ライバルから、おめでとう!

ネット寺院開基のインパクト

20周年、おめでとうございます。龍岸寺・池口龍法です。

彼岸寺が産声をあげた2003年は、ブログ元年と言われた年。つまり、Webプログラミングができなくても、誰でもがネット上で情報発信できるようになった年です。しかし、IT革命の波が押し寄せ、ネットサービスが世の中のライフスタイルを一変させても、お寺社会は旧態から頑なに変わろうとしませんでした。なぜなら、バリバリ現役を張っていた70代、80代の住職に、突如黒船のように来襲したパソコンを使いこなせるはずもなく、お寺はITとは無縁だったからです。

そんな状況でしたから、超高齢の住職を差し置いて、若手のお坊さんがネット上に自分の考えを綴るというのは、どこか後ろめたい空気がありました。ブログを書くお坊さんもありましたが、たいていは匿名でコソコソ発信するのが常でした。しかし、彼岸寺のお坊さんたちは違いました。彼岸寺を開基した松本紹圭さんはじめ、連載メンバーのお坊さんたちは実名で堂々と、しかも大胆に、仏教のこれからの在り方を模索していました。お寺をとりまく特殊な事情をものともせずに、当たり前のことを当たり前に行っていく姿に、胸のすく思いを感じていた人たちは、きっと多かったはずです。

東の彼岸寺、西のフリスタ

さて、私は、2009年に京都で、宗派を超えて同世代のお坊さんたちと「フリースタイルな僧侶たち」(略称フリスタ)というチームをつくり、同名のフリーペーパーを創刊しました。フリーペーパーで情報発信することによって、ご年配の檀家さんではなく同世代の人々とつながり、一緒にこれからの仏教を作りたいという願いがありました。別に彼岸寺にライバル意識を持って始めたわけではないのですが、私と松本さんの年齢も近かった(松本さんのほうが1歳年上)ために、仏教の未来を担う2つの革新的ムーブメントとして、一緒にメディアに取り上げられたものでした。彼岸寺で活動しているお坊さんが主に関東在住だったので、「東の彼岸寺、西のフリスタ」と比較されたこともよくありました。

なお、私はフリスタの代表を2015年3月で退きましたが、プロジェクトチームはいまも続いており、フリーペーパーの発行は62号を重ねました。私よりもずっと若いメンバーが瑞々しいエネルギーで言葉を紡いでいますので、ぜひ手に取ってほしいと思います。

ライフスタイルにあった供養の形を

フリスタの代表を退いたのと前後して、私はJR京都駅近くの龍岸寺の住職に就きました。紙媒体やSNSなどでの情報発信はもちろん、YouTubeチャンネルを開設するなどして私なりにチャレンジを続けています。加えて、仏教をただ言葉で伝えるだけでなく、どう生活のなかに定着させていくかということも、積極的に取り組んでいます。
家の中心が仏間だとされた時代は、もう過去のものと言っていいでしょう。いまや家族が団らんするリビングこそ、家の中心です。従来の仏壇文化の衰退は、どうしても避けられません。しかしそれでもお世話になった身内を供養したいという気持ちは、不変だと思います。その気持ちに寄り添えるように、仏壇仏具の形を変えていこうと期し。2018年から仏具職人たちと仏具系ポップユニット「佛佛部」を発足させました。京都の仏具職人さんたちが、職種を超えて参加してくださっています。

「佛佛部」の活動のうち、代表的なものをひとつだけ紹介させてください。仏具文化の粋を余すところなく伝えるための4日間の教室「念持仏造立教室」を、2021年から龍岸寺本堂で定期的に開催しています。これは、リビングや寝室にも安置しやすい小さな念持仏を、ご自身の手で心を込めて造立していただくための教室です。おそらくは類例のない教室だと思います。おかげさまで極めて好評で、関東や九州など遠方からはるばる通ってくださっています。

最後に

私の話が少し長くなりました。引き続き、旧習にとらわれずに、私なりにこれからの仏教の形を探求していきます。20年の時を経た彼岸寺さまも、円熟しつつもさらに躍動していかれることを願っています。最近はお坊さんが情報発信するのもすっかり定着しましたが、何かの形で再び一緒に世間の注目を浴びることがあるなら、それは幸せな未来かもしれません。そのときにはいっそう爽やかな風が、現代を吹き抜けていることでしょう。

https://ryuganji.jp/events/categories/beautysalon/

彼岸寺は、仏教とあなたのご縁を結ぶ、インターネット上のお寺です。 誰もが、一人ひとりの仏教をのびのびと語り、共有できる、そんなお寺です。