超’寺’派? 体験・対話型の寺社フェス「向源」を実際に体験してみた!

体験・対話型の寺社フェス「向源」、すでに彼岸寺の連載等でお馴染みかもしれません。

ある時は「トリエンナーレ」と言われたり。
ある時は「フェスティバル」と呼ばれたり。

一体どんなイベントなのか、皆さんも気になっていたのではないでしょうか?

2011年9月にスタートした「向源」、第三回である今年2013年は「自分の言葉、聞こえていますか?」をメインテーマに、お寺だけでなく生け花や囲碁の世界、そして神社とのコラボ(!)と、盛り沢山の内容。実際、会場で「こんなに体験できるってすごいですよね!」という参加者の方の笑顔を目にいたしました。

場所や時間の都合がつかなかった方、そして盛り沢山のワークショップに悩まれていた方に向けて、彼岸寺スタッフが体験した一部をご紹介いたします!

【向源体験!その1】台湾茶体験・老師と問答(清徳寺)

お寺に入ると木や畳の香りに包まれ、自然と背筋がすっと伸びますよね。さらに本日はこれから「老師と問答」が待っているのですから、背筋も伸びまくるというものです。

そんな参加者たちの緊張を解きほぐすように、台湾茶の世界にいざなってくださる茶人Peruさん。青々とした緑の烏龍茶を、茶葉の香りから順番に、丁寧に味わっていきます。

杯を重ねる毎の変化を感じる台湾茶。お茶の香りに包まれて、だんだんと心が整えられていく感覚があります。

「台湾のお茶は禅と通じるところがあるんですよ」

写真の書は、書家・猛利さんがPeruさんの詩を書いたもの。何事も余白が大事、お茶もそうであり、人もそうである。そんな意味の詩だそうです。

「これから、どんな質問がされるのでしょうね?」 笑顔のPeruさんに送り出されて、本堂へと足を踏み入れます……

本堂で会話を交わしながら、老師の登場を待つ参加者5名。5名のみで問答を体験、なんともリッチなワークショップです。「坐禅に興味があって参加した」方や、「インド旅行で仏教にも興味がわいた」方や、本ワークショップへの参加背景は様々。

少しすると臨済宗・霊樹院政栄宗禅老師が本堂にいらっしゃり、まず禅問答についてお話くださいました。例えば「私に対峙する貴方は何ですか?」といった、一瞬「えっ?」と言葉に詰まってしまうような問い。答えを考え抜くことで悟りに近づく問い。この問いのことを「公案」と呼ぶそうです。

早速、老師から参加者5人に向けて問いかけられた公案がこちらです:

あなたの父母が生まれる前、あなたはどこにいましたか?

皆さんなら、何と答えたでしょうか?

問答を終え、臨済宗の坐禅を教えていただいた後に、なんと老師より「新しい公案」をいただけました! 公案は昔のものだけでなく、老師になると新しい公案も提示できるとのこと。

皆さんとこの公案、考えてみたいです。

大宇宙を笑わせてみてください

【向源体験!その2】神社で仏教プラクティス(品川神社)

少し休憩をして、次の会場・品川神社へ。

そう、次のワークショップは、まさかの「仏教3宗派が神社に揃い踏み」です。

真言宗の阿字観
天台宗の坐禅(止観)
浄土宗の念仏

この3つを教えていただきながら比較体験でき、さらには講師である僧侶の皆さんも宗派を超え一緒に体験し合うという、驚くべき企画! 「私たちもこんな場は初めてですが、やってみないと分りませんから(笑)」と、講師の皆さん。

参加者全員で十分にストレッチをした後、まず最初に石尾山弘法寺(高野山真言宗)の渡邉弘範師の手ほどきの下、阿字観を体験します。

掛軸に書かれた「阿」の字と月の絵を見つめ、その月を自分の胸から地球を超えて広げていく……「月輪観(がちりんかん)」という修行。座り方は坐禅と似ていますが、やはり真言宗、どこか超能力的です。

