A.国によって違う、ということではないようです。
もともとお坊さんの衣服と言うのは、財産になるような私有物を持つことが禁じられていた為、雑巾のような古布を縫い合わせて作られた、糞掃衣(ふんぞうえ)と呼ばれる物が由来となっております。
その糞掃衣は、インドのある王様が、仏教僧と、バラモン教の僧とを間違えた為、一目で仏教僧とわかるように、服飾規定が設けられ、純色と呼ばれる青・黄・赤・白・黒に色を混ぜて濁らせた壊色という色が基本とされ、草木の汁や、鉄サビなどを使って染められた、と言われます。「袈裟」と言う言葉も、インドの言葉で混濁色意味する「Kasaya(カシャヤ)」という言葉に漢字を当てたものだそうです。
ではなぜ、国によって衣の色が違うのか、ということなのですが、国というよりも、宗派や文化による違い、と考えたほうがよいのかもしれません。日本でも、各宗派によって、衣に関する決まりはそれぞれ異なりますし、東南アジアと日本では、仏教のタイプも、また文化や気候も大きく異なるため、衣の色が異なってきたと考えられます。
東南アジアの衣は、インドに気候が似ているため色も形も基本に忠実なものですが、日本の衣は、インドや東南アジアより寒い気候風土に合わせた形になり、黒色がよく使われるのは、慎み深さを表している、と言われます。
ただ、衣にはいくつか種類があり、日本で見る黒い衣は普段使いの物で、法要などでは色のついた衣を身につけることもありますし、普段も黒以外の衣をつける宗派もありますので、日本のお坊さんも衣は黒でなければならない、というわけでもないんですよ。