ニューノーマルな仏事のあり方を模索する【彼岸寺 2020年お盆 意識調査】結果発表!

コロナウイルスの流行で、お寺の行事もさまざまな影響を受けている本年。お盆も、その限りではありません。先日の京都新聞では「お盆参り、僧侶迎えて大丈夫? コロナ禍の今年はどうすれば…檀家訪問せず代わりの法要も」という記事が掲載されるほど、お盆参りについての迷いや悩みがあることが見受けられます。

そこで今回、Twitterを使った意識調査を試みました。コロナ禍におけるお盆参りについて、お坊さんがどのように考えておられるのか、そしてお坊さんを迎えられる檀信徒・門信徒の方が、どのように感じておられるのか。それが少しでも分かれば、これからの仏事のあり方のなにかの参考にもなるのではないか、という思いで、いくつかの設問を用意しました。

この記事では、その結果を見ながら、分析とまではいきませんが、皆さんの思いを探っていきたいと思います。

質問1.お盆のお参りを行うか?

1つ目の質問では、「今年のお盆のお参りを行うかどうか」ということを尋ねました。お坊さんの方では187名からご回答をいただき、56.7%の方が「例年通り行う」、31%の方が「形を変えて行う」と答えておられます。つまりほぼ9割の方が、今年も何らかの形でお盆参りを行うということで、中止は12.3%に留まりました。

ご注意いただきたいのは、棚経を始めとした「お盆参り」というのは、広く一般的に行われているイメージがありますが、地域やお寺によっては行われないケースもありますので、この質問にお答えいただいているのは、例年、お盆のお参りを行っているお寺さんからご回答をいただいており、そのほとんどが中止をしない予定だ、ということです。

例年とは違った形で行う、と回答された方からは、法要のオンラインでのライブ中継や、これまでご自宅に僧侶が赴いてお参りしていたものを、お寺に来ていただく合同盆という形にしたという意見もありました。

一方、檀信徒・門信徒の方からは118名からご回答をいただきました。結果としましては、53.4%の方が「今年はご遠慮する」という回答をされ、「お参りをしてほしい(してもらう/すでにした)」を上回っています。

これはお坊さんにとっては、かなり衝撃的な結果ではないでしょうか。もちろんコロナ拡大の影響を考えれば、お参りをご遠慮されることはある程度予想されていましたが、お参りを希望される方がこの結果では半数に満たなかった、というのは、私自身も驚いております。

もちろん、その差としては、約7%と大きくありません。それだけ、お参りをされる方が「今年はどうしようかな……」と悩んでおられる証左と見ることもできるでしょう。

その一方で、お坊さんの「なるべく中止はしたくない」との思いが9割近くを占めていることと比べると、そこには気持ちのギャップが表れているとも読み取れそうです。

質問2.読経の際、マスクはどうする?

2つ目の設問では、「読経の際のマスク着用」について尋ねました。

こちらについては、このアンケート以前から、どのようにすればいいのか?ということがお坊さんの間でもいろいろと話題に上がっていましたので、個人的にもとても気になる問題でした。

僧侶の回答は146名からいただき、52.7%がマスク着用を、11%がフェイスガードを着けて読経すると回答されています。つまり、6割以上がマスク着用したまま、読経をするという結果になっています。お家を訪ねるまでは着用しつつも、読経の際にはずすという方は、36.3%という結果になりました。

これに対して、檀信徒・門信徒の方からは86名から回答をいただき、「読経の際にもマスク着用して欲しい」という方が64%、「着けなくてもよい」という方が36%となっています。

これはマスクなどを着けると答えられたお坊さんの回答と、ほぼ数字としてマッチしているという、実に興味深い結果となっています。どちらも約4割の方が、「マスクをはずす/着けなくてもよい」と回答された背景には、読経は僧侶が背中を向けて行うものであるため、飛沫が直接飛んでこないであろう、いうことが一つの理由としてあるのかもしれません。

僧侶の立場としましては、読経の際にマスクを着用するのは、息継ぎ(呼吸)がしにくいのと、特にこの時期は暑さの問題があります。私も一度30℃を超える中でマスクを着けてお経をあげていると呼吸困難のような状態となり、思わず途中でマスクを外した、という経験もありました。ですから「できれば読経の際には着けたくない……」というのが本音としてあります。お坊さんの中で、約36%の方がマスクをはずすと回答されたのは、そのような事情があることも推測されます。

それでも、やはりコロナ禍において、安心して僧侶を迎えていただくためには、できる限り、心配の必要がないようにしていくことも大切ですから、この結果をしっかりと受け止めたいですね。

質問3.お茶のお接待はどうすればいい?

