山梨で爆誕!お寺と社会とを結びつける「SOCIAL TEMPLE」の活動

この度、彼岸寺に寄稿いたします「一般社団法人SOCIAL TEMPLE」代表理事、超宗派仏教徒坊主道代表、近藤玄純と申します。

「SOCIAL TEMPLE?」「坊主道?」既に皆様の頭の中に「?」マークが浮かんでいることでしょう。まずは順を追って説明していきます。

「坊主道」って何だ?

私は山梨県中央市という人口3万人都市の妙性寺という小さなお寺の住職をしています。

先代である父からお寺を継承して10年、小寺であった妙性寺を次世代に繋げるべくお寺をある意味改革してきました。一定の結果は出てきつつありましたが無計画な施作のためすぐに頭打ちになりました。打つ手無し、その上教義を勉強すればするほど信仰と経営の二律背反に悩まされ諦めかけている時に、未来の住職塾塾長である松本紹圭さんとの出会いがありました。

「未来の住職塾」に参加し、第5期東京クラスとして一年間神谷町光明寺にて仲間とともに時には熱く語り合い、切磋琢磨しながら学びを深めて行きました。そして二律背反を解消することができました。さらに同じ問題意識を抱えている仲間とのコミュニティー作りを地元山梨でできないかと思い立ち、仲間集めを始めました。

いきなり日蓮宗の僧侶である私からの連絡はさぞかし驚いたことと思います(日蓮宗のお坊さんあるあるです)。一人一人膝を突き合わせお互いの寺院観や僧侶観をぶつけ合い、2016年10月に山梨県の超宗派僧侶グループ「坊主道」を立ち上げることになりました。

初めはお互いの宗派の法要などの違いを学びあいながら講師を呼び勉強会を開催し親睦を深めていきました。未来の住職塾の卒業生が2016年当時は、山梨県内に私一人しかいない状態でした。圧倒的な寺院過多の山梨に危機感を抱き、未来の住職塾6期甲府クラスを松本塾長始め関係者のご尽力で誘致し、坊主道メンバーも入塾、卒業となり、単一の県では卒業生の数が上位の県となっています。

また宗派を超えるメリットとしては同宗派ではヒエラルキーが出来上がりますが宗派を超えるとお互いのバックボーンはあまり関係がないので忌憚ない議論ができます。

そのメンバーとともに2017年、お寺版こども食堂である「寺GO飯」の開催(現在では16回を重ねる)、県内のWEB制作会社である株式会社マニュアルズの全面支援の元、仏教・お寺メディア「お寺のじかん」開設といくつかのプロジェクトを開始しました。

寺GO飯とは

現代の寺院における境内解放は必須条件となっていることを感じ、「こども食堂」を何とか開催できないかと思案している時、「全国てらこやネットワーク」の存在を知り、「横浜てらこや食堂」へ視察に行きました。その活動に感動し、山梨でも開催できないかと模索を始めることになります。

今やこどもの貧困が七人に一人と言われる時代にあり、私たちお坊さんもその課題に何かできることはないかと考えました。しかしお寺に来るこどもたちへの逆差別も含めテーマ設定には慎重にならざるを得ませんでした。昨今では「お寺に来るこどもたち=貧困」とラベリングされてしまうという問題が発生しているとも聞き及んでいます。そのようなことが起こらぬよう、メンバーともよく話し合い「食育」をテーマにすることが決まりました。

「食」は禅宗の方々の強みでもありますので、単一宗派では補えない超宗派ならではのメリットが出ます。会場をメンバー寺院である功徳院にお願いし2017年11月に開催に漕ぎ着けることができました。食事前には大学生が子供達の宿題を見てくれ、災害などで犠牲になられた方々やスタッフのご親族のご供養を参加者全員で他者のために祈ります。

