2016年5月、銀座の真ん中にオープンした「GINZAサロン」。お寺の役割を今の時代に合ったカタチにしたいと考えて開かれた、築地本願寺のサテライトテンプルです。ここでは、仏教的な考え方をベースにした講座や、日々の暮らしのヒント、人生や終活を考える講座が開かれていて、興味があれば誰でも自由に受講することができます。
この度レポートします講座は、昨年末に開講された『大喜利法話』です。参加者から悩みや疑問、愚痴などを聞き、それをお題として頂戴し、僧侶が仏様の教えにそってお答えするという講座です。さらに今回は、「宗派が違うと何が違う」というサブタイトルを設け、「同じ仏教でも宗派によって答えは変わるのか?変わるとしたらそれはなぜか?」という切り口から、真言宗豊山派僧侶2名、浄土真宗本願寺派僧侶2名が講師となりました。
まず第一部は、『即興法話』。参加者から興味のある「お題」を出していただき、僧侶がその場で考えてお話しをさせていただきます。今回出てきた「お題」は以下の5つ。
①今、ここを生きる
②目先のこと
③使命
④マインドフルネス
⑤檀家
これらのキーワードを中心にお話をするわけですが、僧侶の個性に加えて、真言宗では「即身成仏」「曼荼羅」、浄土真宗では「本願」「南無阿弥陀仏」など、その宗派ならではの用語を中心に展開されるアプローチの違いがとても興味深く、聞いているうちに段々と仏様の世界に誘われていきました。
第二部は、『大喜利法話』。今回参加者からは、「お坊さんの悩みを聞かせて下さい」「鎌倉にはなぜ浄土真宗のお寺がないのか」「流派の違いはどう違うのか」「“自分のために生きる”と“他から求められる自分の役割を果たす”どちらが幸せとなるのか?」、真言宗と浄土真宗については「法話では何が違うのか」「メインの教えをざっくり言うとどんな感じ?」などの質問疑問が寄せられました。
それぞれの僧侶の回答はとてもユニークで面白く、あっという間に時間が経ちました。真言宗の教えのキーワードは「即身成仏」。仏様と同じ言葉を使い、同じ仕草をして、同じ気持ちになったら、あなたも仏様。これが真言宗の醍醐味です。この空間であなたと私は一つになっている、あなたと私は一緒ですという感覚。大きな仏様の世界観をいただくことが、日頃の悩みを解決するヒントになります。
対する浄土真宗の教えのキーワードは「本願」。本願とは、「あなたを決して見捨てない、必ず救う」という阿弥陀様の願いのことです。私のことを願い通しに願っていて下さる仏様がいらっしゃるから、私は私でよかったと受け止められる土台をいただく。この土台が人生の苦を乗り越える力となります。
お釈迦様は、相手の性格や環境に応じて説法する「対機説法」のスタイルで教えをひろめられました。そのため「八万四千の法門」といわれるほど数限りない教えが伝わっています。その教えの中から、それぞれの祖師方は、自らの救われる教えをお示しになり、その歩まれた足跡は宗派となりました。このように「仏教」と言っても、宗派による違いはありますが、仏道を歩むすべての者が目指すのはお悟りの世界です。その心は「分け登る麓の道は多けれど 同じ高嶺の月を見るかな」、一休禅師の作と伝えられる道歌にも詠まれます。真言宗でも浄土真宗でも、それぞれのご縁を大切にするところに、宗派を超えて、私を仏道を歩む身に育てて下さった仏様のおはからいの尊さに手を合わせることができるのだと感じます。
違う宗派の僧侶の説法を同時に聞くことができる場はあまりないので、とても貴重な機会でした。他を知ることよって初めて見えてくることがあり、自分の宗派の特徴をより深く知ることができたと、参加者も喜んで下さいました。「GINZAサロン」は、心豊かに生きる学びと体験の機会を得ることができる場所です。人生に迷った時、人間関係に疲れた時、ちょっと立ち寄っていただければと思います。
(この記事は西原龍哉さんからご寄稿いただきました)
■築地本願寺サテライトテンプル・GINZAサロン
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