東日本大震災で被災した「不動明王三尊像」、10年目の修復クラウドファンディング

こんにちは。私は地域文化財の修復や保護の支援をおこなっている(株)文化財マネージメントの宮本と申します。

私は現在、仏像修復クラウドファンディング第3弾となる、岩手県大槌町の「不動明王三尊像」修復プロジェクトをおこなっています。

これまでも、仏像彫刻の修復のためのクラウドファンディングとしては日本初となる山形県河北町永昌寺の木造十六羅漢像のプロジェクトや、静岡市建穂観音堂の木造地蔵菩薩像のプロジェクトをおこない、仏像修復のための支援をおこなってきました。これらは、以前に彼岸寺でも取り上げていただきました。

江戸時代から山形に伝わる、運慶の流れをくむ仏像を修復したい!
https://readyfor.jp/projects/eishoji
静岡市の幻の寺・建穂寺に伝わる400年前の仏像を修復したい!
https://camp-fire.jp/projects/view/8706

第3弾となる今回は、「NPOまちづくり・ぐるっとおおつち」の小向幹雄さんと、(株)文化財マネージメントの私、宮本との共同のプロジェクトです。対象は、大槌町沢山地区の澤山不動尊に伝わってきた木造の「不動明王三尊像」で、江戸時代に制作されたものです。

澤山不動尊・木造不動明王三尊像

中央の像が不動明王、向かって右の白い像が矜羯羅童子(こんがらどうじ)、向かって左の赤い像が制多迦童子(せいたかどうじ)の3体1セットの三尊像です。作者は江戸人形町の仏師・安岡良運である可能性が指摘されており、その像は大槌町や関東など各地に残っています。

岩手県の沿岸部にある大槌町は、東日本大震災による津波で多大な被害があった地域です。不動尊がある沢山地区にも津波は及び、お堂の中に安置されていた不動明王三尊像も海水を浴びることとなってしまいました。

現在の澤山不動尊

そのような中でも、津波にさらわれて像が行方不明になることはなく、お堂の中に残っていたのは不幸中の幸いでありました。とはいえ、大きな被害があることには変わりがありません。今のところかろうじて自立していますが、構造的には様々な箇所が外れかけているといった損傷が像に生じています。

像と台座を接続する部材が外れてしまっており、不安定な状態

「文化財」というと、国宝や重要文化財、博物館・美術館に収蔵されているものをイメージされることが多いかもしれません。しかし、広義の文化財の中ではそうしたものは全体のごく一部で、日本では寺院や神社という場に、仏像・神像、経典、掛軸、文書、刀剣、着物、建物、石碑などの形で所在しているものが大きなボリュームを占めています。これらはもちろん全国各地に存在するもので、単純に仏教、宗派、神道という大きな括りでは捉えきれない「地域での信仰文化」を示すものも数多くあります。日本の宗教や信仰の多様性を示す存在でもあるといってもいいでしょう。

しかし地方の寺院などでは過疎高齢化の影響で檀家数の減少などもあり、所在する文化財を管理したり修復したりすることが困難であることも少なくありません。地方や過疎地域の仏教文化財が失われていけば、その地域の信仰の痕跡も失われ、極端にいえば、大都市や大寺院の仏教文化だけしか伝わらない未来もありうると思っています。

そうした現況に対して、寺院や仏教に関係する文化財をなんとか後世に伝え遺して行きたいという願いから、私達はクラウドファンディングでの仏像修復を行ってまいりました。

そして東日本大震災から10年の節目となる今、この不動明王三尊像を修復し、後世に遺していきたいと思っています。多くの方々にこうした現況を知っていただき、またご協力をいただければ幸いです。

リターン(返礼品)には、「支援者様のお名前を和紙に書いて仏像内に納入」というものや修復報告書などもご用意しております。また、大槌町の名物「磯ラーメン」や大槌町文化財ツアー、大槌町で利用できるお食事券などの大槌町にちなんだリターン、さらには不動明王三尊像を3Dスキャナーで測定し、3Dプリンターで出力して制作する仏像3Dレプリカをお届けするコースもございます。

プロジェクトページや活動報告には、江戸時代の仏師や大槌町の僧侶についてなどの書き下ろしコラムも掲載しておりますので、ぜひご覧くださいませ。

最後に今回共同でプロジェクトをおこなっているNPOの小向さんからのメッセージです。


今回修復を目指している不動明王三尊像は、文化元年(1804)に「閉伊の木食」といわれた佛眼祖睛という学僧らが、江戸の仏師・安岡良運に依頼して制作して届けられたものです。佛眼祖睛の居場所「東梅社」で開眼供養し、不動明王を信仰していた修験者数名を先頭に、住民がそれに続き盛大な練り供養が行われ、澤山に安置されました。

当初の地から3度移動して現在の場所にありますが、管理をしている澤山家はその度に地域に人々と大事に移設し現在に至っており、地域に人々の安寧と、絆を結ぶ大事な仏像となっていることもあり、歴史的にも大槌町の大切な文化遺産であります。それが東日本大震災で津波被害をうけたので、修復して後世に伝えたいと思い、皆様のお力添えをお願いしたいと存じます。


■大槌町に江戸時代から伝わる、東日本大震災で被災した仏像を修復したい!

期間 :2021年4月11日~5月30日
対象 :岩手県大槌町澤山不動尊 木造不動明王三尊像
目標額:140万円
サイト:https://camp-fire.jp/projects/view/404935

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