レポート|築地本願寺のはなまつりで「お釈迦さまが食べたかもしれないカレー」を食べた!

2025年4月5日(土)に開催された、築地本願寺の「はなまつり」

彼岸寺の『日本全国「花まつり」情報まとめ!』記事内でもご紹介していましたが、今回の出店者に「お釈迦さまが食べたかもしれないカレー」を提供するブースがあるとのことで、日下編集長の依頼により東京在住の私、遠藤卓也が取材に行ってきました。

販売開始から2時間で売り切れ!?

お昼過ぎに会場につくと、なんと「既に売り切れ!?」との情報が入ってきました。まさかそこまでの人気とは想定しておらず、取材断念か、、、とドキドキしながら出店ブースへと向かいました。

出店者さんに彼岸寺の取材であることを伝えると、10時に販売を開始して、お昼には完売してしまったとのこと!なんと、、、凄まじい売れ行き、、、遅かった(泣)

しかし、日下編集長が取材の旨を伝えておいてくれたおかげで「取材のための一食はご用意できます!」とのこと。良かった!

後から聞けば1時間近く並んで食された方もいたとか。そんな方々には大変申し訳ないことですが、無事に実食と相成りました。

「かもしれない」でタイムトリップできるカレープレート

「お釈迦さまが食べたかもしれないカレー」はプレートでの提供となっており、カレーの他にも魅力的な料理がのっています。まずは「スジャータがお釈迦様を救った時に捧げたかもしれない」乳粥をいただいてみると、冷たくて甘い。ほんのりスパイスが効いていて、胃に優しそうな味わい。
つけあわせのサブジは辛くないスパイスで炒めた野菜ですが、シャキシャキとした食感が美味しい。
そしてメインとなるカレーは椎茸とチキンのカレー。全粒粉でつくられたチャパティ(薄焼きパン)をつけて食べると、なんともじんわり美味しい。

スパイスの香りがふんだんに感じられるものの刺激は強くなく、プレート全体的に「胃に優しそう」「健康に良さそう」そしてちゃんと、うまい
このプレートをスリランカやインドの古典舞踊を見ながら食べられる贅沢よ、、、(築地本願寺さん、素敵なイベントをありがとう)気分はすっかり2500年前にタイムトリップしてしまいそうでした。

2500年前の人々の味覚と、現代人の味覚はあまり変わっていないのかな?それとも、現代にあわせて調味してくれているのかな?想像を巡らせながら、今回の出店ブース「お釈迦さまが食べたかもしれないカレー製作委員会」の中心人物である株式会社食欲の竹中直己さんにインタビューをお願いしました。

インタビュー|竹中直己さん(株式会社食欲)

遠藤卓也(以下 遠藤) すごく美味しかったです!

竹中直己さん(以下 竹中) ありがとうございます。カレーイベントはいくつも経験してきていますが、その中でも今回はめちゃくちゃ反応が良かったです。

遠藤 「お釈迦さまが食べたかもしれないカレー」は初めての試みなのですよね?

竹中 そうですね。前からちょっとやってみたかったのですが、例えば「食で旅をする」と言った時に、当然 ”移動” という意味での旅もありますが、”時間”という意味もあるなと思っていまして。それで、”過去の食事” とか ”未来の食事” ということに興味があって、”過去の食事” ならば再現できると考えたんです。

遠藤 ”過去の食事”再現の一つとして、「お釈迦さまが食べたかもしれないカレー」に着手されたと。

竹中 紀元前から続くアーユルヴェーダ(インド医学)を基にした食文化の文献や論文はいくつかあります。それを読み比べたり、ネパール密教の聞き取り調査をしたりして、当時使われていた材料だけでレシピを作りました。ただ、当時の調理法をそのまま採用すると現代人にはイマイチかもしれないなと思って多少アレンジは加えています。

遠藤 現代のカレーと大きく違うところは?

竹中 まず、当時はインドに唐辛子が伝来してないので、唐辛子は使っていません。あとウコン(ターメリック)はまだ食用としては使われていなかったそうです。服の染料としては使われていたみたいですが。それとトマトですね。現代のカレーではベースとなるトマトですが、トマトも当時はインドに伝わっていませんでした。

遠藤 唐辛子、ウコン、トマトががないとなると、だいぶ違いますよね。カレーの概念が。

竹中 油とかも、当時はどうやらごま油だったらしいんですよ。あとはマスタードオイル。今回はごま油にマスタードオイルを混ぜて使いました。

遠藤 スパイスとしてはどのようなものを?

