私たちは、ふだんの暮らしのなかで自分なりの「常識」を手がかりにして、ものごとを判断し行動しています。「常識」とは、社会を構成する人たちが共有する価値観や知識のこと。社会とともに変化し、つくりなおされていくものです。
つまり、現代のように、社会が変化するスピードが速く、また変化の度合いが大きい時代では、「常識そのものが揺れる」ということもまた起きてきます。今回ご紹介する、お寺で学ぶ講座「常識のカベ–自己と社会の在り方にしずかな革命を–」は、まさにこの「常識」に焦点を当ててみなで考えていく場です。
主催する、SOMOSOMO実行委員会・お寺で場づくり講座のみなさんから、この連続講座を紹介する記事をご寄稿いただきました。時代を越えてありつづけるお寺で、今という時代を見つめなおす時間に参加してみませんか?
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(以下、寄稿いただきました!)
常識のカベ–自己と社会の在り方にしずかな革命を–
現代のめまぐるしく変化する社会において、今まで正しかったはずのことが変わり始め、「常識」と思い込んでいたものが音を立てて壊れつつあります。そんな中で、一人ひとりが持っている「常識」、また社会にある「常識」を見つめ直していくことによって、何が本当に大切なことなのか、、どのように生きていったらいいのか、を共に考えたいという想いから本企画は生まれました。
目に見える形での結果と効率が重視される現代社会において、自分にとって本当に大切なことを、少し立ち止まって考えることのできる場所は少ないのではないでしょうか。この会を通じ、参加者の一人ひとりが、今まで持っていた価値観を問い直すような時間になれば、と思っています。
ありそうでなかった「そもそも」を語りある場や時間
3月1日より連続講座として始まった本企画。今までの会に参加された方からは、「一見すぐには役に立たないかもしれないけれど、後々の自分の生き方に必ず効いてくる気がする。大切なことだと自分でも薄々気づいていることをしっかりと言葉にしてくれる大切な会だと思った。」などの感想をいただきました。他にも「物事のそもそも論を語り合える場や時間がありそうでなかった。」「初対面の人と仕事じゃないこともたくさん喋れた。」など異業種の人とお互いの人生について語り合う機会にもなったようです。
「常識のカベ」講師からのメッセージ
今回、「常識のカベ」と題して、一人ひとりの中にある「常識」を問い直す、連続講座の講師として、菱川貞義(ひしかわさだよし)さんをお招きしています。
菱川さんは、広告業界でお務めをされながらも、自然農※を実践し、まちづくりにも従事され、その物腰柔らかな表情からは想像もできないほどの、力強さを感じます。自然農やまちづくりを通して気づいた持続可能な社会のあり方、人の生き方をご自身の生き方を通じて、私たちに優しく教えてくださっているように思います。※自然農とは、耕さず、肥料や農薬を用いず、草や虫を敵としない農といわれる。
そんな、菱川さんにこの会に込める想いを少しお聞きしてみました。
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「みんなが幸せを求めているけど、幸せは”ふつうの暮らし”のなかにあって、誰もがすでに手にしている。だから探さなくていいんだよ」という思いがずっとあるのですが、ふつうの暮らしは当たり前すぎて、現代の社会システムに翻弄されながら、決して手にすることができない虚像の幸せを求め続けている気がしています。
こうして、つかめるはずのないものを求める旅をするのですが、身の回りにある草木、土、水、空、そして地域の人々とのつながりに日々、感謝や感動することも忘れるほどがんばっても、いくら大きな成功を収めても、名声や権力を得ても、達成感はありません。それどころか幸せを求める旅を続ければ続けるほど、真逆に、本当の幸せが遠ざかっているようにみえます。
