“歌う尼さん”やなせなな 初の脚本作品 短編映画『祭りのあと』の挑戦

喪失の悲しみの先に広がる“光”を描きたい

奈良県在住のシンガーソングライター・やなせななは、1975年浄土真宗本願寺派の教恩寺に生まれました。2010年には第六世住職に就任しています。
教恩寺は小規模だったことから、歴代の住職は他の仕事と兼業して寺を守って来ました。そのため、やなせがシンガーソングライターと僧侶の二足のわらじを履く生活を送るようになったのは、ごく自然な選択でした。

唄うことが大好きだったやなせは、宗門大学を卒業後プロのシンガーソングライターを目指し、アルバイトの傍ら、レコード会社・音楽出版社・音楽事務所…合計100社にデモテープを送り、オーディションを受けました。しかし残念ながら、結果は全て落選。

それでも諦めなかったのは、姉を拒食症という病で亡くした友人の存在があったからでした。
深い悲しみに暮れる友人に対し、自分の無力さを痛感したやなせは、どれほど固く閉ざされた心の奥にも、歌ならば触れることができるかもしれない、と考えつきました。そして、誰かの深い悲しみ―中でも特に死によって近しい人を失う苦しみ―に寄り添うことができるような歌を作り、唄うことを生涯の仕事にすることを決意したのです。

その後、4年半という決して短くはない浪人生活を経て、2004年5月シングル『帰ろう。』で念願の全国デビューを果たしました。

しかし、その喜びも長くは続かず、わずか2年で所属事務所は倒産。
さらに同年、29歳という若さで子宮体がんを発症します。子宮と卵巣を全て摘出する手術を受け、一命は取り留めたものの、女性としての機能を全て失い、絶望に暮れる日々。

それでも、自身の逆境を全て創作への力に変え、更なる曲作りを続けました。
それは、阪神淡路大震災やJR福知山線列車事故、認知症、ガン闘病や自死といった、絶望的な出来事を題材として扱いながらも、その先に広がる救いをテーマにした作品。発表当初は「暗い」「難しい」となかなか理解を得られなかったものの、インディーズでの地道な活動は、数年をかけていつしか注目されるようになっていきます。

「その声を聞くだけで自然と涙が溢れ出す」と評された歌声は、やがて全国47都道府県およそ500ヶ所でのコンサートを成功させるまでに広がりました。歌声だけでなく、涙あり笑いありの巧みなトーク、ざっくばらんな関西弁も好評を博し、宗派の枠組みを越えたお寺コンサート“歌う尼さん”は、老若男女幅広い層から確かな支持を獲得しています。

そんなやなせななの新たな活動として、歌の世界を本人自らが脚本化。
故郷である奈良県高取町を舞台に、短編映画の制作を行うことを決定しました。

歌の世界を映画に

2007年リリースのセカンドアルバム『遠い約束』に収録された「祭りのあと」
この楽曲を元に、やなせなながショートドラマの台本を書いたのは2009年のことでした。
当時は映像化するチャンスに恵まれず、台本は長らく眠っていたのですが、様々な出会いに恵まれ、8年越しの夢であった映画の撮影が7月半ばに敢行されました。

全編オリジナル曲で彩るのは、妻を亡くした老年男性がその悲しみと向き合い、前を向いて生きるまでを描く物語。

主演は、以前からやなせと交流のあったベテランシンガーソングライター・大塚まさじ氏(代表作「プカプカ」「男らしいってわかるかい」他多数、谷口正晃監督の映画『父のこころ』主演)
監督は、同じくやなせと親交があった、故・つかこうへい氏に師事した舞台演出家・渡辺和徳氏(9PROJCT)。今作が映像初挑戦となりました。

