今年の1月に出版した「だれでもわかる ゆる仏教入門」に続き、このたび「『鬼滅の刃』で学ぶ はじめての仏教」という書籍を出版いたしました。いわゆる「鬼滅本」というジャンルで、言わずと知れた大ヒット作「鬼滅の刃」に完全に乗っかった本です(笑)内容は『鬼滅の刃』に出てくる仏教的要素に注目し、仏教の教えに触れていこうというものです。
今回の出版はPHP出版様にお声かけをいただきました。当初いただいた企画は「やさしい言葉で書かれた仏教書」といったもので、先に出した「ゆる仏教入門」と同じような内容でした。しかしそれでは新鮮味がないので、私がYouTubeに上げていた「鬼滅で学ぶ浄土真宗」という動画の書籍化を逆提案しました。色々と問題がありそうだなとは思ったのですが、出版社様も面白がっていただき、著作権などの法的問題もクリアできるとのことでしたので執筆に踏み切りました。
そもそも『鬼滅の刃』と仏教の関係性を考え始めたきっかけは作品に出てくる「お墓」でした。登場人物がお墓参りをする場面に出てくるお墓が、浄土真宗独特の「〈南無阿弥陀仏〉と刻まれたお墓」だったのです。墓石に「南無阿弥陀仏」を刻むのは浄土真宗の風習ですが、浄土真宗のご門徒の中でも知らない人は多く、家名を刻むケースもよく見られます。それなのに、「南無阿弥陀仏」が刻まれたお墓が複数回出てくるのです。
「もしかして作者は仏教に関わっている人かも…」
そう思いながらもう一度読み返してみるといたるところに仏教的な要素があることに気づきました。
例えば、四諦の教えをトレースするような構成があるとか、敵である鬼を仏教の「煩悩」と考えると物語の構造自体が仏教の目的と重なるとか、釈尊を連想させるようなキャラクターがいるとか色々と出てきました。特に、浄土教との関連性は念仏を称えるキャラクター(しかも強キャラ)がいるなど、強い結びつきを感じました。
もちろん、仏教がモチーフになっている作品はたくさんあります。古くは「レインボーマン」(分からない人は年配の人に聞いてみてね)から最近では「呪術廻戦」(分からない人は若い人に聞いてみてね)まで、様々な作品に登場します。しかし、それらでの取り上げられ方は、多くは字面とか音とかの表面的な意味での扱いです。一方、「鬼滅の刃」はむしろそういった直接的な表現は少なく、もっと深層での関係性を感じました。一言では言いにくいのですが〈仏教があることが前提の物語〉のように思えたのです。この辺については本を読んでみてください。
もちろん、原作者の吾峠呼世晴さんはそんなこと一言も言っていませんし、私の勝手な想像でしかありません。この世の全てを自分が信じる宗教で理解することが可能だと考えるのは宗教者にありがちなエゴです。それでも、日本を熱狂の渦に巻き込み、社会現象とまでなった作品から仏教の香りがすることだけでも私にとっては喜びなのです。そしてその喜びを共に感じてくれる人に届けばいいと思い書き上げました。
本書は、原作の描写と仏教の紹介を分けていますので、原作を読んでいない人でも楽しめるようにしています。しかし、何よりも原作と仏教の両方を同時に楽しむのがこの本の醍醐味ですので、ぜひとも原作も読まれてください。ただ、全編にわたり原作のネタバレが盛大に含まれていますので、ネタバレを気にされる方はどうぞお気をつけください。
〈鬼滅の刃〉と〈仏教〉を同時に布教する「『鬼滅の刃』で学ぶ はじめての仏教」。みなさまどうぞよろしくお願いいたします。