【レポート】お坊さんの大博覧会!「ごえんさんエキスポ」の模様をお届け!(後編)

12月9、10日の2日間に渡って京都・西本願寺にて開催されました「ごえんさんエキスポ」レポート後編。前編に続いて、気になったブースを回ってきた模様をお伝えいたします。

考えたくない?でも考えたい……死について語り合う「デスカフェ」

次に訪ねたのは「ワカゾー」というグループのブース。2015年から有志の若手僧侶(若僧)が集まってスタートさせたグループで、死についてカジュアルに話せる場をつくる「デスカフェ」を中心として活動を展開しているそうです。「死」というと日常なかなか触れにくい・触れたくないテーマ。最近では終活やエンディングノート作成などの普及によって、少し敷居が低くなっている感もありますが、もっと普段からでも「死」について話せるようにできたらという思いから、この活動が行われているのだとか。

「死」という言葉で一括りにされることでも、紐解けば「自分の死」であったり、「大切な人の死」であったり、幾重にもレイヤーが重なるもの。それを解きほぐすべく、「デスカフェ」では毎回テーマに沿ってワークショップや想いの共有が行われているそうで、このブースでもいくつかのワークショップが用意されていました。

死のイメージを表現。

せっかくなので、私もアイスブレイクとして行われている、「死んだらどうなる?」というイメージを、クレヨンを使って表現するというワークにチャレンジしてみました。今までそんなことを考えたことがありませんでしたが、頭に浮かんだイメージをクレヨンで表現……そしてたまたま同じタイミングでワークに参加された方と、どのような想いでその表現が成されたのか少し話して共有も行いました。こうしたワークを通して、今まで思いもよらなかった「死」についてのイメージが膨らんだり、違った視点の考えを聞くことで、また改めて「死」について考えるきっかけになったように感じられました。

 

花まつりと言えば甘茶!?いえいえこれからは「サイダー」です!

デザインもカワイイはなまつりサイダー。

花まつりと言えば、お釈迦さまの誕生をお祝いする行事。お釈迦さまがお生まれになった時に甘露の雨が降ったという伝説から、甘茶をいただくというイメージがある花まつりですが、より多くの方と花まつりをお祝いしたいという想いから「はなまつりサイダー」を作り、花まつりの盛り上げに取り組んでおられるのが、佐賀県・正徳寺のご住職、浦霧慶哉さん。これまで25,000本以上を宗派を超えた全国のお寺さんなどに発送し、花まつりの盛り上げに貢献されています。

さらに浦霧さんは、「法名のある生活」ということで、「法名額」というものも作られておられます。法名というと、亡くなられた方につける名前のようなイメージがありますが、本来は、生きている間に帰敬式(ききょうしき)という儀式を受け、仏教徒としての名をいただくのが法名の意義。ところが、せっかくいただいた法名も、大切にするあまりにお仏壇の引き出しにひっそり眠りっぱなしになってしまうこともしばしば……そうではなく、「自分は仏教徒である」ということを日々感じながら生活を送るための根っことして、法名というものがあるべきではないかという思いから、法名を生活の中に取り入れていくためのものとして開発されたのが「法名額」だそうです。

法名額と、ポストカードの法要案内。

他にも、お寺の法要案内をおしゃれなポストカードにデザインするなどして、お寺と地域の人との距離を縮めるべく、熱心に活動されるお坊さんでした。

 

聞き手が関わって作られる書籍「響流書房」

電子書籍だけでなくブックレットの販売も。

彼岸寺でも取り上げました仏教書専門の電子書籍出版社「響流書房」も今回ブースを出展し、期間中の無料セールと、初めて電子書籍を読む方向けに、アプリのインストールなどのセッティングも行うなどのサービスを行っていました。

ブースには電子書籍以外にも数冊の冊子も置かれており、お寺での施本などにニーズの高いものに限っては、ブックレットとして出版もされているのだとか。

また「響流書房」の書籍は、実際に行われた法話を文字起こしした法話録のスタイルのものが多く、主宰されている瓜生崇さんにその点についてお聞きすると、聞き手がいることで語られる言葉の良さというものがある、ということをおっしゃいました。法話というものはやはりライブであり、話し手と聞き手がいて成り立ち、ただ文字として書かれるものとは違う良さがあるのだそうです。つまり、聞き手が関わって生み出されるものであり、「響流書房」の書籍もまた聞き手と共に作られるところに、大きな意味があるということをお話いただきました。

 

お坊さんが漫才で法話!?「伝道集団アサカラザル」

宮武大悟さん(左)と久留島法暁さん(右)による漫才。

白洲の他にも「安穏殿」という施設内でも、ステージでのパフォーマンスが行われていました。彼岸寺でも以前取り上げました「ジッセンジャー」のヒーローショーや、人形遣いでお坊さんの安藤圣一さんによる人形説きなどが行われました。

その中でも私が気になったのは「伝道集団アサカラザル」による漫才法話。「お坊さんが漫才で法話をするっていったいどういうことなのか!?」ということで見に行って参りましたが、なるほど面白い!お坊さんやお寺とのご縁の深い方なら「あるある!」と思ってしまうようなシチュエーションをボケとツッコミを交えてコミカルに表現しつつ、ご法事のことや作法について、そして仏教の教えにまで触れることができるという構成になっており、こんなのもアリか!と思わず唸ってしまいました。

出演後、漫才をされた2人のお坊さんに突撃してお話も伺いました。なぜ漫才という方法にチャレンジされたのかをお聞きすると、世代として漫才というものが当たり前にある中で育ち、漫才も一つの表現方法として馴染みのあるものであったこと、そして何より自分たちが楽しめる方法であることが大きな理由なのだとか。そして法話というものも、従来のあり方はもちろん大切にしながらも、新しい表現を求めていく姿勢も大切なのではないかというところから、「アサカラザル」という伝道集団が生まれたとお話をいただきました。

「アサカラザル」はお二人の他にもメンバーがおられ、漫才以外にもバンドを組んで、仏教の視点で歌の意味を捉えなおしてみたり、手品を盛り込んだりと、いろんな表現を駆使しながら、浄土真宗の教えを伝えておられるのだとか。

メンバーの宮武大悟さんは新しい表現を模索する一方、浄土真宗の伝統的な節談説教にも取り組まれており、伝統的な節談説教も決して古いものとして留まっているものではなく、バージョンアップを繰り返しているものであり、自分たちもどんどんとバージョンアップしていくことが大切であるとお話くださいました。

広島青年僧侶・春秋会のメンバー。

またアサカラザルのお二人が所属する広島青年僧侶・春秋会もブースを展開し、「ナムロック」などの活動の紹介のほか、広島がプッシュしているレモンを用いた塗るお香、オリジナル塗香(ずこう)づくりの体験も行われていました。

まとめ

このようにいろんな活動をされるお坊さんを中心としたグループが集まった「ごえんさんエキスポ」。紹介しきれませんでしたが他にも魅力的なブースが数多く並び、こんなにもアツく面白いお坊さんたちがいるのか!と私も興奮せずにはおれませんでした。お坊さんたちも、お互いの活動にいろんな刺激を受けていたようで、またここから何か新しいものが生み出されてくるのではないかということも予感されました。

冬の京都の風は冷たいものでしたが、西本願寺の境内にはそれをものともしないお坊さんたちの熱気が溢れた二日間でした!

不思議なご縁で彼岸寺の代表を務めています。念仏推しのお坊さんです。