【お寺の掃除◎写真日誌】横浜・妙法寺〜初めて行くお寺の〝ただそこにある〟箒から降り注ぐもの、受け止めたもの

■2018年10月16日(火)「どうぞご自由にお掃除ください。」
@妙法寺(神奈川県横浜市戸塚区)[20℃ 晴時々曇]

一念無明の迷う心は磨かざる鏡なり。
是を磨かば必ず法性真如の明鏡成るべし
「日蓮聖人のお言葉より」

竹箒とちりとり。
そして境内の片隅にすっくと立つ看板には、
こう書かれていました。
「どうぞご自由にお掃除ください。」

神谷町の光明寺さんで
Temple Morningに参加しているうち
いっそのこと、日本中のお寺の山門に
「ご自由に」の目印を掲げてもらって
ふらりと立ち寄って、勝手にお掃除して
軒下や本堂でちょっと佇んでみたりして
ひらりと去っていけるような、
そんなネットワークに想いを馳せるようになりました。

でも、もうあったのです。

初めて降りる神奈川県・東戸塚の駅。
初めての道、初めての空、すれ違う人々。
延々と坂を下った20分後、歩道わきの急斜面に
「経王山」の額が重たげな山門と、
エッジのたった白い階段が現れました。

 

 

「日蓮宗 宗門史跡 妙法寺」

登った先の境内は、こじんまりと見えたのに
いざ掃除を始めてみたら延々と広がるよう。

それでも一緒に掃除をしてくださったご住職、
奥様、僧侶の方、
そしてこのお寺のお掃除が好きすぎて
とうとう植木屋さんに弟子入りを打診された
という女性は、
白州に散るのを物ともせず
リズミカルに落ち葉を掃き集めていくのです。

おもしろいものをお見せします——
そう言ってご住職が案内してくださったのは
墓石が溺れるほどに落ち葉が降り積もった、墓地。

9月の末、台風24号が撒き散らした「塩」のせいで
紅葉もせずに茶色く枯れ落ちる木々の葉は
毎回9リットルの袋、10個分ほど集まるのだとか。

檀家の農家さんに作ってもらったの——
そう言って奥様が見せてくださったのは
穂先がコンパクトで扱いやすそうな、竹箒。

色とりどりな葉も、塩害で枯れた葉も
掃きづらい白州も、スムーズな石畳も
階段も、駐車場への長い坂道も
様々な形の箒を動かすお互いの姿も。

目の端に入れて、音を聞いて
でも声はかけず。

やがて少し黄色味を増した空と
葉を落とし実をつけた木々の間、
車の行き交う音をぬって
小鳥たちが鳴き交わすような声が響いてきます。

——早く早く!
——まってってばー!

門の前を子供たちが連なって、家に向かって行くのでしょう。

お昼ご飯を頂いてから始めた掃除とはいえ
思わぬ長居をしてしまいました。

車でお送りしますね。
もうすぐうちの子供も帰ってくるわ——

そう勧めていただいて
朝、歩いて来た坂を
奥様が運転してくださる車で戻る道すがら
子供たちの声に、傾き始めた陽に
心でひっそり声をかけてみたのでした。

おかえり
おかえり——

南無妙法蓮華経

 

◇ご住職・久住謙昭さんへのインタビューはこちらです。

… Temple Morning 開催データ …
◉日蓮宗 宗門史跡 妙法寺
 http://myouhouji.jp
毎週日曜日 朝6時から お参り・お茶・お掃除・朝ごはん(予約不要)
「自由にお掃除」はお寺が開いている時ならいつでも
○〒245-0051横浜市戸塚区名瀬町772-4(地図
 JR東戸塚駅からバスまたは徒歩(20分)


自宅兼事務所から東京・神谷町の光明寺まで徒歩1時間30分な、グラフィック・デザイナーです。仏教どころか宗教に関してまったくの「一般人」が、お寺で朝の掃除をする会——Temple Morningのアンバサダー(?)として、ゆるりとレポートします。