皆様、はじめまして。宿坊やお寺のお手伝いをするサービス「お寺ステイ」を運営する株式会社シェアウィング代表、佐藤真衣と申します。この度ご縁をいただきましてインターネット寺院「彼岸寺」に寄稿することになりました。
私たちシェアウィングは『お寺とテクノロジーでわくわくする空間』をミッションに事業展開しています。またコロナ禍の中でお寺をコワーキングスペースとして利用する「お寺ワーク」を始め、ありがたいことに活動をメディア等でも取り上げていただいております。
シェアウィングが大切にしていきたいと感じているのは、お寺という「場」です。長い歴史や、関わってこられた人たちの思い、そして仏教の教えに裏付けられた荘厳かつ静謐な空気感は、他では味わうことができません。そんな「場」の力を持つお寺を絶やしてはいけない。 それがシェアウィング創業の原点です。
「お寺ステイ」とは?
現在、全国5カ所の宿坊を、ご縁をいただいたご住職とともに運営をしています。
2016年、廃寺寸前だった飛騨高山にある善光寺を宿坊として運営することからスタートしました。 施設的な面や地域との連携などを含めて、困難の連続でしたがコロナ禍以前には外国人の宿泊者も含め、年間約三千人ほどの方が高山善光寺を訪れていただきました。 これは私たちの力ではなく、ただただお寺の持つポテンシャルだと思っています。 ご宿泊いただいた皆様はお寺に泊まるという体験を通してとても満足してお帰りになられます。
私たちは宿泊者の皆様の笑顔とともに日本文化を知ってもらえた、またお寺の良さを知ってもらえたということに充足感を感じながら働くということの意味をもう一度考え直しています。
新型コロナウィルスの影響を受ける宿坊と、これから
新型コロナウィルスの猛威は生命健康の被害を受けた方、そして経済的被害を受けた方や外出自粛と在宅勤務ストレスによるメンタルヘルス問題を抱えた方も多くいることと思います。
当社の運営する5カ所の宿坊も4月からはほぼ予約ゼロという状態でした。宿泊業は行政からの営業自粛対象業種ではなく、エッセンシャルワーク(ライフラインとして欠かすことのできない業種)であるので、感染症対策を最大限しながら、困っている人や必要な人がいる限り、門を開け、安心して過ごせる場所を提供するという判断をしました。
健康ではあるが、自宅にいること、帰ることのできない方が1か月宿坊で過ごすなど旅行とは違う需要がありました。 私たち宿泊業は社会貢献であるとの思いから、単なる旅行や娯楽としての宿泊だけでなく、寝床を必要とする人に場を提供することも考えてきました。歴史的に見ても、お寺は互助・共生という観点でシェアリングエコノミーを実践してきており、それはお寺が社会の中で担ってきた優しい部分であったはずです。
今後、海外からの旅行者はいずれはある程度戻り、国内旅行の回復もゆっくりと進むとは予想されますが、今回のコロナ禍は大きな社会の転換期と捉えています。 そんな中にあって、観光という切り口でのお寺の活用だけではない、学びや働くこと、そして新しいライフスタイルのサードプレイスという切り口でこれからのお寺を考え、提案することを考えています。
ただ寝床を求めるならば旅館やホテルに泊まればいいですし、コワーキングスペースやカフェといった新たな仕事をする場というのも、近年増えてきています。しかし、非日常の空間であるお寺に宿泊することや、そこで仕事をすることを通して、従来の施設とはまた違った、学びであったり人生を見つめ直すきっかけが得られることでしょう。
荘厳な空気感の中で仕事をする。 行き詰まったら境内を散歩する。 オシャレなカフェで仕事ももちろん良いですが、選択肢の一つに「お寺で働く」ということがあるということが多様な社会(シェアリングエコノミー)作りをお寺が先駆けとなって実践することがこれから一層大切になっていくと感じています。
お寺がテレワーク拠点となる「お寺ワーク」とは
そこで、私たちが今、提案しておりますのが、「お寺ワーク」です。「お寺ワーク」とは地域コミュニティの中心であり、土地の歴史と魅力を眺めてきた「お寺」という場所で仕事をし、そして学ぶ、新たなライフスタイルです。
古来からお寺は地域における文化の発信拠点でした。また地域コミュニティの中心であった場所でもありました。その建築様式は時代の最先端であり、歴史の積み重ねにより培われた重みや神聖な空気感はお寺でしか味わえません。現代的なコワーキングスペースでは作り出すことのできない特別な空間であり、大きな魅力です。
急速なテレワーク化に伴い、試行錯誤しながら、自宅やカフェ、コワーキング施設の利用など新たな場での働き方が広がっています。 効率重視が求められる社会の中で本当の意味でのクリエイティブな仕事ができ得るのか。 心身の負担は無いのか。 それが本当に健康的で幸せか。 コロナ禍で起きた、新しい働き方や新しいライフスタイルには新しいワークプレイスが求められています。
自宅でも職場でもない、第3の場所「サードプレイス」が重要になり、それを私たちはお寺だと確信しています。
「お寺ワーク」は、働く人への次世代型のワークスペースと学びを提供し、ココロとカラダを調える新たな「場」になることを願っています。
私の人生においては仕事が趣味で、仕事より面白いと思えるものはなく、周囲の人の喜ぶ顔が見たい。 「Work as life」 そう語られて久しいですがその言葉の意味がお寺と関わるようになってようやく分かってきたような気がしています。
創業から4年経ち、少しだけ、いま人生をかけ仕事をする、その入り口を見つけたという感覚です。 存続の危機にあるお寺の場を知ってもらうと同時に、いろいろな切り口で社会インフラでもあるお寺を使ってもらえるようにすることが私たちの使命です。
シェアウィングでは宿坊運営を行っている4カ所、岐阜県高山市、東京都港区、群馬県桐生市、山梨県身延町、和歌山県那智勝浦町のお寺から「お寺ワーク」を2020年5月1日よりスタートしました。
●Temple Hotel 高山善光寺 岐阜県高山天満町4-3
●Temple Hotel正伝寺 東京都港区芝1丁目12-12
●Temple Hotel端場坊 山梨県南巨摩郡身延町身延3493
●Temple Hotel大泰寺 和歌山県智勝浦町大字下和田775
現在は宿泊者を主に対象としていますが、お寺ワークだけの利用モデルも2020年6月以降より開始し、「お寺ワーク」にご興味のある全国のご寺院様とのパートナーシップも計画しています。ご興味のあるご寺院様はお問い合わせ下されば幸いです。詳細はホームページにて随時発信していきます。
(文責:株式会社シェアウィング 代表取締役 佐藤真衣)