奈良県いかるがの里を舞台に綴る生死の記録。お坊さん監督によるドキュメンタリー「肩を寄せあって」が完成。

私は奈良県斑鳩町にて融通念佛宗の僧侶・横田丈実と申します。法隆寺に程近い浄念寺というお寺で住職を務めながら、映画監督もしております。

以前にもこの彼岸寺さんにて、監督した映画をご紹介いたしましたが、この度新たに映画『肩を寄せあって』が完成し、ご案内をさせていただきます。

私は小さい頃よりとにかく映画が好きでした。中学生の頃には祖父の引率で大阪に黒澤明監督作品を観に行ったこともありました。高校生になってもその熱は冷めず、龍谷大学仏教学科に在籍中にとうとう自分で監督し、映画を作り始めました。

大学卒業後は父と共にお寺の法務に勤しむことになったのですが映画製作は続けてきました。いつの間にか20代、30代を過ぎて現在57歳。今回の新作『肩を寄せあって』が17本目の作品となります。

『肩を寄せあって』の起点は1999年の早春。お寺のとなりにテントを建て映画上映会を催しました。観客として参加してくれたのは近くに住む村人の皆さん。普段から田んぼ仕事に旅行にと、仲の良い20人でした。

上映会から20年が経った2019年。ふと、あの時に上映会に集われた皆さんのその後を映像で記録することに思い至りました。当然ながら亡くなっている方も多くおられ、そんな方はご家族にお話を伺い、思い出を紡いでもらうことにしました。

私の父も上映会の観客のひとりでした。20年後の撮影時は肺病を発症して入院中でした。昭和6年生まれ、戦後を逞しく生きた人生。しかしゆっくりと最期の時を迎えようとしている……そんな父の臨終から葬儀の光景も作品には納められています。それもひとつの弔いであると考えました。

『肩を寄せあって』のタイトルには、「共に」という思いを込めました。「共生(きょうせい)」という教えがあります。人が共に生きること。持ちつ持たれつと表現したりもします。尊い教えです。一方で、これはある宗教学者の先生が話されていたのですが、人は「共死(きょうし)」でもあるんです。共にいつかは亡くなってゆく存在でもある、ということです。少し冷たく聞こえるかもしれません。だけどそこに安らぎもあるのではないかと、私は思うのです。共に亡くなってゆく存在、だからこそ目の前の出会いが大切に思えてくる――

そんな二つの意味の「共に」を、この映画から感じていただけたらと思います。

映画の上映は、4月より奈良市にあります「青丹座」から始めて行く予定です。また各種の上映会への貸し出しも対応させて頂きます。貸し出しのご希望の場合には、ご試聴いただくことも可能ですのでお気軽にご相談ください。

多くの方にご覧いただけましたら幸いです。作品の詳細については、ホームページをご覧ください。


◆映画『肩を寄せあって』

監 督 横田丈実
撮 影 横山健二
音 楽 島田篤
録 音 横田敬子
出 演 清水順子 中野満代 池元秀次 池元幸子 安村弘 横田兼章 他
宣伝美術 西原楓 サトリデザイン
劇中写真集 秋山亮二『なら』
2023年/デジタル撮影/16:9/カラー/ステレオ/上映時間50分

【上映会のご案内-事前申し込み制-】
会 場 ならまちシアター青丹座 奈良市下御門町4eリュエル2階
日 時 2023年4月5日(水)・9日(日)・12(水)・16日(日)・19日(水)23日(日)
    5月9日(火)・14日(日)
    13:30上映開始 *開場は30分前
お申し込み 「肩を寄せあって」公式サイト〈上映会お申し込みフォーム〉よりご登録ください 
https://www.katawoyoseatte.com

◆監督 横田丈実プロフィール
1966年に奈良県斑鳩町の浄念寺に生まれる。龍谷大学仏教学科在学中より映画製作を開始。1993年に『蝸牛庵の夜』がぴあフィルムフェスティバルに入選。それ以降も斑鳩で僧侶として暮らしながら映画づくりを続けている。近年は遺影写真やグリーフケアなどお坊さん監督ならではの題材が増えてきた。17本目の作品となる『肩を寄せあって』は、普段は衣姿で接している村人たちを記録したドキュメント。
浄念寺住職。融通念佛宗布教師会会長として法話活動にも取り組んでいる。
http://yokotatakemi.com

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