この虚像の幸せと本当の幸せを知る手がかりのひとつとして「常識」についてみんなで話し合い、考え合い、学び合いたい、と思っています。もっとも重要な常識たちは自然の理をも表わしているのではないでしょうか。(本当の)常識は本当の幸せを感じる助けになります。ただ、現代を生きるわたしたちは(常識にしてはいけない)常識の衣を幾重にも身にまとい、自然の理に寄り添わず、社会システムに依存しています。ここに存在する「常識のカベ」を6つのテーマで探求してみよう!というのが本企画です。
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そして、最後には「この講座では”僕が教える”という先生と生徒の関係だけではなく、一緒に考えて僕も皆さんと共に学び合っていきたいと思うんです。」と笑顔でお話しくださいました。
3月1日より始まった本講座ですが、次回、第4講からの参加も受け付けております。みなさのご参加をお待ちしております。
◆お寺で学ぶ6講座 「常識のカベ–自己と社会の在り方にしずかな革命を–」◆
常識のカベでは、各講ごとに「常識」「合意形成」「食」「自然」「環境」「平和と芸術活動」など、ご講師からの話題提供の時間を設け、その後に、参加者の皆さんと語り合う様な時間をもちます。共に語り合い、学びあう様な場を目指しています。
日 時:3/22(水)・3/29(水)・4/5(水)
18:15〜21:00(18:00開場)
※ご興味のある会のみの参加も可能です。
参加費:各回1500円
場 所:一念寺 京都市下京区柳町324
定 員:各回20名
お申込:件名「常識のカベ」とし、お名前、ご連絡先、参加日を
zyoushikinokabe@gmail.comまで御送り下さい。
<各回のテーマ>
◆4講:3/22「気づかなかった常識たちに出会える自然農〜自然と人の関係〜」
より高効率をめざして大規模化・機械化されてきた近代農業に対して、鎌と鍬を道具に手作業による自然農は、非効率だといわれ多くの農家から敬遠されています。しかし、常識をじっくり見直してみると自然農の効率の良さに驚かされます。そして、普段の生活に「農的な暮らし」を取り入れると、自然のなかにある、気づかなかった常識たちに出会い、心が豊かになります。
◆5講:3/29「真の常識に出会えば環境問題は解決する〜環境問題とわたしの関係〜」
「環境問題とは、気候変動、大気・海洋・水質・土壌汚染、森林破壊、生物多様性の喪失、エネルギーの過剰消費、等のことである」というのは常識でしょうか。これらの問題の一つひとつの根っこを掘り下げていくと、たったひとつの問題に行き当たります。そして、わたしたちは真の常識と出会い、同時に環境問題の具体的な解決策を見出します。
◆6講:4/5「常識と平和と芸術活動〜芸術と対話の関係〜」
わたしたちは、平和を願いながら、「戦争がこの世から消え去ることはない」「だれの力をもってしても戦争を無くすことはできない」という言い訳に甘んじて生活しています。ところが、芸術活動のなかに潜む常識に目を向けると、永遠に戦争の無い世界を描くことができます。具体的な絵の存在が明らかになれば、あとは「わたし」が実践するだけです。–
<過去の会の様子はこちらから>
◆【終了しています】1講:3/1「常識のカベの正体」
◆【終了しています】2講:3/7「常識を武器にと合意形成と感性を尊ぶ合意形成〜「歩み」と「合意形成」の関係〜」
◆【終了しています】3講:3/15「『食べる』の不都合な常識」
講師:菱川貞義
1957年京都生まれ。立命館大学、講談社こども美術学園講師、デザイン会社を経て、1989年広告会社(株)大広に入社。主に環境問題をテーマに多数のプロジェクトを手掛け、2008年から「275研究所」を社内ベンチャー組織として立ち上げ所長に就任。社会課題の解決を目的に社会の多様な主体をつなぎ、プラットフォームづくりからコーディネート、プランニング、クリエイティブ活動に取り組み、2012年には京都で、農村再生に寄与する協働ビジネス開発をミッションとするNPO法人いのちの里京都村を設立し、理事長に就任。また、2006年から自然農を実践中。
主催:SOMOSOMO実行委員会・お寺で場作り講座