次に座禅体験、ここも超宗派ならではです。そして子供達でもわかるように法話と仏教の強みを忘れずプログラムを作り上げています。

スタッフは大人(お坊さん・ボランティアスタッフ)と大学生。料理はプロの料理人をお願いし調理してもらっています。支援者も増え順調に回を重ねています。

寺GO飯実行委員会のメンバー

2018年11月には「寺GO飯」の管理運営をお坊さんと一般社会人、大学生からなるハイブリッド組織「寺GO飯実行委員会」に移管しました。寺GO飯を卒業したこどもたちがいずれスタッフとして加わってくれると良いね、なんて話しながら運営しています。

仏教・お寺メディア お寺のじかん

2017年12月より仏教・お寺メディア「お寺のじかん」というWEBサイトを開設しスタートしました。山梨県内のお寺の情報である「ご利益寺めぐり」や頑張っている住職にスポットを当てた「お寺さんぽ」など仏教やお寺を身近に感じてもらうべくサイトを運営しています。多様な企画で色々な切り口から仏教を知ってもらうためたくさんのライターの皆様にご協力をいただいております。また「坊主道」の活動報告の場としてもこの場を使わせていただいています。

山梨県内のWEB制作会社であるマニュアルズの全面支援の元このサイトを運営していますが春にはマイナーチェンジをし幅広い情報を皆様にお届けできたらと考えています。イメージはお寺の掲示板です。

お寺の活性化計画

「お寺のじかん」内の人気企画、「お寺の活性化計画」では支援企業であるマニュアルズとコラボし、お寺のホームページを持つことにより宗教的資産を磨き上げていく企画です。現在2ヶ寺目の完成が目前となっています。この企画の利点はIT企業であるマニュアルズとお坊さんである坊主道が共働プロジェクトということです。

私たちお坊さんは一般社会と離れてしまっていることや毎日お寺に住んでいることもあり価値設定が低く盲点になりがちです。しかし一般社会人でありITビジネスに身を置くマニュアルズの皆様は掛け値無しでまっすぐお寺を見てくださいます。それによって、お坊さんが気がつかないお寺の価値の再発見もありました。また坊主道も未来の住職塾卒業後、経営的観点が身につき他寺院の価値の再確認に関わることで自坊の価値の再発見にも役立ち大きな学びとなっています。

現在3ヶ寺目も始動間近で、どんなホームページになるか楽しみです。

死後の安心を「ゆくすえサポート」

ゆくすえ茶話会の様子

「死後事務処理」は高齢者の方々をはじめあらゆる方の大きな悩みの種となっています。寺院運営をしているとお檀家さんからの相談も多いのが現状です。人生において、仏事、お墓や仏壇などに対しては答えられるけれど法律的な話や財産分与についてなどはお坊さんは応えることができません。これも現代の「苦」の一つと言えるかもしれません。

そこで行政書士チーム「よすがびと」とのタッグで「死後事務処理」に対して包括的にお悩みに応えていくプロジェクトが「ゆくすえサポート」です。2019年2月27日に1回目のイベント「ゆくすえ茶話会」が開催され30名ほどの方にご参加いただきました。お坊さんの法話から始まり、クイズで学ぶ相続の話、個別相談会と茶話会という内容です。

相談内容は多岐に渡ります。お坊さんへの相談には菩提寺の住職に相談できないからと来られた方もいて身につまされる思いでした。しかし間違いなくどこに相談したらいいか分からない方々は多数存在しているように思います。今後も県内をエリアごとにサーキットしながら開催していきます。

建物なき寺院「(一社)SOCIAL TEMPLE」とは

いくつかの活動をご紹介してきましたが、「坊主道」発足から2年半が経過し山梨県内外の様々な企業や個人、寺院の皆様にご支援、ご参画をいただくようになり活動の輪も少しずつ大きくなってきています。

また各種メディアにも取り上げられることも多くなりました。そこで毎回聞かれることは今後の坊主道の活動はどこに向かうのか、ということでした。

坊主道は発足以来「利他行」を中心に据え活動をしてきました。山梨県仏教界が盛り上がることに少しでも寄与できたら、という思いで始めました。しかしその中で、関わってくださる方々やメンバーとも話していく内に一つの問いにぶつかりました。

