食べてはいけないものがある

先日、精進料理について話をしていましたら、「肉がダメなのは知ってたけど、魚もダメなんですか ! !」 と驚かれたので、私も違う意味で驚きました。 肉よりも魚の方がヘルシーな感じがするからそう思ったのかも知れませんが、魚介類を使うことは一切出来ません。 ということは、普段の食事に利用するカツオだしの使用もタブーです。 ですから、精進料理で使うだしは、使い慣れたカツオではなく乾燥昆布や干し椎茸、大豆などの植物性の食材のみから取ります。

ここでさらに、皆さんにとって厄介なお知らせがあります。 このように野菜を中心とした精進料理であっても、野菜によっては使ってはならない食材がいくつかあるのです。

禅宗のお寺の入り口には、「不許葷酒入山門(葷酒山門より入るを許さず)」や、 「禁葷酒(葷酒を禁ず)」 といった文字が彫られた石柱が立っていることがあります。 葷(くん)やお酒は寺の中には入れてはいかん! ! ということなのですが、この “葷” こそ、精進料理で使っても食べてもいけない野菜のことなのです。

五葷とも、五辛(ごしん)とも呼ばれる5種類の食べてはならない野菜。 実は、この5種類の組み合わせは国・時代・宗教・思想によって異なりますが、現在の永平寺で言われているのは  “にんにく“ ”ねぎ“ ”玉ねぎ“ ”にら“ ”らっきょう“ の5つです。

その他に “はじかみ(山椒や生姜の古語) が含まれる場合もありますが、この2つは現在の永平寺でも使用されていますので、私も使用することにします。

それでは何故、これらの5種類の野菜は食してはいけないのでしょうか?

その最も大きな理由とは、性欲を刺激するせいだと言われています。 欲望を捨て去るのが仏道の根本なので、好んで性欲を刺激する必要がないため、わざわざ食しません。 また、これら五葷は極めて臭気が強く、修行の妨げになるからというのも一因のようです。

そして、先程御紹介しました禅風をよく表現している「不許葷酒入山門」の語。 実を言うとこれには、もう1つの読み方があるのです。

「許されざる葷酒、山門より入る。」

本当はダメだけど、葷やお酒がお寺の中に入っていくよ。 という詭弁ですが、笑い話で使われます。 つまり、こんな解釈が出るほど五葷や酒は魅力的なモノなのでしょう。 でも安心してください。 五葷や肉、魚を使わなくても丁寧な仕込みや工夫次第で十分に美味しい料理を作ることは可能です。

ただ、お酒は現代の精進料理で使用されます。 まぁ、直接呑むわけではないですからね。

吉村 昇洋

1977年3月生まれ。広島市街にある曹洞宗八屋山普門寺副住職。 相愛大学非常勤講師。 駒澤大学大学院にて仏教学修士を取得後、仏教を学問する世界から飛び出して実践の場を求め、曹洞宗大本山永平寺にて2年2ヶ月間の修行生活を送る。その後、広島国際大学大学院にて臨床心理修士を取得し、現在臨床心理士としても活動している。 彼岸寺では、2005年より【禅僧の台所 〜オトナの精進料理〜】を展開する。 現在、精進料理のみならず、禅仏教や臨床心理学、仏教マンガに関しても積極的に執筆や講演の活動を行っている。