『お坊さん便』を知っていますか?

『お坊さん便』は、お葬式やご法要のときに読経していただくお坊さんを手配する「僧侶手配サービス」のひとつです。

主要伝統宗派の1,300名を超えるお坊さんを各地にネットワークしており、全国で毎月数千件のお葬式、ご法事にお坊さんを手配しています。 また、僧侶手配サービスの中ではもっとも認知度が高く利用数も多い、僧侶手配の代名詞的なサービスでもあります。

もしかすると、お坊さんやお寺にかかわる方には「テレビや週刊誌で見た」という方や「ともだちのお寺がはじめたらしい」などのうわさを聞いた方もいらっしゃるかもしれません。

わたしたち『株式会社よりそう』は、この『お坊さん便』を運営している会社です。今回、偶然のご縁をいただいて『彼岸寺』に記事を寄せさせていただくことになりました。

 実はこれまで、わたしたち自身から『お坊さん便』について発信をしたことはほとんどありませんでした

なぜかといいますと、僧侶手配サービスが登場した頃、世間のみなさまに新規性の高いサービスだと驚いていただいた結果、『お坊さん便』はさまざまなメディアで取りあげていただきました。そして、『お坊さん便』をきっかけの一つにして、葬儀供養のあり方、お寺や仏教の今後、といったわたしたちのサービスの範疇をこえた幅広い議論が巻きおこってしまったのでした。

正直なところ、わたしたちはそこまで広範な議論がおこることを予測はしていませんでした。ですから、とにかく一旦「目の前でサービスを必要としてくれているお客さまに集中しよう」と、積極的な発信をおさえるという選択をとらせていただいていたのでした。

『お坊さん便』の現場で起きていること

ですが最近、わたしたちにご協力をいただいているお坊さんのみなさまや、外部で接点をもたせていただいたお寺にかかわるみなさまから、「『お坊さん便』についての正確な情報が少ないから、いろいろと誤解されてしまっている部分があるかもしれないよ」とか「『お坊さん便』の現場でおきていることはお寺にかかわる人にも役に立つと思うから、実際のところを共有したほうがいいんじゃないか」というお声をいただくようになってきました。

そこで今回、仏教に関心がある方やお寺にかかわる方が多く読んでいらっしゃる『彼岸寺』という場にご縁をいただいて、『お坊さん便』自体のことやご利用者さまのこと、『お坊さん便』にかかわるお坊さんのこと、そして『お坊さん便』の前線からみえるお寺のことなど、勇気をだして、わたしたちの言葉でお話をしてみたいと思っています。お読みになった方に、少しでもお寺や仏教の今後の発展に価値のある情報や視点をご提供できたらと願っています。

わたしたちは、仏教そのものを担うお寺やお坊さんではない一般企業です。もしかすると、「当事者でもないのになにを知っているのか」というご意見や「教義や伝統を正しく理解していないのでは」というご懸念もあるかもしれません。

しかし、お客さまとお坊さんのご縁をつなぐ仕組みを提供している立場だからこそ見えることもきっとあるはず、そしてそれはお寺やお坊さんにも意味があるはずだと信じています。ぜひ、そうした観点からお読みくださると大変うれしく思います。

もちろん、内容の誤りのご指摘や、ご意見は大歓迎です。わたしたちはまだまだ小さい会社ですから、いますぐ実現できることもそうでないこともあるかもしれませんが、改善できることにはしっかり取り組みたいと思います。ぜひこちらまでご意見をお寄せください( obousanbin-post@yoriso.com ※いただいたご連絡は全て読ませていただきますが、必ずしもお返事ができない場合があります。ご容赦ください)。

『お坊さん便』のよくある誤解?

ときおり外部の方や提携をお考えのお坊さんから『お坊さん便』についてのご質問をいただくことがあります。その内容はさまざまですが、ときおり実際とは異なる理解をもっていらっしゃることもあります。まずは、そんな誤解をいただきやすい点についてご紹介しつつ、『お坊さん便』の実際のところをお伝えしてみようと思います。

Q:うちのお寺の檀信徒を切り崩そうとしているのでは?

