仏さまには10の異名があってだな

10月に入ると、テレビではいろんな新番組がスタートしているようですね。子どもが生まれてからはもっぱらEテレがメインの生活となっていますが、時々民放を見てみると、いろんなドラマなどの番宣を見かけます。その中で気になったのが米倉涼子さんが天才外科医を演じる『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』。シリーズ3作目らOKしいのですが、私はこれまで一度も見たことはありません。しかしCMで見る米倉さんの「私、失敗しないので」という決め台詞はかなりのインパクトがあり、興味をそそられます。
さて、そんな番宣を見て、ふと思い出したことがありました。それは「仏さま」がお医者さんに例えられるということ。お経の中には、仏さまのことを「医王」とか「大医(王)」という別称で表していることがあります。それもただの医師ではなく、私たち人間の苦しみを根源から治癒することのできる、この上ない医師として例えられています。お釈迦さまの布教の在り方が「応病与薬(おうびょうよやく)」、病や患者に応じて、相応しい薬を与えるようであったと言われることからも、仏さまは私の苦悩の病を治してくれる存在であるということがわかります。
この「医王・大医」というような仏さまの別称は他にもあり、有名なのは如来十号と呼ばれる尊称です。この「如来」という言葉も、仏さまの尊称の一つです。真如(真理・さとり)より来たる者、真理を悟った者という意味があります。他には「応供(おうぐ)」、「等正覚(とうしょうがく)」、「明行足(みょうぎょうそく)」、「善逝(ぜんぜい)」、「世間解(せけんげ)」、「無上士(むじょうじ)」、「調御丈夫(じょうごじょうぶ)」、「天人師(てんにんし)」、「仏(ぶつ)」、「世尊(せそん)」という尊称があります。当たり前のように「仏さま」と言ったりしていますが、「仏」というのも、「仏さま」の尊称の一つなんですね。
ざっとですが、これらの尊称を少しだけ解説しておきましょう。
◯応供:供養を受けるに値する者。
◯等正覚:平等の真理をさとった者。(正遍知とも言う)
◯明行足:智慧(明)と行い(行)が完全に満足した者。
◯善逝:迷いの世界を超え、再び迷いに還らない者。
◯世間解:世間・出世間のあらましの全てを知るもの。
◯無上士:最上最高の存在。
◯調御丈夫:御者が馬を制御するように、衆生を調伏・制御してさとりへ導く者。
◯天人師:天人(神)と人間の師となる者。
◯仏:さとれる者。目覚めた人。
◯世尊:世界で最も尊い方。
(仏と世尊を一つにして「仏世尊」とするなど、諸説ある)
そしてさらに『涅槃経』では仏さまの尊称が33個も列ねてある箇所があります。さすがに全部は紹介しきれませんが、その中でもちょっと面白いな、と感じるものを少しピックアップしますと、「船師」、「大獅子王」、「大象王」、「大竜王」、「商主」、「大丈夫」、「大福田」などでしょうか。
「船師」というのは、船頭や水先案内人がイメージされます。私たちを間違いなく導くという意味があるのでしょう。「大獅子王」や「大象王」や「大竜王」という尊称からは、「もうとにかくすごいんだ!」という迫力を感じられます。「商主」というのは、キャラバンのリーダーの様な導き手ということだそうです。「大丈夫」というのは日本語としても普通に使う言葉ですが、ここでは「だいじょうふ」と読みます。学識人徳の備わった人中の最勝者のことを表す言葉で、現代の「だいじょうぶ」とはちょっと意味が異なりますね。「大福田」は、大福のできる田んぼ、ではなく、大きな福田、大いなる実りをもたらしてくれる存在ということを表しています。
他にも私が最近気になっている尊称が、「鵞王(がおう)」というもの。出典となるお経が見つけられていないのですが、ジャータカでお釈迦さまがこの鵞鳥の王様だった、ということが書かれてあるそうです。仏さまには指と指の間に膜があるとされ、漏れ無く衆生を救うことを表現したもの、と言われていますが、実は煩悩の大海を泳いで私を救うためにその水かきがあるのではないか、という説もあり、それと「鵞王」という尊称が関わっていたりするのだろうか…などと考えています。
長々と説明くさい文章となってしまいましたが、こうして「仏さま」の尊称を紐解いてみると、「仏」という漠然とした言葉からは伝わってこなかったものが、ほんの少しわかりやすくなるように感じました。目指すべき姿であり、依り所とすべき「仏」という存在が、皆さまにも少しでも身近になればと思います。
日下 賢裕

不思議なご縁で彼岸寺の代表を務めています。念仏推しのお坊さんです。