そもさん:お坊さんは結婚してよいの?

「お坊さんの結婚」についてのご質問を2度いただきました。現代の日本のお坊さんは制度上結婚できるということになっています。けれどそのことに対して疑問を感じる方が多いようです。そのことを受けて、今回「お坊さんの結婚」についてまとめさせていただきたいと思います。

まずなぜお坊さんが結婚してはいけないと考えられるのか、やりとりを通して見えてきたことをまとめてみましょう。

1、仏教は執着を離れるべき教えであり、お坊さんとは、出家し世俗から離れた存在であるはず。
2、海外ではお坊さんが結婚するケースは稀。
3、日本も明治時代まではお坊さんの結婚は禁止。
4、戒律上の問題。

次に、同じくやりとりでいただいたお答えから、なぜ今の日本のお坊さんが結婚できるのかについてもまとめてみます。

1、明治政府によって、お坊さんの肉食妻帯が禁止ではなくなった。
2、1を受け、お寺を継続させる上で、より安定した「世襲」を檀信徒より求められた。
3、親鸞の結婚を前例として(ただし浄土真宗に限る)
4、そもそも日本仏教における戒が異なる。

この中でも特に重要なのが4の、日本における戒の問題であると思います。naggitaさんのご意見によれば、初期仏教の戒と、日本仏教の戒とは異なるものであるとのことです。初期仏教は、自らの輪廻からの解脱を目指し修行に励みます。その中で「具足戒」と呼ばれる戒律を受け、戒を厳守することによって、自らの道を常に正しく保ち続けることに役立てます。そのようなお坊さんは「比丘・比丘尼」と呼ばれます。

対して日本の仏教は大乗仏教とも呼ばれ、今生での自らの解脱のみを目指すのではなく、菩薩として輪廻の中にとどまりながら「利他行」と呼ばれるより多くの衆生を救済する活動を行うことを目的とした仏教です。

その大乗仏教における戒は「菩薩戒(大乗戒)」と呼ばれます。初期仏教とは目指すべきところが違うわけですから、戒についての考え方も、その内容も変わってきます。

その一つが、今回取り上げているお坊さんの結婚に関わってきています。初期仏教における具足戒では性的な行為そのものが戒によって禁止されますが、菩薩戒では、みだりがわしい性交渉をしないことが決まりされます。ですから、菩薩戒を受ける日本のお坊さんが結婚をするということは、戒律の上では問題は無いということになるのでしょう。

naggitaさんのご指摘にもありましたが、一口に「僧侶」や「お坊さん」と言っても、その目指すべきところの違いから、お坊さんの在り方、スタイルに違いが出てきます。日本のお坊さんの在り方は、それこそ出家得度という形式を残しつつも、人々から離れて道を求めるのではなく、人々と共に仏道を歩んでいこうという在り方です。

ここからは私の個人的な意見になりますが、日本でのお坊さんの在り方の中で、初めて公式に結婚されたのが親鸞聖人です。その背景には、師である法然聖人のお諭しがありました。それは「念仏を生活の軸としやすいようにしなさい。戒律を保つほうが念仏しやすいならそうすればよいし、妻や家庭を持つほうが念仏しやすいのであれば、そうしなさい」という内容のものでした。法然聖人は「念仏」を軸に、とおっしゃっておられますが、これは「仏道」と読み替えることもできると思います。

結婚は、確かに執着を増やす側面もあるかもしれません。けれど決して楽に偏った道ではないと思います。結婚は、一人気ままであった歩みを、二人で共に歩幅を揃えてゆくものです。そしてそれは、人々と共に仏道を軸として歩もうとする日本のお坊さんにとって、助けとなってゆくものであると、私は感じております。

その他、このようなご回答をいただきました。

詳しいやり取りはこちらからご覧ください。

http://togetter.com/li/99188

http://togetter.com/li/100840

http://togetter.com/li/102582

日下 賢裕

不思議なご縁で彼岸寺の代表を務めています。念仏推しのお坊さんです。