また、日ごろから地道な音楽活動を応援していた檀家を始め、集落の人々の熱い協力を得て、ロケは全編に渡って奈良県高取町の兵庫集落で行われました。

中でも物語の重要なシーンを担うのは、神社です。
真宗僧侶であると同時に、農村で生まれ育ったやなせにとっては、田畑の豊作を見守る地元の「かみさま」は身近な存在でした。おてんとうさまに手を合わせ、山の神、田の神、川の神に感謝を捧げる、そんな土着の信仰を大切にする村の空気の中、大いなるものへの畏敬の念を育んだやなせは、それら全てを丸ごと描きたいと考えたのでした。

あらすじ

春雄(大塚まさじ)は定年退職して久しい独り暮らしの高齢者。1年前に妻・恵子(広瀬美砂)を病気で亡くして以来、周囲の心配をよそに、無気力な日々を送っていた。
そんな春雄の前に、突然メグミ(島田和香子)と名乗る女学生が現れる。見ず知らずの不思議な少女に、恵子亡き後の怠惰な暮らしぶりを叱られ、諭される春雄。突然の出会いに戸惑い、最初は反感を持つものの、少女の無邪気さや優しさに触れ、閉ざされていた心が少しずつ明るさを取り戻していく。

日を追うごとに春雄と打ち解けたメグミは、ある日「神楽をいっしょに見たい」と言い出した。神楽舞、それは亡き妻・恵子が病床で「死ぬ前にもう一度だけ見たい」と切望しながらも叶わなかった、地元の夏祭りで演じられるものだった。メグミのことばに隠された“真実”とは…

たとえ二度と会えなくても、あなたはそばにいてくれる―
愛する者の死の悲しみ。その先にある、いのちのぬくもりを描く感動の短編。

クラウドファンディングにチャレンジ

この映画を制作するに当たり、朝日新聞社のクラウドファンディング「A-port」にエントリーしています。

クラウドファンディングとは?
「こんなモノやサービスを作りたい」「世の中の問題を、こんなふうに解決したい」といったアイデアやプロジェクトを持つ起案者が、専用のインターネットサイトを通じて、世の中に呼びかけ共感した人から広く資金を集める方法です。

いのちの輝きと、ふるさとのぬくもりを伝えたい―
そんなメッセージを込めた映画制作は、やなせななの完全な自主制作です。そのため、皆さまからのあたたかいお力添えをいただければ幸いです。

下記リンクから、是非ページをご覧くださいませ!
応援何卒よろしくお願いいたします!

朝日新聞社クラウドファンディング A-port
http://a-port.asahi.com/projects/matsurinoato


●スタッフ、キャスト
企画・運営 Studio Tabby(代表:梁瀬奈々)
脚本・音楽 やなせなな
監督・演出 渡辺和徳
編集 遠藤直樹
撮影監督 中西順己
撮影 前地星人
照明 朴昌根
音声 本松健一
製作 眞井優花
MA 伊藤哲郎
ヘアメイク カストロ・デニース、阪田充章
スチール 田村広司、川本木綿子
協力 9PROJECT
後援 高取町、高取町教育委員会
出演 大塚まさじ、島田和香子、広瀬美砂、小川智之、高野愛 他

やなせななオフィシャルサイト http://www.yanasenana.net/
短編映画『祭りのあと』http://matsurinoato.net/


●やなせなな
奈良県在住のシンガーソングライター。 2004年シングル『帰ろう。』で全国デビュー。以後5枚のシングルと5枚のアルバムを発表し、CMソングやゲームのテーマソング、劇中歌などに起用される。
その一方でエッセイの連載や本の出版、ラジオのレギュラーDJ、仏教講座講師など多彩な活動を展開。 30歳で子宮体ガンを克服した経験と、寺院で生まれ育った僧侶という視点を生かし、いのちの尊さを描く楽曲を制作。
慈しみに満ちた唯一無二の世界観、美しいメロディ、包容力のある歌声、涙あり笑いありの巧みなトークが持ち味で、幅広い層から確かな支持を獲得。全国47都道府県500か所での公演を成功させた実力派。

彼岸寺は、仏教とあなたのご縁を結ぶ、インターネット上のお寺です。 誰もが、一人ひとりの仏教をのびのびと語り、共有できる、そんなお寺です。