今年も大賞と各賞が決定!「輝け!お寺の掲示板大賞2024」

「輝け!お寺の掲示板大賞2024」が今年も開催されました。今回は7月1日~9月30日までの3か月の応募期間の間にX(旧ツイッター)とインスタグラムあわせて3755作品が集まりました。

昨年の第7回目(2023年)の4107作品に比べると減少しましたが、第1回目(2018年)700作品の5倍以上の作品が集まったことになります。

多くの投稿作品の中で大賞に選ばれた作品は、掲示板大賞の常連である広島県の真宗大谷派・超覚寺の作品「望もうと望むまいとあなたは独りじゃない」でした。

現在、孤独を能動的に選ぶ人がいる半面、孤独な状態に追い込まれる人もいます。年を取れば取るほど、身内や親友との死別があり、「望まない孤独」に陥る可能性が高くなります。こうした「望まない孤独」は、精神や肉体に大きな悪影響を及ぼすことが、近年さまざまな調査で判明しており、先進国政府が孤独問題に積極的に取り組むようになってきています。

孤独を望もうと望むまいと、私たちは「つながり」の中でしか存在することができません。人間は決して独りで生きていくことができないからです。無数のつながりの中で、今私は生かされています。このつながりを、仏教では「縁起」といいます。講評は以下の通りです。

孤独な状態を望む人、望んでいないのに孤独な状態に陥る人、タイプは様々ですが、この世に独りで生きている人など存在しません。どのような人も人間・生物・自然を含め無数の目に見えない繋がり(縁起)の中で生かされています。社会の中の孤独・孤立問題が深刻化し、分断が強く叫ばれる現在の世の中だからこそ、「繋がり(縁起)を離れて生きている人は存在しない」ということを想起させるメッセージに大賞を送りたいと思います。

他の受賞作品も一つ紹介します。仏教伝道協会本賞を受賞した鹿児島県の浄土真宗本願寺派・顯證寺の作品「私なんか、という自慢」です。

「私なんか」とよく発言する人がいますが、これは謙遜のように見えて実は「自慢」にあたります。この作品の講評の中に解説が含まれています。

「慢」とは他者と比較する中で生まれる煩悩。「自慢」と言えば、一般的に自分のことを自分でほめ他者に誇ることですが、「私なんか」という言葉も「慢」から発生した「卑下慢(ひげまん)」(自慢)にあたります。「慢」という煩悩にはくれぐれも気を付けたいものです。

今回の全受賞作品は「輝け!お寺の掲示板大賞2024」のウェブサイトで確認することができます。また今回も
朝日新聞(12月5日)日刊ゲンダイ(12月6日)をはじめ様々なメディアで取り上げていただきました。もしよろしければご覧ください。

今年もお寺の掲示板大賞に大変多くの投稿をいただきまして、誠に有難うございました。来年も開催する予定ですので、引き続き数多くの投稿をお待ちしております。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

浄土真宗本願寺派僧侶。1976年生まれ、福岡県出身。早稲田大学社会科学部・第一文学部東洋哲学専修卒業。早稲田大学文学研究科東洋哲学専攻修士課程中退。 築地本願寺内の(一社)仏教総合研究所事務局に勤務の後、2011年~2017年までドイツ・デュッセルドルフのドイツ惠光寺において、ヨーロッパ開教や日本文化を発信する事業に携わる。2017年より(公財)仏教伝道協会に勤務。 2018年に「輝け!お寺の掲示板大賞」を企画し、話題を集める。著書に『お寺の掲示板』(新潮社)。連載に「「お寺の掲示板」の深~いお言葉」(ダイヤモンド社「ダイヤモンド・オンライン」)などがある。