TikTokで僧侶が1分法話をしてきて感じたこと

1分という短い時間で、私たちは何ができるでしょうか。熱いコーヒーを飲むには短すぎるかもしれません。しかし、急いだら般若心経を読むことはできるかもしれません。

では、1分で法話を聞くことは可能でしょうか?

こんにちは。兵庫県姫路市にあります天台宗正明寺の小林恵俊と申します。この度「さらりと生きてみる ―自分がほどける1分法話」という本を出版いたします。

1分ほどで読める短い法話を100個収録しております。少しばかり、この本を出版するに至った経緯と思いについて書かせてください。

TikTokでの法話

私は2020年からTikTokという動画視聴アプリを使い、仏教に関する話をしています。同じく動画を視聴するアプリとしてはYouTubeが有名ですが、TikTokとは大きく性質が異なります。YouTubeは自分が見たい動画を選んで視聴するのに対し、TikTokでは様々な動画が無差別にユーザーのもとへ流れ込みます。ユーザーは気に入った動画を見るか、気に入らなければスワイプして次の動画に移ります。動画作成者の間では「TikTokは最初の2秒が大事」と言われており、興味を引き付けることが重要視されています。そのため、短い動画や動きのある動画が人気です。今は10分までの動画が投稿できますが、以前は1分までの制約があった時もあり、刹那的な楽しさを提供するアプリと言えるでしょう。

このようなTikTokで、仏教の話を短い時間、約1分で行うことにしました。初めは聞いてくださる方がいるか不安でしたが、大きな反響がありました。2023年現在、フォロワーは12万人を超えており、短い内容であっても、共感を得て楽になったり、仏教に触れて新たな視点と共に前へ歩むようになったというお声をいただきます。

現代社会の苦しさ

今回の書籍「さらりと生きてみる ―自分がほどける1分法話」というタイトルには、流れる水のように生きられればいいなという願いが込められています。

TikTokのアプリは動画が流れてはスワイプされ、次へ次へと動画が移り変わっていきます。その様はまさに水の流れのようです。しかし、集う人々の心はさらりと流れゆくものとは言えないかもしれません。

投稿される動画はキラキラした世界を映し出し、「#バズりたい」という文字が並びます。「こうなりたい」という願望が「こうでなければならない」という圧力に変わり、自分の理想と現実のギャップに苦しんでいるようにも見えます。これはインターネット上だけでなく、現代人全般の状況かもしれません。

こうした状況を受け、今回の書籍の中では、「苦しみ」について書いた項目があります。

「こうあってほしい」という自分の理想と、現実とのギャップに苦しみが生まれるのかもしれません。だから「こうあってほしい」の心が強くなればなるほど、現実とのギャップは大きくなり、苦しみは強大なものとなります。

「さらりと生きてみる ―自分がほどける1分法話」(43ページ「16 なぜ苦しい?」)

この中では「少欲知足」という言葉を紹介し、「こうあってほしい」の心を過度に増やしすぎて苦しみのギャップを大きくしないことをお話ししています。

また他にも、自分の理想とする姿ではないところに尊いものがあることも紹介しています。

社会的に成功しているとか、健康とか、そういった条件付けられた尊厳だけではありません。もっと基本的な、一人の人としてその存在が尊いのです。

「さらりと生きてみる ―自分がほどける1分法話」(92ページ「39 自分を尊ぶ」)

生きる道は1つじゃない

「人生ってなんですか?」そんな質問をコメントなどで受けることが多くあります。みんな自分の人生に、何か意味を持たせないといけないと感じているのです。

確かに宗教者ならば、生きる道を示す存在であるべきかもしれません。しかし仏教ってただ一つの道を示す教えではないと思うのです。『法華経』というお経には「一乗」という言葉が出てきます。一つの乗り物で、全ての人が仏様の世界へと至るのだと言います。しかしこれは、全員を同じ一つのバスに乗せて目的地へ向かうイメージではありません。それぞれ皆が目的地へと歩む姿を包む大きな乗り物、それが一乗です。

「こう生きないといけない」という束縛から解放されて、この瞬間に心を開いて自由に生きられれば、生き方はたくさんあって良いはずです。その人が生きた道。それが人生だと思うのです。そんな思いが「さらりと生きてみる ―自分がほどける1分法話」というタイトルに反映されています。

この本を通じて、皆様が少しでも魅力的な仏教の教えに出会えたら、それ以上の喜びはありません。是非手にとってご一読いただければ幸いです。


著者プロフィール

小林恵俊(こばやしえしゅん)
天台宗正明寺法嗣(ほっし)。1991年、兵庫県生まれ。天台宗の僧侶育成機関である叡山学院にて専修学科を修了後、2017年より姫路市の正明寺で法務に従事するかたわら、法話による伝道を行う。2019年には「H1法話グランプリ〜エピソード・ZERO~」にて審査員奨励賞。2022・2023年「一から学ぶ日本の仏教」天台宗編講師。2020年よりYouTubeやTikTokを通じて法話を発信。TikTokのフォロワーは12万人を超える。

TikTok:https://www.tiktok.com/@eshunsame
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCQkZuC9qSb3WWfJxmZS1rKw
X:https://twitter.com/eshunshomyoji

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