皆さま、本年も彼岸寺をどうぞよろしくお願いいたします。
そしてこの度の能登半島地震に際しまして、お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表すと共に、被災された皆さまに心よりお見舞い申しあげます。彼岸寺一同、これ以上の被害のないこと、そして一日も早い復興を念じております。
さて、毎年恒例となっております干支にちなんだ「仏コラム」、今年は「辰年」ということで「龍」ということになります。私たちが日頃イメージする「龍」といえば、例えば「ドラゴンボール」に出てくる「神龍(シェンロン)」のような姿をしたものを想像するかと思います。しかしこの龍の姿は中国にルーツがあるものとされ、実は仏教とは本来的には繋がるものではありません。
しかし、仏典には「龍(竜)」という言葉も出てきます。例えば『法華経』には8人の龍王(八大龍王)がブッダの教えを聞いて帰依し、それ以来仏法を護る「八部衆」の一角を担う種族となったとされています。
浄土真宗でも親鸞聖人の書かれた「和讃」と呼ばれる詩の中には、こんな一節があります。
南無阿弥陀仏をとなふれば 難陀(なんだ)、跋難(ばつなん)、大竜(だいりゅう)等
無量の竜神尊敬し よるひるつねにまもるなり
難陀や跋難、大竜というのは八大龍王のことです。「南無阿弥陀仏」と念仏する者は、八大龍王をはじめとして様々な龍王に敬われ、守護される、「南無阿弥陀仏」の名号にはそういう功徳を得ることができるものであると讃えています。
ただ、ここに出てくるインドにおける龍、あるいは龍王というのは「ナーガ」、あるいは「ナーガラージャ」のことであり、どちらかと言えば蛇、特にコブラのような姿をした蛇を神格化されたものと言われています。
ナーガラージャとして有名なのは、「ムチリンダ」でしょうか。ブッダが菩提樹の下でまさに悟りをひらく最後の瞑想に入った時、ブッダを見守り、嵐起こるとその体に巻き付いて風雨から守ったと言われるナーガラージャです。マンガ「聖☆おにいさん」にもブッダを雨から守るキャラとして登場しています。
そんな蛇のような姿をしたナーガを、中国では「龍」と翻訳し、中国に元々あった龍の姿と融合し、日本にも伝わってきました。日本のお寺にも龍の絵が描かれたり、仏具のモチーフとして使われるなど、龍が仏法の護神として尊ばれているのは、そのような縁があってのことでしょう。
そしてもう一つ、「龍」の名を関した仏教における偉大な人物を忘れてはなりませんね。そう、龍樹(ナーガールジュナ)です。仏教の中観派と呼ばれるグループの祖と言われ、空の思想を大成させた人物であり、また『大智度論』や『十住毘婆沙論』という後世の仏教に大きく影響を与えた著者としても知られます。
辰年のこの一年、「龍」にあやかって、龍樹を手がかりに仏教を学んでみるというのも良いかもしれませんね。