お坊さんも映画が待ちきれない!読み返したくなる原作『ボクは坊さん。』をレビュー

いよいよ、今週末には四国での公開(10/17)、来週末からは全国公開(10/24)が迫る映画『ボクは坊さん。』。この映画を楽しみにしているのは、彼岸寺読者のみなさんだけではありません。

なんといっても、『ボクは坊さん。』の原作者・白川密成さんはお坊さんたちからも大人気。お坊さんたちもまた、映画公開を首を長くして待っているのです!

今回は、密成さんと親しいお坊さん、大西龍心さんから、あらためて原作『ボクは坊さん。』のブックレビューをご寄稿いただきました。大西さんは密成さんと同じく高野山真言宗のお坊さんですし、「未来の住職塾」第三期の同期生。現在も出会った頃と同じようにお寺やお坊さんの未来について学びを続けているお二人ならではの関係がうかがえるレビュー、どうぞご一読ください。

映画公開をきっかけに、原作のほうも人気再沸騰! 帯もあたらしく増版を重ねています。まだお読みでない方は、ぜひ原作にも手をのばしてみませんか?

密成さんと初めて出会ったのは高野山で行われた「法流稟承(ほうりゅうほんじょう)親授式(しんじゅしき)」という住職の任命式の席上だった。お互い祖父の跡を継ぐという境遇に驚き、式が終わって帰りの大阪行き電車「特急こうや」では、これからの住職としての歩み方を語り合ったことを覚えている。密成さんが糸井重里氏のサイトでエッセイを書くことになったと聞かされたことも印象深かった。それから数年後、その連載『坊さん。57番札所24歳住職7転8起の日々。』に寄稿されたものが単行本となって世に出たのが、この『ボクは坊さん。』である。

この本が上梓された2010年、縁あって『高野山時報』(高野山の業界紙)に新刊紹介を書くことになったのでその時の文章を引用しつつ、当時を懐かしみながら再レビューとしたい。

その時の紹介文の中で密成さんのことを、仏教を分析や評論するのではなく自分の言葉で表現する「ちょっと変わった坊さん」の一人であると紹介しているのだが、あれから5年が経ち、多くのお坊さんが様々な方面で活躍するようになった。それでもやはり今回改めて『ボクは坊さん。』を読み返してみて、密成さんが常に自分の心に正直に向かい合い、それを誠実に言葉に紡いでいく態度に深く共感した。

以下その新刊紹介(本『ボクは坊さん。』)の抜粋(加筆訂正)


彼の持つ(他のお坊さんとは違う)「何か」は何なのか。それは「相手の言葉や、伝えたいことに、体や耳を澄ませる」(『ボクは坊さん。』本文より)という点に尽きると思う。そしてその人の言葉を聞く姿勢は実際に会う人たちだけではなく、遠く時空を越えて釈尊や弘法大師にも向けられる。以前彼のブログの中に深く印象に残っているこのような文章があった。

「弘法大師」は、実際どんな方だったのだろう?と、想像する人は、結構多いと思うのですが、僕は今日、「ありえない想像」として、境内を家族で掃きながら、「弘法大師」の1日の全ての会話、言葉が、残っていたら本当に聞いてみたいなぁ、と思った。「朝は、どうやって起きておられたのだろう?」「弟子が起こしたのかな?」「”おはよう”に類する事をおっしゃられたのかな」朝の瞬間でも、なんだか、興味を持ってしまう。そういう想像って、僕は、結構、大事だと個人的に考えています。(ブログより)

「弘法大師」に会えたらと想像する人はボクも含めて多いと思うが、もし会うことができたら教義や事相(密教の実践)について聞こうと思う人はあっても、よりによってどんな”おはよう”を言ったかだって。しかもそれを”大事”かもしれないと感じる彼のこころは、実際に残された言葉についてはより深く聞き取ろうとする。

仏が語るメッセージは、今に生きる僕たちの真ん中を射抜く。(『ボクは坊さん。』本文より)

密成さんにとって釈尊や弘法大師の言葉は決して万人に説かれた処方箋的な言葉ではなく、プライベートなメッセージなのであり、彼の心をふるわせた言葉の数々である。その「ふるえ」が様々なエピソードと共に読む者に伝わってくる。きっとこの本を読んだあとに残る心地良さの秘密はそこにある。


そして出版から5年、この本が映画となり、続編『坊さん、父になる。』も上梓された。相変わらず「ちょっと変わった坊さん」なのが嬉しい。

たとい年の若い修行僧でも、仏の道にいそしむならば、雲を離れた月のように、この世を照らす。(『真理のことば(ダンマパダ)』)

先述の新刊紹介の最後に引いた一文が、今また頭に浮かんだ。密成さんがますます私たちを照らしてくれることを願ってやまない。

寄稿:大西龍心

1966年大阪生まれ。高野山真言宗観音院住職。

神戸大学文学部在学中に高野山にて加行。その後大学院(近世文学専攻)を出て母方の祖父の寺の跡を継ぐ。未来の住職塾三期生(大阪クラス)卒業。

映画『ボクは坊さん。』公式サイト:http://bosan.jp/

彼岸寺 編集部

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