「大仏建立」ならぬ「大仏修復」。地域に伝わる大仏の修復クラウドファンディング

こんにちは。私は地域文化財の修復や保護の支援をおこなっている(株)文化財マネージメントの宮本と申します。

ここ数年、なにか自然災害や国難と思えるようなことがあると、ネット界では「大仏建立しよう!」ということがよく言われます。彼岸寺の読者の皆さんもどこかでご覧になったことがあるのではないでしょうか。「大仏建立」というこの言葉、「建立」は一般に建物を建てるときに使う言葉で、大仏を含めた仏像を造るのは「造立」。つまり「大仏造立」が適切な言葉なのですが、大仏建立という言葉として昨今はインターネット・ミーム(インターネットを通じて人から人へ広がってゆく文化・行動)として定着している感があります。

言葉としての適切さはさておき、そもそもなぜ自然災害や国難に対して大仏を造ろうという話が出てくるのでしょうか。奈良時代の8世紀前半には疫病や飢饉や地震、さらには反乱などがあり、そうした社会不安を取り除き仏教の力によって国を安定させるために、聖武天皇が奈良の東大寺に廬舎那仏、すなわち大仏の造像を発願した、ということがありました。大仏建立はそうしたことを下敷きにしたネットミームであるわけです。

大仏建立というネットミームは、2015年には現在のような形となっていたようです。その後2018年には台風19号による水害や北海道胆振東部地震など、各地で災害が発生し多大な被害があったたことで、大仏建立は頻繁に使われ定着しました。そしてそうした状況を受け、「みんなで大仏建立ボタン」というウェブアプリが作られるなど、広がりも生まれます。2020年以降のコロナ禍という人類の未曽有の危機においても、やはり大仏建立という言葉がよく聞かれるようになりました。前述の「みんなで大仏建立ボタン」もコロナ禍でユーザーを大きく伸ばしているそうです。

コロナ禍と大仏建立、ということに対する真正面からのアンサーとしては、僧侶でアーティストである風間天心さんとアーティストグループ「German Suplex Airlines」による「コロナ大仏造立」のプロジェクトが挙げられるでしょう。これは、新しい大仏造りを企画し、コロナ禍による人々の不安や怒りを浄化し、前を向くためのシンボルとする、というものです。具体的にはプロジェクトは2段階に分かれ、 第1弾で全国を法要して回る「勧進キャラバン」、 第2弾で実際に大仏を造る「コロナ大仏造立」があり、実際に法要をおこなう勧進キャラバンが全国各地でおこなわれました。

【コロナ大仏】を造立したい。みんなの心を前向きにするためのシンボルに!
https://camp-fire.jp/projects/view/273684

こうした動向に対して、現在私たちが取り組んでいるプロジェクトは、大仏建立ならぬ「大仏修復」です。埼玉県熊谷市の「平戸の大仏(おおぼとけ)」を修復するためのクラウドファンディングを、「源宗寺護持会」代表の藤井利枝さんと、(株)文化財マネージメントの私、宮本との共同で実施しています。私は今までも、山形県、静岡県、岩手県の地域の仏像を修復するためのクラウドファンディングをおこなってきておりまして、今回はその第4弾です。対象は、熊谷市の平戸にある源宗寺に安置され、平戸の大仏として知られる2体の巨大な仏像です。

●平戸の大仏|熊谷市に江戸時代から伝わる3.5mの仏像を修復したい!
https://camp-fire.jp/projects/view/452077

向かって右側の像が「薬師如来坐像」 、左側が「観世音菩薩坐像」。像の高さは3.5m、台座を含めると4mほどにもなる木造の仏像で、江戸時代初期(17世紀)に制作されたものです。埼玉県内の木造寄木造の仏像としては最大級の大きさであり、熊谷市の文化財にも指定されています。

人と並んだ大仏

大仏が安置されている源宗寺の本堂は老朽化が進んでおり、像の保存にも支障が生じ始めていたために建て直しをすることが計画されました。その際に、大仏のほうも経年劣化によって構造の上の危険が大きいことが判明したため、修復する必要が生じました。しかし、先行しておこなっていた本堂建て直しに多大な費用が掛かっており、大仏の修復までは資金が至らない状況です。そのため、今回クラウドファンディングを試みている次第です。

リターン(返礼品)には、「支援者様のお名前を和紙に書いて仏像内に納入」というものや修復報告書などもご用意しております。また、熊谷銘菓「軍配瓦せんべい」に大仏をデザインしたもの、大仏デザインラベルの日本酒、源宗寺本堂の古瓦、さらに、大仏から失われてしまっている持物(薬壺、蓮華)の1/10サイズのレプリカといったリターンもございます。

リターンの大仏持物レプリカ

平戸の大仏は聖武天皇が造った奈良の大仏と比べるとだいぶ小さいですし、全国的に知られた像とはいえません。しかしながら、地域の大仏に向き合い、修復することによって再びその力を取り戻してもらい、このコロナ禍を切り開いてもらうというのも、昨今の大仏建立に対する一つのアンサーといえるのではないでしょうか。

最後に今回共同でプロジェクトをおこなっている源宗寺護持会の藤井さんからのメッセージです。

源宗寺は、私の先祖である藤井雅楽之助が17世紀に開基したお寺です。薄暗い本堂には薬師如来と観世音菩薩の二体の木彫の仏像が鎮座し、その大きさは4mほどあり圧倒的な存在感があります。二体の仏像は熊谷市の有形文化財に指定され、「平戸の大仏(おおぼとけ)」と称され長年地域に親しまれてきました。医者もいなかった時代、祈ることで救われると信じ、多くの人々がこの大きな仏像に参拝し大いなる信仰を受けたと伝えて聞いています。また仏像の胎内から薬の秘伝書が発見され、それを調剤した神経痛の妙薬が評判となり、私が子供の頃にも買い求める人がいたほどです。

その仏像を守る本堂の保存修理事業が進められていますが、それに伴う調査によって、仏像の劣化が著しく、いつバラバラになってもおかしくない状況とわかりました。埼玉県内最大規模、全国的にも希少な平戸の大仏を修復し後世に伝え残すため、何卒皆様のお力添えをお願いしたく存じます。

源宗寺護持会代表 藤井利枝

平戸の大仏|熊谷市に江戸時代から伝わる3.5mの仏像を修復したい!

期間 :2021年9月14日~10月29日
対象 :埼玉県熊谷市 源宗寺 木造薬師如来坐像・木造観世音菩薩坐像(平戸の大仏)
目標額:210万円
サイト:https://camp-fire.jp/projects/view/452077

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