私は秋田県秋田市にあります日蓮宗のお寺、法華寺(ほっけじ)の副住職を務めております齋藤宣裕(さいとうせんゆう)と申します。
この度、『彼岸寺』でおなじみの松本紹圭さんを秋田へお招きして、どなたでもご参加いただける「人口減少の進む秋田の未来を考えるイベント」をお寺で開催することに致しました。その思いについて寄稿させていただきます。
日本武道館にいる満員の観客を想像してください
突然ですが、みなさん音楽は好きですか?
多くのアーティストが憧れる聖地、東京九段下の日本武道館。その座席数は14,471人だそうです。満員の武道館の様子を想像してください。
私が副住職を務めるお寺がある秋田県は、日本で最も早いスピードで人口が減り続けています。秋田県では昨年3月から今年の3月にかけての1年間でなんと14,319人の人口が減少しています(「秋田県企画振興部調査統計課月報」より)
つまり秋田県からはこの1年間で日本武道館の満員の観客がいなくなっているということになります。これまでは毎年13,000人のペースでしたが、ますます人口減少のスピードが上がっているようです。
この人口減少は最近の問題ではありません。ずいぶん前から秋田で話題にされてきましたが、なかなか良い解決策は見つかりません。
私たちには何もできないのでしょうか?きっと何かできることがあるはずです。
地域を盛り上げ、お寺を盛り上げる
平成26年(2014)には日本創成会議が「消滅可能性都市」を発表して大きな波紋を呼びました。「消滅可能性都市」とは2010年から2040年までの間に20~39歳の女性の人口が5割以下に減少すると推計される自治体のことです。
全国の市区町村の約半数が該当していましたが、秋田県では「大潟村という村以外、すべての市町村が消滅可能性都市に該当する」という報道があり、地元に大きな衝撃を与えました。人口が減るということは他の職業同様、お寺にとっても大きな危機です。お檀家さんをはじめ、地域の方々に支えられて存在するお寺にとって、人口減少とはまさに致命的な問題となります。
そんな課題を抱えて、私は松本紹圭さんが塾長を務める『未来の住職塾』というお寺の経営セミナーに通いました。そこで同じような課題を抱えた全国各地の仲間たちに出会い、一年間悩み考えた結果、自分なりに答えを見つけました。
それは「お寺が地域のハブ(結節点)となり、ご縁結びを続けることで地域とお寺を盛り上げる」ということです。魅力ある街にはきっと人が集まる。仏さまが見守り、古くからそこにあり続けるお寺にはその助けになる力がある、という思いに至ったのです。
お寺での取り組み
それ以来、法華寺では「手ぶらで写経会」「お寺でナイトヨガ」「マインドフルネス(仏教瞑想)の会」「死の体験旅行」「デスカフェ」、地域のみなさんにお寺を活用してもらって行う「無償の学習室あゆむ」「大人のための絵本カフェ」「編み寺」「お寺でテラリウム」、チャリティーTシャツ「キリタンポシティ」など、お寺という場所に興味を持ってもらいながら仏教や地域の人たちとご縁を結ぶ取り組みを続けています。
昨年からは副住職の私が「カレー伝道師」という資格を取得して「花まつりカレー」などのカレーイベントを行ったり、超宗派の「カレー好き僧侶の会」の一員として『ほとけさまのやさしい精進カレー』の販売に携わったり、カレーによって仏教に親しんでいただく活動にも力を入れています。
魅力あるお寺、魅力ある街を目指して活動する中で、秋田商工会議所にも「寺町観光研究会」という部署が生まれました。まさにお寺から地域を盛り上げる活動が、少しずつ形になってきています。
仏教の目的を「自他の抜苦与楽」、自分も他者も苦しみから離れて幸せに生きること、とするならば、きっと仏教の教えにこれからの未来を描く大きなヒントがあるものと考えます。そういう意味でもお寺やお坊さんが、未来のためにできることは少なくないと思っています。
お寺で未来を語り合いたい
地元の方々と交流する中で、こんなことを言われたことがありました。
「人が減るって、そんなに悪いことなのかな。逆に人と人の距離が近くなって、楽しくなるんじゃない?」
目からウロコとはこのことです。
人口が減る=悪いこと=解決すべき問題
と決めつけていた私の中に、爽やかな風が吹いた気持ちがしました。人口が減るのは、たぶんもう誰にも止められないのです。では、人が減った街を、社会をどのように描いていけば良いのでしょう。
地元で人口減少の話題になると、だいたいは未来を悲観して終わってしまいます。そして、みんな悲しい未来のことは考えないように、普段はあまり話をしないような気がします。
しかし未来は必ずやってきます。それならば、みんなで少しでも楽しい、明るい、幸せな未来を描きたい。