 いきなりセンシティブなテーマかもしれません…。ですが、お寺にかかわる方にとって、一番ご不安の多い点ではないでしょうか。 実際のところを申し上げると、わたしたちは「菩提寺・手次寺をお持ちでない方」専門です。

 「お寺離れ」という言葉を聞くようになった今でも、仏教形式のご供養は日本人の生活に根強く生きているようです。何十年もまえから、日本のお葬式に占める仏式の割合は約9割を維持しています。一方で、わたしたちが40代以上の方に行ったアンケート調査では、身内のお葬式の際に「菩提寺がなかった」とお答えになった人は約3割にのぼります。

また一般社団法人「お寺の未来」さまが公開されている20代の方をふくめたアンケート調査では、約5割の方が菩提寺がないとお答えになっています。つまり、「お葬式やご供養の場面になったらきっとお坊さんを呼ぶはずだが、頼るお寺のあてがない」という方はじわじわ増えています。

この背景をふまえて、『お坊さん便』は「菩提寺や手次寺をお持ちでないお客さま」が「ご葬儀やご供養のためにお坊さんを呼びたい」と思ったときに、読経やご供養をしてくださるお坊さんを探すお手伝いをさせていただくことを役割としています。

わたしたちが運営するサービスの中に葬儀社のプラン比較ができる『葬儀レビ』というサイトがあります。もともとは、そのサイトに菩提寺のない方から「葬儀社とあわせてお坊さんも紹介してほしい」というお問い合わせが多く寄せられたため、『お坊さん便』を開始しました。

 普段お坊さんとのご縁が薄いお客さまにとっては、突然のお葬式の際に、どこのお寺にお願いするかゼロから調べて問い合せるのはとてもハードルが高いことで、そもそも「うちの家の宗派はどこなのか、よく知らないんです」という方もしばしばいらっしゃいます。そこで『お坊さん便』では、相談員がお客さまの宗派やお住いの地域、お坊さんに対するご希望などを確認してから、お坊さんをご紹介させていただいています。

『お坊さん便』は、菩提寺のない方からのお困りのお声から生まれたサービスであるために「すでにお寺の檀信徒、門信徒である方に対して、別のお寺を紹介します」というようなことは元々行っていないわけです。加えて、そうした紹介を行った場合、菩提寺にある一族のお墓に納骨する際に断られたり、法要のやりなおし、戒名・法名のつけなおしといった事態になるため、お客さま保護の観点からも必ずお断りするようにしています(ただし、ご事情があって菩提寺のご住職から許可をいただけたことを確認した上で手配させていただく場合はあります。具体的には、菩提寺を地方にお持ちで現在は都心にお住まいのお客さまが自宅で法要を行おうとしているが、菩提寺のご住職がご病気で都心まで出ることが難しい、というようなケースです)。

Q:その場限りの関係を推奨しているのでは?

『お坊さん便』では、「1回ごとのお付き合い」という言葉をときおり使わせていただいています。そのため、「刹那的な接点を推奨しているのでは」というご不安をいただくことがあります。たしかに、僧侶手配サービスを手がける会社さまでそのような案内をしているところもいらっしゃるそうなのですが、わたしたちはそうした立場はとっておりません。

菩提寺をお持ちでない方の多くは、「昔、祖父母の家でたまにお坊さんを見かけたな」という程度で、お寺とのお付き合いの経験がほとんどありません。ですから「お坊さんがいらっしゃったら、何を話せばいいのだろう」とか「もし自分たちと気が合わなかったら、その後どうしよう」といった漠然とした思いをしばしば抱えていらっしゃいます。

お葬式やご法要でお坊さんを呼びたいと思う方であっても、「一度お願いしてしまうとそのお坊さんとのお付き合いに縛られてしまうかもしれない」という不安を感じているということなのです。そこで、わたしたちは「その後のお付き合いのあり方はお客さまの意思で決められる」、つまり1回ごとにお付き合いできるというお約束をすることで、お坊さんを呼ぶ際のお客さまのご不安を解消し、菩提寺のない方でも安心して仏式のご供養を執り行うことができるようにしています。

