彼岸寺読者の皆様、初めまして。スペイン・マドリッド在住の長谷川雅彬と申します。
自分は何者なのか、何を彼岸寺に寄稿したいと感じたのか、まずは経歴の紹介から始めさせてください。
いじめられっ子、格闘技、金融業、そして得度へ。
幼少期はとても繊細で、いわゆるいじめられっ子でした。その反動から周囲の猛反対を押し切って格闘技を始め、高校の時にはテコンドーで全国大会優勝、大学では総合格闘技のプロの試合に出るに至りました。
格闘技に傾倒し途中留年もありましたが、経営学と金融を学び卒業後は投資ストラテジストとして金融機関に就職します。その後、スペインの大学院でVisual Media Communicationを専攻、以前から興味があったイスラエルのソフトウェア企業に入社します。
現在は、戦略デザイン企業のアドバイザーや「Contemporary Museum of Calligraphy」という美術館の大使を務めています。また、アーティストとしても活動しており、3カ国語で3冊の著作があります。
……という、仏教と縁もゆかりもないような経歴ですが、実は天台宗で得度を受けています。
「なぜ得度を?」とよく聞かれるのですが、それは「一人でも多くの人をクリエイティヴにするため」です。
イスラエルでの、瞑想(仏教)との出会い
就職で渡ったイスラエルでの生活は、戦争やテロと隣り合わせ、常に緊張感がありました。イスラエルでは男女共に兵役があり、友人や家族を戦争やテロで失った人が大勢います。心の平安を得るなど程遠い日々の中で、私も死生観について深く考えるようなったのです。
そして、その時に「瞑想」に出会いました。
実はイスラエルでは、生死について考える機会も多いことから兵役後に貧乏旅行でインドへ行く人が多く、瞑想や仏教は意外にも身近な存在なのです。
瞑想を通して仏教にも関心を持つようになった頃、出会ったのが、天台宗ハワイ別院国際部長を務める苫米地英人さんの『お釈迦様の脳科学』という本でした。聞こえの良いことばかりで核心の説明はフンワリ曖昧……というありがちな内容でなく、ロジカルで明快な説明がされており衝撃を受けました。
留学前にお会いしたお坊さんーー焼き肉屋で高級カルビにがっつき、お酒を飲みながら外車自慢をしていたーーの印象から、仏教に対して良いイメージがありませんでしたが、この本を読んだことで仏教のイメージが一変したのです。
突如の体感、それを共有するための「仏教」
その後も様々な仏教の本を読み、瞑想を続けていたある日、「自分を含め宇宙は固定的な存在でなく絶えず変化している、有るとも無いとも言える存在で、宇宙における存在とは役割・機能である」「自分の役割とは、誰にでも無限の可能性があることを証明しつつ、一人でも多くの人の可能性=創造性を引き出すことだ」と、突如認識したのです。知識として知るのではなく体感としての理解です。
さっそくスペインに戻り、創造性に関連する事業を始めました。当時スペインは景気が悪かったのですが、英語やスペイン語での本の出版、ロシアの美術館の大使就任、大学や国際的なカンファレンスで登壇など、様々なことが実現しました。認識が変わったことで創造性が最大限に引き出されるようになったからだと自負しています。
多くの人の創造性が発揮されないのは、自分に限界を設けたり偏った物の見方を持っているためです。
「多くの人の創造性を引き出したい」、しかしそこに大きな壁がありました。
自分は瞑想を続け認識が変わりましたが、その経験を語るだけでは人々の認識は変わらないのです。自分の実践した内容や経験を説いたところで、自分と同じモチベーションがなければ実践しませんし、方法論がなければ効果的に導くことはできません。
自分が経験した認識の変化を人々にも経験してもらうには、体系的に仏教を学ぶ必要がある、そこでやっと気づいたのです。
天台宗を選んだのは……単純ですが、最初に感銘を受けた本の著者・苫米地英人さんがそこで得度を受けていたから、というのが正直な理由です。
「一人でも多くの人をクリエイティヴにするため」の仏教
仏教は、学べば学ぶほど、現代に通じるクリエイティビティの宝庫だということが分かります。
例えば、観自在菩薩の「観自在」とは、現代風に言えば「超多角的かつ自由自在に視点を変えて物事を見ること」です。また「一念三千」とは「三千もの可能性世界を一瞬に認識する究極のフロー状態」です。
得度を受けた今、私が目指しているのは一般の人々と仏教を繋ぐ架け橋になることです。「創造性の発揮」という観点から、一人でも多くの人に仏教を知ってもらいたいです。
「衆生無辺誓願度」を現代にて実現するならば、アートは大きな可能性を持っていると感じています。
具体的には、お寺でコンテンポラリーアートの国際的な展示を行ないたいと考えています。2020年のオリンピックを前に日本に世界的な注目が集まっている今、国際的なアートの展示を通して若い人の仏教に対する関心を高められるはずです。
現代の快楽の中でまた忙しく生きる人々に、言葉で仏教を説明し関心を持ってもらうのは難しいですが、アートであれば言葉は必要ありません。もちろん伝統的な仏教芸術もありますが、「対機説法」の言葉どおり、その時代にあった伝え方/表現方法がきっとあるはずです。
僧侶でもなく寺院関係者でもない私ですが、「一人でも多くの人をクリエイティヴにする」という目的に向かって、これからも仏教と共にありたいと考えています。
日本のお寺で、仏教とアートの展示を実現させたい、ご興味を持ってくださった方はぜひご連絡ください。そして、それが実現される際には、彼岸寺読者の皆様ともお会い出来ることを楽しみにしています。
長谷川 雅彬(はせがわ まさあき)
立教大学経営学部卒。在学中は総合格闘技のプロの試合にも出場し、卒業後は大和証券キャピタルマーケッツ(現・大和証券)で投資ストラテジストとして勤務。その後、スペインのIE Universityで日本人初のVisual Media Communication修士号を取得。イスラエルのソフトウェア会社でチーフエバンジェリストとして勤務。2014年よりスペインに戻りコンサルや執筆活動を開始し、スペインとアメリカで書籍を出版する。現在はスペイントップの戦略デザインファームErretresでアドバイザー、ロシアのContemporary Museum of Calligraphy大使を務め、大学や国際的なカンファレスでの講演を行うほか、自身の持つ創造性に関するオンラインコースでは120各国に4000人以上の受講者を持つ。
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