3つ目の設問では、「お茶のお接待」について尋ねました。お茶のお接待というのは、お参りをした後、お家の方とお茶を飲みながら、お互いの近況などを語り合う、いわば僧侶と檀信徒・門信徒さんとのコミュニケーションの時間です。

ただ、コロナ禍においては、お茶碗などを使って飲み物を飲むことから感染が広がることも懸念されますし、会話をする中での伝染も考えられます。これは、僧侶にとっても、檀信徒・門信徒の方にとっても、どう対応すればいいのだろうか?というのが一つの悩みのタネであったのではないでしょうか。

アンケートの結果を見ますと、143名のお坊さんから回答をいただき、63.6%の方が「今年はお茶のお接待の準備は必要ない」という答えとなっています。大半の方が、やはりお茶をいただきながらお話をすることで、万が一のことがあってはいけないということを意識されているようです。ただ、やはり暑い夏ですから、ハードなお参りを続けられるお坊さんにとって、水分を補給できるというのはありがたいことには違いありません。ですから、「ペットボトルなどで持ち帰れるならありがたい」と答えた方が32%おられるというのは、そういう理由からだと予想されます。

一方、檀信徒・門信徒の方からは85名にお答えいただき、「ペットボトルなどを準備する」と回答された方が57.6%となりました。また「今年は準備しない」という回答は8.2%と、ごく少数とまっています。これはおそらく、暑い中お参りをする僧侶を気遣ってのことだと考えられ、僧侶を迎えられる方々の優しさが感じられたような思いがしました。

このお茶のお接待に関しては、お坊さんにはもう一つ質問をしました。

それは、「もしお茶を準備してくださっていた場合にはどのようにしますか?」という質問です。こちらはお坊さんには少し酷な質問であったかな、という気もしましたが、157名中、6割を超える方がありがたく頂戴するとお答えいただいています。これはおそらく、お茶も「布施」の一つであると考えて、そのお気持ちを大切に受け取ろうということなのかもしれません。お釈迦様は「布施」としていただいた食べ物は残さないようにしなさいとおっしゃったともされていますので、この心がけというものは、大切であろうかと思います。

一方、37%の方は「今年はご遠慮する」と答えられています。こちらはやはり、お互いに万が一コロナ感染ということがあってはいけない、ということからの回答になることでしょう。どちらにせよ、この状況下では、お茶をいただくかどうか一つをとっても、大変悩ましいこととなり、コロナウイルスの私たちの日常への影響の大きさを思わずにはおれません。

ただ、お坊さん、そして檀信徒・門信徒の皆さんのお気持ちを考えていきますと、「飲み物を持ち帰る」というのが、お互いの気持ちにもっともマッチした形であるということができるのかもしれませんね。

質問4.除菌用アルコールの使用について

4つ目の設問としましては、除菌用アルコールの使用についてお尋ねをしています。この質問では、上に挙げました京都新聞の記事に、「お坊さんに玄関でアルコール消毒を頼むのも失礼では」という迷いについて紹介されていたことから、お坊さんがどのように受け止められるのか、また檀信徒・門信徒の方はどのようなお気持ちなのかをお尋ねするというねらいがありました。

お坊さんの回答では、151人中62%の方が「準備していただければ喜んで」と回答され、35%の方が「持参する」と回答されました。この答えからは、やはりお坊さん方も、コロナウイルスの感染予防に、しっかりと気遣いをされているということが伺えます。ですから、お坊さんにアルコール除菌をお願いすることは「決して失礼にはあたらない」というように考えていただいて大丈夫そうです。

檀信徒・門信徒の方の回答からは、93名のうち67.7%の方が「できればお願いしたい」とお答えいただいています。僧侶側は「準備する必要はない」と答えた方が2.6%と少ないことや、6割以上の方が「準備していただければ喜んで」と答えていることを考えますと、安心して除菌用アルコールをご準備いただければいいと言えそうです。

ただ、やはり「アルコール除菌お願いします」とお願いするというのは、少し気が引けるという意見もいただきました。そのお気持ちも、よくよく理解できるものです。

そんな場合には、玄関や仏間の机などにさり気なく置いておかれるとよいかもしれませんね。僧侶の方も、除菌用アルコールが準備されているような場合には、さり気なく使用するというのが、良いのだろうと思います。このような気遣いは「お互い様」という部分がありますから、お互いにさりげなく気をつけるようにすることが大切になってきそうです。

質問5.お盆参りの延期について

こちらは僧侶限定の質問になります。「お盆のお参りって延期していいの?」という疑問をいただいたところからお坊さんの皆さんに聞いてみようと思いました。私の予想では、お盆のお参りは時期的な要素がある仏事ですから「なし」と答える方が多いのかな?と思いましたが、なんと7割近くの方から「あり」とお答えをいただきました。

