「正信偈」を絵本に!『絵ものがたり正信偈2 インドから中国へ ひかりを伝えたお坊さま』発売。

浄土真宗で一番ポピュラーなおつとめ『正信偈』。浄土真宗の開祖である親鸞聖人がお経や七高僧と呼ばれるお坊さんの書物を引用しまとめたもので、厳密にはお経と区別されますが、お経同様に大切にされ、親しまれています。

この『正信偈』を絵本にした『絵ものがたり正信偈2 インドから中国へ ひかりを伝えたお坊さま』(文=浅野執持 解説=釈徹宗 絵=藤井智子、加藤正、麻田弘潤〈法蔵館〉)が出版されました。9月27日からオンラインストアや全国の書店での販売が始まります。

この作品は、発行部数1万2千部のヒット作となった前作『絵ものがたり正信偈 ひかりになった王子さま』から8年ぶりとなる続編になりますが、前作は、彼岸寺のアートディレクターを勤めた市角壮玄さんがイラストを担当し、『正信偈』の前半部分、南無阿弥陀仏の誕生のものがたりが中心となっています。

右が前作『絵ものがたり正信偈 ひかりになった王子さま』

そして続編にあたる本作『絵ものがたり正信偈2』では、七高僧と呼ばれる7人のお坊さまのうち、インド、中国の3人が、南無阿弥陀仏と出会い、どう解釈し、どう伝えたかという部分を描いたもの。

今作の特徴は、3人の僧侶イラストレーターが、絵を提供しているところです。インドの龍樹菩薩の場面は、藤井智子が繊細な切り絵で表現。同じくインドの天親菩薩の場面は、加藤正さんの水彩画。表紙も加藤さんの作品です。そして最後、中国の曇鸞大師の場面は、麻田弘潤さんの消しゴムはんこで表現されています。一冊の絵本の中に、3人の僧侶イラストレーターのオムニバス作品がおさめられているようなユニークな構成です。

それぞれの個性があらわれたイラスト

絵本の制作した浅野執持さんに、続編を制作されるにあたっての経緯をお聞きしました。


浅野執持さん

「前作のイラストをご担当いただいた市角さんは、彼岸寺のデザインやイラストを手掛けていたということもあり、メールや電話、また何度か実際にお会いする中で、『正信偈』の言葉を咀嚼してくださり、南無阿弥陀仏の背後にある「ものがたり」としての世界観を見事に表現くださいました。

続編にあたる今作は、教義的なことがらが中心で、「ものがたり」として絵本で表現することは難しいと当初考えていました。そこで、私からこのように表現して欲しいと依頼するのではなく、浄土真宗や七高僧の教義を理解している方に表現いただければと考えたのです。僧侶の中にもたくさんイラストを制作されている方がおられます。その中で、交友があり、特に私がファンでもある作家さん3人にお願いしました。私自身どう表現してもらったら良いかわからないような教義に関わる言葉を、それぞれの手法で見事に表現くださいました。

そして、3人のお坊さまに関わる場面をつなぐ形で、釈徹宗先生に解説文を添えていただきました。この解説文は、3つの要素(①三祖それぞれの時代背景や人物像 ②仏教通じての功績 ③親鸞聖人の受け取り)を、わかりやすくレクチャーしてくださっています。この解説文のページにも、イラストレーターさんの作品が添えられて、全体としてのつながりを持たせています。
本来は目に見えない世界が、現代の感性でビジュアル化されています。作品を手に持ち、直に触れるという「絵本」という形態ならではの良さもあると思います。普段は、お寺やお仏壇に向かって対面する仏さまのお姿だと思いますが、この絵本ではもっと近くにそのはたらきを、言わばプライベートなエリアで感じていただけるのではと思っています。」


さらに、今回の絵本のイラストを担当された3人のイラストレーター(藤井智子さん、加藤正さん、麻田弘潤さん)に、実際に制作する中で苦労されたことなど伺いました。


藤井智子さん

「勝手に聞いた気になっていたけれど、いざ見たことのない世界を描くことに緊張しました。例えばあの有名なジブリ作品の中に出てくる場面は、植物一つまで、現実にあるものを忠実に再現していると教えてもらったことがあります。その為、今回の絵本も浅野先生にもご協力いただき、資料が残っているものを集め、出来るだけ不自然にならない様、でもどこかワクワク出来るよう物語の挿絵としての役割を果たせたらと思い奮闘しました。

とても素敵な一文一文なので是非声に出して読んでいただきたいです。また、絵本の中に様々な動物が出てきたりするので、是非どこに動物たちが隠れているか探しながら、楽しんでいただければと思います。」


加藤正さん

「個人的には、「一心」について書かれたところの絵が印象深いです。なかなか形になりそうになく悩みましたが、浅野さんとやり取りしながら、自分でも思いがけない形に描き上がりました。」


麻田弘潤さん

「前回の絵本はみんな大きな法要などで朗読会とかをやっていたので、続編のイラストをご依頼いただいてとても嬉しかったことを覚えています。

ただ他のお二人のイラストと比べると、消しゴムはんこはどうしてもぼんやりとした印象になってしまうので、その中でどうやって作っていくのかは苦労したところでした。」


9月18日には、刊行記念対談『絵ものがたり正信偈2』が瓜生崇さん(真宗大谷派玄照寺(滋賀)住職)の司会、釈撤宗さん、浅野執持さんとで持たれました。YouTubeで対談の模様がご覧いただけます。絵本の見どころや制作の裏話など語られています。絵本と合わせてご覧をいただくと、さらに味わいが深まると思います。


彼岸寺とも縁の深い加藤さんや麻田さんの作品が登場しているということで、浄土真宗の方だけでなく、多くの方にお読みいただきたい一冊となっております。皆さま書店でお見かけの際には、ぜひお手にとってご覧くださいませ!

●プロフィール

浅野執持(あさの しゅうじ) 浄土真宗本願寺派万福寺(愛媛)副住職 本願寺派布教使広島仏教学院講師 元大三島美術館学芸員   

釈徹宗(しゃく てっしゅう) 宗教学者 相愛大学教授 浄土真宗本願寺派如来寺(大阪)住職 

藤井智子(ふじい さとこ) 本願寺派僧侶・布教使。1987年福岡生まれ。真宗大谷派政淳寺(群馬)。yogaインストラクター・フリーデザイナー 切り絵作家

加藤正(かとう ただし) 浄土真宗本願寺派法珠寺住職  妖怪をモチーフにした木版画、水彩画、ペン画のイラスト作品等を制作 京極夏彦著「妖怪の理 妖怪の檻」装画

麻田弘潤(あさだ こうじゅん) 浄土真宗本願寺派極楽寺(新潟)住職 本願寺派布教使消しゴムはんこ作家 著書に「気になる仏教語辞典(誠文堂新光社)」他

彼岸寺は、仏教とあなたのご縁を結ぶ、インターネット上のお寺です。 誰もが、一人ひとりの仏教をのびのびと語り、共有できる、そんなお寺です。