お寺のトランジションと、未来の住職塾の今

経営者の方が集まる勉強会で『グッド・アンセスター』をテーマに長期思考の重要性をお話しした。社歴が数十年から百年を数える企業の創業者やオーナー経営者の集いなので、課題感がお寺の住職とも重なる。今まで通りの事業のやり方ではもはや成長どころか現状維持も望めないことは明らかだけれど、どのように事業構造を転換したら良いのか。過去から蓄積した「これまで通りでいいじゃないか」という慣性力が、その歴史の厚みの分だけ強く働く長寿組織であればあるほど、この問題に苦労している。

企業で働く方に僧侶の立場から働きかける、産業僧の活動が広がっている。活動に関わりながら思うのは、経営者も社員も、その組織に関わる一人ひとりがトランジションを経験することが、必要なんだということ。できることなら今まで通りで居たいと願う気持ちは誰の心の中にも多かれ少なかれあると思うけど、諸行無常、あらゆるものは変化し続けているのであり、何一つとして変わらずに保つことなどできないのだから、執着から離れていこうと、ブッダが教えてくれている。

人生には、いろんなトランジションの機会がある。例えば、引越し。新居に移るにあたって、要らないものは処分して、古くても使い続けたいものは修繕に出す。同じものでも、新居では役割が変わるものもあるかもしれない。そんなふうに、これまで執着してきたものを脱ぎ捨てて、次のステージへと転回していくのが、トランジションのプロセスだ。組織においても、同じだと思う。時代の役割を終えた事業は整理処分も考えなければならないし、継続するにしても修理やリノベーションが必要になる。場合によっては、これまでやったことのない新しい事業領域へと引越しをして組織としての新生活を模索することだってあるだろう。

お寺の世界でも、2012年に未来の住職塾がスタートしてから今日までの10年間で、新たな流れはたくさん生まれてきた。時代に合ったお墓の開発、檀家制度のアップデート、新しい行事やイベントの企画など、テーマは多岐に渡る。しかし、僕の感覚では、これらの動きはまだ、本格的なトランジションの準備運動にすぎなかった。ついに多死時代に突入した2020年代から、そのピークを迎える2040年までの今後のおよそ20年間で、従来のお寺の在り方が消え、今までとはまったく違ったお寺の世界が立ち現れることになるだろう。これからが、いよいよトランジションの本番だ。

そういえば2040年に入る頃には、自分がもし生きていれば、60歳だ。その頃にはもう世の中から「現役」とか「定年」とかの概念も無くなっているだろうけど、自分の現役人生でやり切る大事な仕事として、お寺世界の大きなトランジションに伴走し、よりみんなが幸せな着地ができるように見届けていきたい。そのためにも、今後ますます、産業僧をはじめとする現代社会における僧侶の活動のフロンティアを自分自身が開拓していきたい。

この春から、令和4年度、未来の住職塾NEXT R-4が始まる。自分の最新の活動を通じて得られた新しい知識や経験を今まで以上にたっぷり投入できるよう、プログラムのアップデートも施した。できるだけたくさんの宗教者の方にご縁をいただければ、何より嬉しい。

初めましての方も、お久しぶりの方も、仏教以外の宗教からのご参加も、お待ちしています!

掃除ひじり。良き習慣づくりの道場、お寺でお坊さんと一緒にお参り・掃除・お話から一日を始めるテンプルモーニング。noteマガジン「松本紹圭の方丈庵」・ポッドキャスト「テンプルモーニングラジオ」・満月と新月の夜に開くオンライン対話の会「Temple」 #未来の住職塾 #postreligion #templemorning https://twitter.com/shoukeim https://note.com/shoukei/m/m695592d963b1