竹中 コリアンダーは昔からあったようです。パクチーの種ですね。あと、クミン。あったかどうか怪しいとは言われているのですが、文献には使っていたような記述もあるようです。
あと、共通してよく言われるのがヒハツです。沖縄ではヒハツとか、ヒバーチって言われたりするんですが、海外だとロングペッパーと呼ばれる、ちょっと香りが独特な胡椒です。カレーにそのままパウダーで引いて使っちゃうと合わない感じがしたので、粉じゃない状態のホールスパイスを細かく折って油につけて、そこでジュワーッとやってから最後仕上げにかける、そんな工夫をしたら美味しくなりましたね。

遠藤 やはり現代人の口にあうように調味されているわけですね。

竹中 そうですね、生姜を強くしてみたり、、、でもそれくらいです。だから意外と、2500年前にお釈迦さまが食べていたのはこんな感じだったのかもれない(笑)

仏教の ”寛容” さに共感

遠藤 今回、築地本願寺で出店となったきっかけは?

竹中 以前から「お釈迦さまが食べたかもしれないカレー」を作ってみたいという思いはあったのですが、築地本願寺のお勤めの方と仲が良くて、話をしてみたら面白がってくれたので。

遠藤 そんなご縁があったのですね。花まつりというのがちょうどいいですよね。お釈迦さまの生誕をお祝いするパーティーなので。
今日実際に販売してみて、感触はいかがでしたか?

竹中 食べやすかったと言っていただけることが多くて、ちょっと淡白な感じの味で派手さがあまりないからどうかなと思ったのですが、意外と好評で良かったです。
あと、お子さんでも全然美味しく食べれたって言っていただいたので、イベントにもぴったりな感じになってよかったなと思っています。

遠藤 今後の展開はどうお考えですか?

竹中 今回、本当に反響が良かったのですが、SNSを見ていると「食べに行けなかった」という声も多かったので、レトルトでの商品化をクラウドファンディングで考えています。その時は応援宜しくお願いします!

遠藤 いいですね!

竹中 私はどちらかというとイベントをやるよりも企画するほうが本業なので、商品開発や食にまつわるコンテンツ制作といったフードコンサルティング的な仕事が多いんですね。ですから今回のことを商品開発に活かしたり、あとはこれを機にイベントとかもやっていけたらいいなと思っています。

遠藤 お坊さんとのコラボレーションはいかがでしょう?

竹中 機会があったらやってみたいですね。

遠藤 Xで人気のカレー坊主さんとか(笑)お繋ぎできますよ。

竹中 あ、カレー坊主さん。Xでこの企画のことを「すごい」と言ってくださってて。でも長崎にいらっしゃるから築地まではなかなか来れないよなあと思ってたのです。タイミングあえば、いつか一緒に何かやりたいですね。

遠藤 はい、この企画にぴったりのお坊さんだと思うので、コラボが実現したら嬉しいです。
最後に、彼岸寺の読者の皆さんにメッセージがあればお願いします。

竹中 私は割と「現地のレシピを完全再現する」というタイプではなくて、食にもっと色んなカルチャーが混ざったりしたほうが良いと思っているんです。仏教も同じように ”寛容” であると思うので、「何かを禁止する」ということではなくて「形を変えていく」ような”寛容” さも持つ、仏教のマインドにシンバシーを感じています。だから、お坊さんとイベントやったら楽しいかもしれない(笑)

遠藤 それは楽しみ!その際には私もぜひ遊びに行かせてください。今日はありがとうございました!


関連リンク】
・竹中 直己  Instagram

・株式会社食欲 WebXInstagram

・カレー坊主(吉田武士さん) X

2003年より東京・光明寺にて「お寺の音楽会 誰そ彼」を主催。地域に根ざしたお寺の ”場づくり” に大きな可能性を感じ、2012年に仲間たちと「未来の住職塾」を立ち上げる。全国に広がる受講生のネットワークを活かし、各地のお寺さんを訪ねて事例調査・執筆・講演等を行ない、時にお寺の音を録音する。現在、最も力を入れているのは音にフォーカスした新しい巡礼の形「音の巡礼」プロジェクトと、Podcast番組「Temple Morning Radio」の編集・配信。著書『お寺という場のつくりかた(学芸出版社)』、『みんなに喜ばれるお寺33実践集:これからの寺院コンセプト(興山舎)』。