「まだ今はコロナウイルスで不安……でもちゃんとお盆のお参りしたい」とお考えの方は、一度お寺さんとご相談されるとよいかもしれませんね。

ただ、やはり「お盆」のお参りですから、リプライには「8月内なら」とお答えいただいた方もおられました。このあたりも、延期のご相談される際には参考になるお答えかと思います。

質問6.お坊さんのコロナ対策について

最後の設問では、お坊さんにはもう少し幅広くお参りに際してのコロナ対策について質問し、檀信徒・門信徒の方には、お坊さんがコロナ対策をされることに対してどのように感じておられるのかを尋ねました。

マスクや除菌用アルコールの使用など以外のコロナ対策をしているというお坊さんは、118人中50.8%と、約半数にのぼりました。リプライをいただいた中には、お寺でのお参りの際に、ソーシャルディスタンスを保つ工夫や、使用された経本、スリッパまで消毒するというご意見も頂戴しました。

また、こちらは今回の意識調査の前に、彼岸寺でも寄稿を頂いております「尼僧のひさこむ」こと佐藤妙尚さんがツイートされていたのですが、なんとライター、お線香、そしてりん棒も持参されているそうです。これは、お参りにお伺いする際、お仏壇の前で僧侶が物に触ることからウイルスが付着する可能性を考慮して、ということなのだとか。私には思いも寄らないことで、ここまで徹底して気を配れるというのは、本当に素晴らしいなと感じました。

経本にスリッパまで除菌をされることもそうですが、こういう細部への心配りが、お寺に対してのより一層の安心と、信頼に繋がるのだと感じました。

その他にも次のようなご意見がありました。
・携帯アクリル板を持参。
・密集を避けるお願いをする。
・密を避けるため、一座で行っていた法要を、四座に分けて奉修する。
・棚経を行って良いかどうか及び可能な場所日時の事前確認。
・手指除菌ジェルを持参し、仏具や湯呑みに触る前や帰宅時に消毒。アゴかけ型のフェイスシールド着用で訪問→読経→お話→帰宅。お茶をいただく時のみ外し、持参した手拭いの上に置きます。 分散を促す為に日にちにこだわらずにお参りを受付。

また檀信徒・門信徒の方からも、やはり僧侶の方になんらかの対応をしてくださることを望まれる方が92人中75%、なにも対応しないのはありえないという回答が約20%と、対策を求める方が大多数を占めました。このことからも、やはりお坊さんの側に、コロナ対策を行うことが求められており、しっかり対策することが、檀信徒・門信徒の皆さんの安心と、お寺への信頼に繋がっていくであろう、ということが言えそうです。

(この設問には、「答えにくかった」というご意見も頂戴しており、私の思い至らない部分がありましたこと、反省いたしております。)

まとめ

以上、今回の意識調査を通して見えてきたことをまとめてみました。振り返ってみますと、多くの僧侶が、やはり「お盆」という仏事を大切にしていることが見えてきました。

だからこそ、多くのお坊さんがコロナ対策をしっかりと心がけておられ、お参りをされる方々が少しでも安心できるようにと腐心されているようです。特に棚経などでは、たくさんのお宅にお参りをして回りますので、自分がスプレッダーのようになってはいけないという意識も、皆さんお持ちなのかもしれません。

また僧侶を迎える側の檀信徒・門信徒の方も、安心してお参りに来ていただけるようにと考えてくださっていることも、今回の意識調査から伝わってきたように思います。

「今年のお盆のお参りどうしたらいいんだろう?」という悩みは、そのままお互いに気遣いをしているということの裏返し。どのような対策もそうですし、あるいは「今それをしても大丈夫かな?」という行いの中にも、それぞれの思いがあるのだということも、今回の意識調査の中から垣間見えてきたような気がします。

それぞれが、それぞれの立場で気を配っているということがしっかりと伝われば、お坊さんもお参りをされる皆さんも、ともに安心してお参りができるようになるということが言えそうですね。

また、今回の意識調査の結果は、お盆のお参りに際して行ったものですが、日頃から「月忌参り」という形でお参りをされているケースや、浄土真宗で見られるご自宅での「報恩講」などのお参りにも、参考になるのではないかなと思います。

コロナウイルスの流行によって、これまでと同じようにはいきませんが、共に気をつけ合うことによって、お互いが安心でき、大切な「仏事」も続けていくことができる。今回の意識調査の結果から、そのようなことが言えそうですね。

不思議なご縁で彼岸寺の代表を務めています。念仏推しのお坊さんです。