私は今、『お坊さんが答えるQ&Aサイト hasunoha』という悩み相談がウェブ上でできるサービスを有志の方々と一緒に運営しています。このhasunohaには、今を生きる怒りの声がたくさん届きます。
「夫のことを許せない!!」
「長年怨んできた父をいまさら受け入れることができない!!」
「今の職場の上司が気に入らない!!」
「長年怨んできた父をいまさら受け入れることができない!!」
「今の職場の上司が気に入らない!!」
…など、様々な声があります。
そして、怒りは言葉で表される場合もあれば、暴力、さらには人を殺してしまうこともあります。また、怒りが国家単位ともなると戦争になる場合もあります。
人間の基本的感情であるこの「怒り」を心理学の辞書で調べてみると「欲求充足が阻止された時にその阻害要因に対して生じる」(心理学辞典 有斐閣)と書いてあります。つまり、怒りとは自分の思い通りにならないことを思い通りにしようとすることが原因で起こる感情です。
では、他人を思い通りに出来ないのであれば、せめて自分のことくらいは思い通りにできるでしょうか?
あなたは、自分の意思で生まれてきましたか?
あなたは、自分の意思で病気になりますか?
あなたは、自分の意思で老いていきますか?
あなたは、どれだけほど死にたくないと思っていても、永遠に生きることが出来ますか?
あなたは、自分の意思で病気になりますか?
あなたは、自分の意思で老いていきますか?
あなたは、どれだけほど死にたくないと思っていても、永遠に生きることが出来ますか?
生まれること、病になること、老いること、死ぬこと… 自分の生きる基本の部分でさえ思い通りにすることはできません。
さらに、大嫌いな人を急に好きになったり、愛する人を簡単に嫌いになったりすることも思い通りには出来ません。
自分の生きる基本の部分や自分の気持ちさえ、思い通りにできないのに… 他人の考えや行動、そして気持ちなどを思い通りに変えることができるはずはありません。
他人や環境をできるはずのない「思い通り」にしようとすれば、ストレスが溜まり、怒るのは当然です。
しかし「自分も他人も人生は思い通りにはならない」と諦められれば、どうでしょう? そもそもの怒る原因さえなくなってしまいます。
これが、仏教からの怒りの対処方法 -アンガー・マネジメント-です。
このように、心の仕組みを分析し、その原因と結果を考え、そしてその原因を無くしたり変えたりすれば、心が変わるということを仏教は教えてくれます。
「思い通り」にならないことを「思い通り」にすることではなく、「思い通り」にならないということを知るのが仏教です。
●井上広法(いのうえこうぼう)さん プロフィール
栃木県 浄土宗 光琳寺
一言自己紹介
お坊さんがこたえるQ&Aサービス hasunohaの運営を行っております。
http://hasunoha.jp/