講師の皆さんそれぞれが自分の宗派の修行を表した書をお持ちくださっており、渡邉師が掲げた書は「なりきる」。

次に、円融寺(天台宗)の阿純章師による坐禅(止観)。先ほどの阿字観とは違い、何かをイメージして座るというよりも何にもとらわれないでただ座る、そんな感覚の修行です。坐禅を終えた後、講師間でも「やはり阿字観と坐禅は違いますね!」と会話が飛び交っていました。

阿師の書は「手放す」でした。

最後に念仏です。龍岸寺(浄土宗)の池口龍法師の木魚と念仏に合わせ、参加者全員で「南無阿弥陀仏」を唱えます。阿弥陀さまについてのお話もあったためか、ただ念仏を唱えているだけなのにありがたさが湧いてくるのが不思議です。

池口師の書かれた書は「おかげさま」。……当初の打ち合わせでは「おまかせする」だったそうです(笑)。

3人の書をベースに修行を振り返り「まず(仏に)なりきり、次に手放し、最後はおかげさまの気持ちで(仏に)おまかせする、本日はこの流れで各宗派の修行を体験したわけですね」。

修行の一端を体験した後は、さらに精進料理(精進弁当)の体験
参加者全員で呪願・五観・正直の偈・誓願の偈を唱え、食事をいただきます。
この精進弁当、上段は福昌寺の飯沼康祐さん、下段は彼岸寺・暗闇ごはんでもお馴染み、緑泉寺青江覚峰さん(KAKUさん)によるもの。「蕗味噌コロッケ」「夏やさい水貝風人参のソース」など季節感あふれる精進料理をいただき、心にも身体にもスッとしたパワーが満ちてくる濃縮の2時間でした。

【向源体験!その3】能・雅楽・巫女舞・天台声明(常行寺)

夕闇に包まれた常行寺。DJブースも設置された客間は光のオブジェでデコレートされ、本堂には神職の姿。

!? 本堂には神職の姿……!? ここまで来たらもう驚かない、と思いながらもやはり驚いてしまいます。

最後の体験、お寺で神仏和合@日本の芸術に触れる公演が始まります。

能楽師・武田宗典氏による能「羽衣」、続いて、神田神社浅草神社有志の皆さんによる雅楽と巫女舞。ベースの役割・鞨鼓(かっこ)に太鼓と鉦鼓(しょうこ)、管楽器の龍笛(りゅうてき)と篳篥(ひちりき)に、息を吹いても吸っても音が鳴るという笙(しょう)、琴(正しくは箏(そう)と言います)の8名に、舞をされる2名の巫女さんを加えた10名編成での公演です。

雅楽の音に乗せた巫女舞「浦安の舞」が終わると、会場からは自然と大きな拍手が上がりました。

そして天台宗仏教青年会・有志の皆さんによる仏教音楽「天台声明」。声明だけでなく、阿弥陀スクワットも!

「先ほどの拍手は内心、少し羨ましかったです……」という僧侶さんの声に、声明が終わった後には珍しく拍手が起こっておりました。(お経は拍手したくなるというより、心が静まるような有り難さが湧きおこるのかもしれませんね!)

会場で出会った方たちと「濃密な1日でしたね!」「色々溢れかけています(笑)」などと語りながら帰途につきましたが、ふと本日を振り返ると「あぁ本当に、自分と向き合った1日だったなぁ」と安らいでいる心に気づきました。

「限定250名」のフェスとは思えない出演講師や運営スタッフの人数、丁寧に用意された各会場の様子。関係者の皆さま、本当におつかれさまです。心地の良い1日、素晴らしい体験をありがとうございました。

“雑音から脱して、
 ゆっくりと自己と向き合った中で
 見つけた大切な目標に
 【向】かう時の【源】となりたい”

そんな願いから始まったという「向源」、また第4回も開催されるとのこと。今年は場所や時間の都合がつかなかった方も、ぜひ来年(2014年)は、実際に体験することをおすすめいたします。遠方で会場に来られない皆さんには、本レポートで少しでも雰囲気を味わっていただけたら幸いです。

Q. あなたにとって彼岸寺とは? A. 仏教てなんだろう寺院、です。 姉弟育児中のシステム屋。仏教に興味を持ち、主に裏方をお手伝いしています。「興味あるけど、仏教てなんだろう」という皆さん、一緒に「なんだろう」しませんか。