ただ、このルールはお客さまのためにあるものですので、お客さまとお坊さんとの関係が深まり、長いお付き合いが生まれるのは大変うれしいことだと考えています。実際「以前お葬式で『お坊さん便』を頼んだのだけれど、ぜひ四十九日も同じお坊さんにお願いしたい」と長いお付き合いに発展する事例は頻繁にあります。また、もしもお客さまご自身の希望によって「このお寺にぜひ入檀したい」と思われた場合は、そうしていただいても全く構わないですし、実際そうした事例も起きています。

ですから、少しおおげさに言えば、お葬式やご法要という点のイベントから、仏教の教えに触れたり、お寺というコミュニティに参加したりと、お客さまご自身の人生に価値ある形につながっていくところまでお手伝いしていきたい、というのがわたしたちの本音です。 

 Q:海外の会社がやっているサービスなんでしょう?

こちらは実のところ、非常によくいただくご質問です(笑)。

数年前、外部のECサイトで『お坊さん便』サービスを紹介しはじめた際に、ニュース記事などで掲載先のサイト自体が『お坊さん便』を運営しているのだと誤解した紹介をされることがあったため、海外の会社だと思われている方もいらっしゃるようです。

わたしたちは五反田に本社をおき、ライフエンディングのさまざまな負を解消しようと取り組んでいる創業11年目の日本の会社です。

 いわゆるベンチャー企業とよばれる種類の会社で、みずほキャピタル、三井住友海上キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、グローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズ、Spiral Ventures Japanといった企業のみなさまから出資を受けて、現在は『お坊さん便』に加え、全国でパッケージ型のお葬式プランを提案する『よりそうのお葬式』、葬儀社の比較紹介サイト『葬儀レビ』、お仏壇のECサイト『ベスト仏壇』などを運営しています。

 わたしたちが最終的に目指しているのは「ライフエンディング領域における負の解消」です。

ライフエンディングは一連の長いプロセスです。ご遺族は大切な方とお葬式でお別れした後、お墓を建て、ご法要を行い、故人さまを偲びます。また役所などに各種届出を行い、遺品を整理し、相続について話しあいます。そうしている間に、自分自身もしだいに日常へと戻っていきます。そのうちに、自分自身も体がおとろえ、介護を受けたりしながら、いつか亡くなる日がやってきます。

このプロセスの中で、「高額なお葬式費用に後悔をする」「家族を亡くした後の複雑な手続きに疲弊する」といったお悩みがあります。さらに、「相続で親族とトラブルになる」「ご遺族を失った悲しみがつづく」「介護で子どもに負担をかけてしまう」「独居の孤独に耐えられず悩む」等々…ライフエンディングには人間関係も含めたさまざまな問題が起きてきます。

お葬式やご供養は、このような長期にわたるプロセスにおける一部にすぎません。

現在は、お葬式のプラン選びや費用に悩むことがないようにする、などのテーマからはじめていますが、わたしたちはこうした亡くなる前の人生、誰かを亡くしたあとの人生まで含めたライフエンディングの負を解消し、よりよい人生を過ごせる人を増やしたい、そうした一連の仕組みを作るために事業を行っています。

そして『お坊さん便』では、この大きな目的に基づきつつ「頼るお坊さんがいないことで困ったり、ご供養の機会自体をあきらめてしまう方がいる」という問題を解消することを目指しています。

同種のサービスを手がける企業さまの中には、葬儀社のご支援を目的にしている会社さま、お坊さんご自身が設立された会社さま、お寺の経営をご支援するコンサルティング会社さまなどもございます。しかし、わたしたちはそうした会社さまとも異なり、「最終的にご利用いただく生活者さまのライフエンディングの問題を解決する」という視点から、僧侶手配という領域にかかわらせていただいている、ということになります。

さて、第一回目はまず『お坊さん便』に対してよくいただく誤解と実際のところをご紹介してみましたがいかがでしたでしょう。今までお持ちだったイメージと異なることもおありだったかもしれません。

次回は、もう少し詳しいこと、つまり「どんな人が『お坊さん便』を利用しているのか」「お坊さん便にご連絡をいただくきっかけや理由」についてご紹介をさせていただこうと思います。

小野敬明

お葬式、ご供養などの前後に起きるライフエンディングのさまざまな問題を解決しようと取り組んでいるベンチャー企業『株式会社よりそう』において、広報、およびお坊さん手配事業を担当しています。