元先生の『中村元選集』だったかな?とにかくものすごいボリュームの本だったのですが、その中の「龍樹」(大乗仏教の祖とも言われる人)の話を読んだときに、びっくりしたことを今でも覚えております。

この方は歴史の教科書にも乗っているほどの方で、いわばお釈迦様の次に名が上がるほどの聖人である方です。しかし龍樹の物語はひどいのです。詳しくは調べていただければと思いますが、才能を持つ人にも関わらずそれをいい方向に生かさず犯罪に手を染め、多くの悲劇を生み出す。仏教に出会って改心したかと思えばまた色々としでかす。どれだけ才能を持っていても人間堕落してしまうんだと。そんな物語を読んだときに僕は生きていていいんだと言われた気がしたんですね。

どんな聖人でもすごい人でもその魂が清廉潔白なわけではない。だめなところ、仄暗い部分もたくさん持っている。どんな人でもみな同じように悩み、苦しみ、楽な生き方をし、失敗し、後悔し、でも改心したつもりでもまたしでかすものなんだ。と。何度失敗してもいいんだと。そんな救いをいただきました。

—最後にこの本の「ぜひ読んでほしい!」というところや、こんな人に読んでもらいたい!というところがあればお願いします。

(細川晋輔)
一般読者の方には、この本の中の言葉一つでも、何か感じていただけたらうれしいですね。本に載っていない悩みでも、法話や対話の内容を応用して、感じていただけたらいいなと思います。

また、今、僕らがいちばんイメージしなければいけないのは、「お釈迦様が生きていたら」ということかなと思います。「如是我聞」、つまり「私はこのように聞きました」という言葉で多くの経文は始まります。お釈迦様がこう言ったということが経文に書いてあるんです。だから今、お釈迦様が生きていたら、SNSやパワハラなどの問題についてお釈迦様は何て言うのかな、ということを考えていくのが仏教徒にとっても大切なことですし、この本をきっかけに一般の方にも考えていただけたらうれしいなと思います。

—皆さま、丁寧なお答えをいただき、ありがとうございました!


いかがでしたでしょうか。今までにない〈相談→法話→対話〉という双方向の法話本『VS仏教』。悩み相談コーナーの他にも、コラムや青江さんの精進料理のコーナーや、参加しているお坊さんの一人、池口龍法さんの「お寺の掲示板」コーナーがあるなど、盛りだくさんの内容となっています。

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