お寺にはみんなが集まる「場」があります。そこでは誰も傷つかず、否定されることもなく、誰でもそこにいていい場所です。ホッと安心するお寺という空間で、みんなで思う存分、未来の話をしてみたいと考えていました。そこで今回ご縁が整い、ふたりの講師をお招きすることができましたので、この秋田で、そしてお寺という場所で思う存分「未来」の話をしたい、デザインしたい!と思いシンポジウムを企画しました。
今回の講師のお二人は、ひとりは秋田出身、東京大学大学院で地域づくりを研究なさっている工藤尚悟先生。
もうひとりは「彼岸寺」でおなじみの松本紹圭さん。
工藤先生からは地域づくりのお話とともにグローバルな視点での教育のお話、松本さんからは未来に向けた持続可能な生き方とそれを支えるお寺のあり方のデザインについて、それぞれご講演をいただいてから、参加者のみなさんと心ゆくまで未来について語り合いたいと考えています。
秋田は「日本の未来の姿」
冒頭に書きました通り、秋田は日本で最も早いスピードで人口減少の進んでいる地域です。そして、この動きはこれから日本中に広がり、日本中が直面する問題だと思います。ですから秋田の事例は日本の最先端とも言えます。今回のシンポジウムはきっと秋田の未来だけでなく、日本の未来を描く時間になることと思います。
秋田の方はもちろん、秋田以外にお住まいの方々にもぜひご参加していただけたらうれしく思います。どなたでもご自由に参加していただけます。(シンポジウム終了後には講師の先生方を交えて、楽しい懇親会も予定しています)
お寺でいっしょに明るい未来をデザインしてみませんか?
お寺で未来の秋田をデザインするシンポジウムF
Facebookページ
https://www.facebook.com/events/801754633541614
日時:令和元年6月9日(日)13時〜17時30分
場所:法華寺(秋田県秋田市旭北寺町1-25)
法華寺ホームページ http://www.hokkeji.net
法華寺Facebookページ https://www.facebook.com/akitahokkeji/
日程(予定):
13時〜13時10分 開会の挨拶、日程説明
13時10分〜14時10分 工藤尚悟先生の講演「縮小高齢社会のなかで持続可能な地域コミュニティと次世代への学びのデザイン」
14時10分〜14時25分 質疑応答
(5分休憩)
14時30分〜15時30分 松本紹圭師の講演「未来に向けた持続可能な生き方とそれを支えるお寺のあり方のデザイン」
15時30分〜15時45分 質疑応答
(5分休憩)
15時50分〜16時30分 グループで話し合い
16時35分〜17時25分 全体で話し合い
17時25分〜17時30分 閉会
※その後、懇親会(会場は参加人数に応じて決めます)
参加費:1,000円(懇親会参加費は別途4,000円程度の予定)
定員:50名
お申し込み方法:↓のGoogleフォームから必要事項を記入してお申し込みをお願いします。
https://forms.gle/nWfhSjpdLhwsAnpA8
◆ご不明な点はメールにてお問い合わせください。
お問い合わせ先メールアドレス:info@hokkeji.net
◆全席イス席です。
講師プロフィール
工藤尚悟(くどうしょうご)
東京大学大学院新領域創成科学研究科・助教
1984年秋田県生まれ。一般社団法人アキタエイジラボ・研究ユニットリーダー。アフリカの持続可能な開発のための教育プログラム・共同コーディネーター。東京大学大学院新領域創成科学研究科サステイナビリティ学教育プログラム修了(サステイナビリティ学博士)。2010年より秋田県を主なフィールドとしながら、持続可能な地域づくりをテーマに研究・教育活動に従事。2017年より、秋田とアフリカのフィールドをつなぎ、お互いの多様性から学び合う「トランスローカル・ラーニング」プロジェクトを実施。国内問題として語られがちな縮小高齢社会に対し、国際軸を取り込んだアプローチを展開している。
松本紹圭(まつもとしょうけい)
僧侶・未来の住職塾塾長
1979年北海道生まれ。東京神谷町・光明寺僧侶。未来の住職塾塾長。世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leader。武蔵野大学客員准教授。東京大学文学部哲学科卒。2010年、ロータリー財団国際親善奨学生としてインド商科大学院(ISB)でMBA取得。2012年、住職向けのお寺経営塾「未来の住職塾」を開講し、7年間で600名以上の宗派や地域を超えた若手僧侶の卒業生を輩出。『掃除道入門 SOJI-DO こころを磨く、世界を磨く掃除の教え』(ディスカバートゥエンティワン)他、著書多数。お寺の朝掃除の会「Temple Morning」の情報はツイッター(@shoukeim)にて。