彼岸寺さん、20周年おめでとうございます!「彼岸寺」に初めて寄稿させていただいたのはヨーロッパに関する内容だったと思います。私は2011年から2017年までドイツのデュッセルドルフにあるドイツ惠光寺に勤めており、そこで経験した内容を何度か彼岸寺に書かせて頂きました。
個人的に最も印象に残っている記事は「花まつりの起源はドイツだった!?」というものです。この記事が従来の「花まつり」の語源の説を揺るがすことになり、現在ウィキペディアの「花まつり」の項目にはこの彼岸寺の文章が引用されています。もしよろしかったらご覧ください。
2017年に私はドイツから日本に戻り、2018年に(公財)仏教伝道協会で「輝け!お寺の掲示板大賞」という企画を立ち上げました。現在、掲示板大賞に「彼岸寺賞」を設置して頂いていることもあって、毎年彼岸寺さんに掲示板大賞に関する記事を寄稿させていただいています。
この「お寺の掲示板大賞」が与えた強烈なインパクトによって、世間的にはすっかり「お寺の掲示板」の人となってしまいましたが、私は現在出版事業部に所属していて、職場では本の制作編集の作業をメインに行っています。
築地本願寺の中にある研究所に2011年まで勤めていた時も『親鸞の歩き方』(ダイヤモンド社×仏教総合研究所)、『親鸞とは何か』(講談社)という書籍の制作編集に深く携わっていました。その際、様々な出版社の編集者さんたちと仕事をしながら、編集作業の奥深さを学び、2017年に(公財)仏教伝道協会に移ってからも協会が毎年刊行している法話集や子ども向けの『日めくりブッダせいかつ』など、様々な書籍の制作編集を行っています。
最近は書き手として連載や本を執筆する機会が増えていますが、正直なところ自分では自分のことを「書き手」と思ったことは全くなく、常に「編集者」だと思っています。自分で書くよりも他人の文章に手を入れつつ、作品をプロデュースする作業の方が個人的にはずっと楽しいですし、性に合っているからです。
そのような私が現在編集者として一番重点を置いている仕事は何かというと、『仏教聖典』の改訂作業です。『仏教聖典』という書籍を皆さんはご存じでしょうか?ホテルの部屋の引き出しにたまたま入っていて、そこで『仏教聖典』を見かけたという人もいらっしゃるかもしれません。仏教伝道協会が刊行している『仏教聖典』は現在46か国語に翻訳され、累計発行部数は996万部。これほどの発行部数を誇る書籍は他にほとんどないでしょう。
実は「お寺の掲示板大賞」が始まった2018年以前から私は聖典の改訂作業に関わっているのですが、作業は難航を極め、いまだに改訂作業が続いています。作業に協力していただいている先生方はみな仏教研究の錚々たる方々。
「もともとのオリジナル版を大切にしながらできるかぎり原典の表現に近づけつつ、現代の人たちにも読みやすくする」という超絶困難なミッションを達成するべく、現在も作業が着々と進められています。
私自身正直なところ、『仏教聖典』という書籍を仏教伝道協会に入るまでしっかり読んだことがありませんでした。自分が担当となったため、これまでに何度も何度も読み返しましたが、様々な経典のエッセンスを非常にうまく盛り込んで作られています。
現在の『仏教聖典』は、1925年に木津無庵師(真宗大谷派僧侶)が作った『新訳仏教聖典』の簡略版である『国民版仏教聖典』(1932年刊行)がベースとなっています。その中身は『浄土三部経』・『法華経』・『華厳経』・『大般涅槃経』などのメジャーな大乗経典からあまり知られていない大乗経典、またはパーリ語経典まで実に膨大な経典のエピソードによって中身が形成されています。
仏教学の先生方と大正蔵などの原典を厳密にチェックする作業は、個人的には大学院以来のことで、それは非常に充実した、素晴らしい学びの場になっています。日本を代表する仏教学者の先生方と一緒に多くの経典を読むのは、何にも代えがたい有難い時間です。(実はここで学んだことがダイヤモンド・オンラインのお寺の掲示板の連載にも役立っていました)
というわけで、今年度中に『仏教聖典』改訂版を刊行するべく、現在も作業を進めています。改訂版が刊行された暁には、ぜひ手にとって読んでいただければ幸いです。何卒よろしくお願い致します。
親鸞とは何か
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みちしるべ法話集
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日めくりブッダせいかつ
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