4月8日は「花まつり」。お釈迦さまの生誕をお祝いする日。日本全国の寺院では、それぞれにお祝いの法要や行事が行われます。
今回、彼岸寺でご紹介するのは、京都坊主BARで行われる「花を感じる1時間の演奏会」。
京都坊主BARのソムリエとして、きめこまやかなおもてなしでお客さんを迎えてきた、ソムリエの若杜知美さんに、花まつりのこと、京都坊主BARと演奏会のことをご寄稿いただきました。
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ブッダのうまれた日
それを祝う花まつりはこの季節にふさわしい
とてもうつくしい行事です。
そんな”花まつり”という行事は、日頃「お寺」や「仏教的ななにか」に触れていないと関わりが薄い行事でもあるのかなと思っています。例えば、年末に除夜の鐘を聞きにお寺に行く、というほど国民的な行事ではないというような。
わたしたちは、仏教の思想や文化が息づく日本に暮らしていて、それらに触れていないということは実はないのですが、私自身のことで言うと、どちらかといえばキリスト教の文化に触れることが多い家系で育ち、大学もミッション系でしたし、この仕事をするまではあまり花まつりには縁がないように感じていました。
でもキリスト教文化の象徴のようなクリスマスは日本に暮らしていれば、誰もが触れるもの。もちろんそれは商業的な要素も大きいのですが、これだけ日本人の暮らしに寄り添う仏教において、キリスト教におけるクリスマスと同じ意味合いの花まつりも、もっと自然に身近にあるものであってもいいように感じていました。
私は僧侶が営む’京都坊主BAR’という場所で、日々お越しになられる方の言葉に耳を傾けたり、お酒などを提供したりしています。ヨガの講師でもあり、自分のライフスタイルとして自然との繋がりを感じることが好きなので、植物の恵みであるワインやハーブティーをご紹介することを主にしていたり、お店で開催するワークショップやイベントの企画などをしています。
このお店では説法タイムのようなものがあるわけではないのですが、ここにいる方が発する(発されていないものも含めて)言葉を聴かせていただくことを大切にしている場所です。
どちらかというと、調子のよい時よりも、なにか頼りになるものが欲しい時に人が求めるのがお寺やお坊さん。
でもそれを受けとめるお寺や僧侶の方々も、現代社会の速い流れの中においては、とても忙しくならざるを得ないところがあると感じています。次の時代に繋いでいくためにそれぞれのお役目を全うされようと力を注いでいらっしゃると同時に、人々が求めたいときにいつでもその思いを汲み上げていくことが難しいこともある時代なのかもしれません。
坊主BARという場所で、”少なくともこのお店が扉を開けているときはここにいるよ”と言えることは、ある人の人生においてのほんの一瞬のことかもしれないけれど、大切なことのように感じています。
万物が一年の巡りを終えて
あらたにはじまるとき
自分の命を感じ、慈しむ
この花まつりの頃は、万物が一年の巡りを終えてあらたにはじまるとき。
みずみずしく純粋なエネルギーに満ちているうつくしい季節です。
そんな生命感が溢れる様子は、自然の草花や太陽の光など外側から目に映るものだけではなく、私たちの内側にもそれが同じようにあるということを感じることができるような素敵な機会だと思います。
ブッダの誕生日を祝うことは、同時にひとりひとりの内に宿る英知と美しさを慈しむことでもあると思います。流れゆく日常の中で、たとえ短い時間でも、自分の命を花に水を遣るように慈しみ、まっさらな気持ちでまた生きはじめる、そんな春のはじまりを感じることができればと思っています。
花まつりといえば、お寺に草花で飾られる花御堂、そしてその中に安置されたお釈迦さまの誕生仏に甘茶を掛けて祝います。花御堂はお釈迦さまのお生まれになった場所であるルンビニーの花園を、そして甘茶はその時9匹の龍が降らせた甘露の雨をあらわしているといわれています。
