仏さまのハンドサイン

最近Twitterを中心に「◯◯のハンドサイン」というのが流行っているようですね。以前も「悪循環コラ」が話題になった時には流行りにのってみた(参照)ので、今回もあやかってみようかなと思ったのですが… よく考えたら仏教界ではもっと古くからハンドサインが使われていた、ということに気づきました。そう、仏像の印相(いんぞう)と呼ばれる手のジェスチャーですね。

そこで今回はいくつか有名な印相を眺めつつ、それを超訳してみたいと思います。

まず一番ポピュラーなものが、この「施無畏印(せむいいん)」と「与願印(よがんいん)」です。奈良の大仏さまはこの印相を結んでおられます。「施無畏印」は相手の畏れをなくすサインで、「与願印」は相手の願いを聞き届けようという姿勢を表しています。この2つはセットで用いられることが多く、釈迦如来像に多く見られる印相です。

続いては、これもポピュラーな印相、「定印(じょういん)」です。大日如来や釈迦如来坐像に多く見られる姿勢で、「禅定印」とも呼ばれることもあるように、深い瞑想に入られている姿を表しています。阿弥陀如来の「定印」は、人差し指を親指につけて輪を作るようにしてあることもあります。鎌倉大仏はその印相を結んでおられます。

次は「智拳印(ちけんいん)」です。これは大日如来独特の印相で、最高の智慧を表したハンドサインだと言われています。右手が左手の指を包むような形は、インドで清浄の手とされる右手が仏を表し、不浄の手とされる左手が衆生を表し、仏の智慧が衆生を包み込むことを表すのだそうです。

これは「説法印(せっぽういん)」または「転法輪印(てんぽうりんいん)」と呼ばれるポーズです。名前の通り、お釈迦様が説法をされている際のジェスチャーを交えながらお話になり、そのお姿を形に表したものと言われています。他にも両手を胸の前まで挙げ、親指と中指などで輪を作る形などのバリエーションがあり、そのほとんどが釈迦如来像に見られる印相です。

次は「触地印(そくちいん)」です。地面に指先で触れるような形からこう呼ばれます。お釈迦さまがさとりを開かれる際、悪魔の妨害を受けましたが、この触地印によって悪魔を降伏、退散させたことから「降魔印(ごうまいん)」とも呼ばれます。

最後に「来迎印(らいごういん)/摂取不捨印(せっしゅふしゃいん)」を見ましょう。これは阿弥陀如来特有の印相とされ、臨終の際、阿弥陀仏が西方極楽浄土より迎えに来るときのポーズとされています。「施無畏印・与願印」と似ていますが、指で輪を作るのがポイントですね。少し前ですが、大河ドラマ「軍師官兵衛」で、石山本願寺のご本尊が阿弥陀如来の像を用いなければならない所、釈迦如来の像を間違って使っていた、というニュースがありました。釈迦如来像と阿弥陀如来像はよく似ているので、テレビにチラッと映るくらいでよく気づいた方がおられたなーと思ったのですが、ひょっとしたらこの印相の違いで見抜かれたのかもしれません。浄土真宗では「来迎印」とは言わず、人々を収め取って決して捨てないという阿弥陀仏の慈悲の心を表すお姿、「摂取不捨印」と言います。

このように、仏さまのお姿を表した仏像の手の形には、いろいろな種類があります。ここにあるのはほんの一部で、仏像によっても少しずつ違いがあったりします。そしてそれらは、仏さまの教えであったり、願いであったり、私たちに対する慈悲の心であったり、様々な意味が込められているものとなっています。最後にその意味をもうちょっとわかりやすく、超訳したものを画像とともにどうぞ。もし今度お寺に行かれてご本尊にお参りする際には、これを参考に、仏さまの手の形に注目して、そのお姿がなにを表しておられるのか感じていただけたらと思います。

不思議なご縁で彼岸寺の代表を務めています。念仏推しのお坊さんです。