「そもそもお寺ってなんだろう」と。

寺院の歴史はそこに仏道修行者が集まり生活を共にすることから始まります。
お寺は元来は仏道修行者の集まりで建物は後から付いてきたものだと考えると
私たちお坊さんは建物ありきでお寺を預かることで窮屈になっていないか。
私はそれを「お寺の身体性」と呼ぶことにしました。

ハードである建物を維持することは本来結果論であるのに維持が1番の目的になることで手段の目的化に陥ってしまっているのではないか。

またお坊さん自身が維持に縛られ、まさしく自縄自縛の状態に陥っているのではないか。

誤解をして欲しくないのですが、「お寺の身体性」が必ずしも大事では無いとは思っていません。連綿と先人たちが紡いできてくれた歴史はとても大切です。当然私にも預かるお寺がありますし身体性も維持していかなければなりません。

しかし私もメンバーのお坊さんも自身のお寺に帰れば公益法人として小さいお寺でも大きいお寺でも等しく「不特定多数の第三者の利益となる活動」いわゆる公益活動を行う法人でもあります。

大小に関わらず日本のお寺は人的資源も物的資源も足りないお寺がほとんどです。毎日の法務や他の活動に追われ、中々公益活動まで手が回らないのが現状です。

ですが社会の中で病院や学校と同じように〝お寺〟として位置づけられている以上、皆で〝知恵〟を出し合い公益性を担保していかなければなりません。
仏様の教えを伝える布教所たるお寺がその維持のためだけに活動することはまさしく本末転倒です。

葬儀・供養も私たちお坊さんの大事な役割です。しかしお坊さんの役割はそれだけではありません。

昨年11月に寺GO飯スタッフ30名にアンケートをお願いしました。そこから読み取れたものはお寺やお坊さんが社会の側から見ると遠い存在でお坊さんやお寺側から距離を取っているのではないか、という事でした。

私たちお坊さんは出家という立場ではありますが世間と隔絶した生活をするのが目的ではありません。一人でも多くの人の「苦」を少しでも取り除くお手伝いをする。社会の中に、そして社会に関わるお寺として、お坊さんも含め社会に関わる方々と共に集まりその力を持ち寄ることがお寺と考えられるのではないかと。

「集まって持ち寄る」ことと「共に働く」ことで持続可能性の高い社会づくりに寄与することを目標として活動していくことが今後の方向性となりました。仏道修行としてその活動を行い〝させていただいている〟と捉えていく人たちが収まるお寺。それが「SOCIAL TEMPLE」です。

山梨でも哲学や生きる道しるべとして仏道を必要としている方も少なくはありません。現代社会においてそういう〝場所〟があってもいいのではないか。仏教はお坊さんのためだけにある物ではなく仏道として皆が歩む道のりだと思っています。

「SOCIAL TEMPLE」では関わる人全員が属性に関係なくフラットな関係性で運営しています。

その一つの形が「寺GO飯実行委員会」で、お坊さんだけでなく関わる人皆で運営しています。今や「寺GO飯実行委員会」は法人としての「SOCIAL TEMPLE」の根幹で欠かすことのできない組織になっています。他のプロジェクトも同様でお坊さんもそうでない方も皆自身で出来ることを考え、持ち寄り主体的に活動しています。

現代社会には様々な社会課題があり「苦」という形で現れています。私たちお坊さんはお坊さんでしかなく、現代にあった形で「苦」に対応していかなければなりません。

空論ではなく課題解決のために実装が急がれる現代社会。他人任せではなく自分事として社会参画していかなければいけない時代に突入しています。また今年度も新規プロジェクトがいくつか立ち上がる予定です。

私たち「SOCIAL TEMPLE」は山梨の地で一緒に活動してくださる方々をいつでもお待ちしています。それぞれのお立場の中で出来ることを考えていただければ結構です。

これからも「SOCIAL TEMPLE」は利他行を中心に据え社会課題と向き合っていきたいと考えています。

一人が全員になることを目指して。

彼岸寺は、仏教とあなたのご縁を結ぶ、インターネット上のお寺です。 誰もが、一人ひとりの仏教をのびのびと語り、共有できる、そんなお寺です。