4月8日、京都坊主BARで開催する「ブッダのうまれた日」というイベントは1時間の演奏会ですが、この演奏会は”感じる”ことをテーマとしています。
この日は店内を花御堂のようにうつくしく春模様に装飾し、花に囲まれながらじんわり響く古楽の演奏を甘露の雨に見立てています。私自身も、当日演奏されるヴィオラ・ダ・ガンバという古楽器を普段練習しているのですが、弾いていて自分自身が癒される、とてもたおやかで心地よい響きです。甘く揺らぎのある音色の古楽は身体へとやさしく沁みわたります。当日演奏される曲目は仏教讃歌からイギリスやフランスのバロックまで。国は違えど、いにしえに思いを寄せるような音楽です。
そして、この日は年に一度、お店でマスターが法話をさせていただく機会となります。
お好みのドリンクを味わいながらの贅沢な昼下がり。
それぞれの想いで自分自身の内側をそっと慈しむ1時間を過ごしていただければと思っています。
どなたでもご参加いただけますので、ご縁のある方との出逢いを楽しみにしています。
(イラスト:ダイモンナオ)
【公演情報】「ブッダのうまれた日-花を感じる1時間の演奏会」
2017年4月8日(土)
1ST STAGE 14:00開演
2ND STAGE 16:00開演
*開場は開演30分前
*各ステージで演奏と住職のお話の内容が異なります
*終了後は18:30より通常営業となります
*完全入れ替え制ですが、両ステージお申し込みの場合は参加費が合わせて5000円となります
お席の都合がございますので、お申し込み時にお伝え願います
場 所 : 京都坊主BAR
( 京都市中京区油小路錦上がる東側 http://bozu-bar.jp/)
参加費 : 3000 円 ( ワンドリンク付き )
申込先 : bozu@bozu-bar.jp ( 京都坊主BAR )
お申し込み時にお名前、メールアドレス、電話番号、希望公演時間、参加人数を明記してください
返信メールにてご予約確定いたします
【出演者】
=演奏=
::triokreanto(トリオクレアント)::
小林 千晃(hobojo/オーボエ)
相愛大学音楽学部を経て同大学音楽専攻科修了。
朝日推薦演奏会、ソフィア国際音楽祭(ブルガリア)等に出演。
アンサンブルでは文化庁新進芸術家後援事業「音楽家の玉手箱」、
NHK「ぐるっと関西」NHK-FM「名曲リサイタル」等に出演。
第2回大阪国際音楽コンクール管楽器部門第3位入賞。
京都音楽院講師。ブログckhobby.exblog.jp
西谷 玲子(klaviceno/チェンバロ)
京都に生まれ、京都に育ち、音楽環境も京都で。
京都市立芸大卒業後、
オーストリア・ウイーンで修行。
帰国後は持ち前の音楽的好奇心の向くまま、
いろんなジャンルの演奏家との
コラボレーションを楽しみ現在に到る。
中野 潔子(gambovjolo/ヴィオラ・ダ・ガンバ)
大阪音楽大学 大学院修了(音楽学)
古楽と音楽の魅力を広く紹介するため美山を拠点とし、
関西を中心に各地で演奏活動、音楽指導を行う。
Le Tissage,La perla barocca各メンバー。京都音楽院講師。
=おはなし=
羽田 高秀
京都坊主BAR店主/浄土真宗本願寺派光恩寺住職。京都生まれ。龍谷大学卒業。
コンピュータのシステム開発会社を経営する傍ら、2010年11月に京都・四条堀川近辺に京都坊主BARを開店。自坊にいるだけでは出会うことのできない、日々来店されるお客様との対話をしながら、幅広い視点で関わっていくことを大切にしている。
寄稿者プロフィール
若杜 知美(わかもり ともみ)
若杜 知美(わかもり ともみ)
ヨガやアーユルヴェーダを実践し教える一方で、京都坊主BARでソムリエとして日々従事しており、 カウンター越しに出逢う人の話を聴くことやその人に向き合うことそのものもヨガだと感じている。 星の流れを伝える活動もしており、街中にいても自然との繋がりを感じることで、人々が健やかで 幸せに生きることに役立ちたいと願っている。
連載「ワインと星と12ヶ月」