4年で4倍!?今年も各賞が決定した「輝け!お寺の掲示板大賞2021」を振り返り!

「輝け!お寺の掲示板大賞2021」の受賞作品が12月6日に発表されました。第4回目となる今回の掲示板大賞に投稿された作品数は2887点。第1回目(2018年)が700作品、第2回目(2019年)が925作品、第3回目(2020年)が1677作品でしたので、投稿数が4年で4倍に増加したことになります。今回も投稿作品の審査が大変難航しましたが、今年の大賞は広島県の真宗大谷派超覚寺の作品「仏の顔は何度でも」が選ばれました。

仏の顔は何度ある?

この「仏の顔も三度まで」ということわざの根拠にはさまざまな説があり、正確なことがよく分かっていません。一説には、釈迦族がコーサラ国によって滅ぼされたときのエピソードに由来しているといわれています。コーサラ国王のヴィドゥーダバは釈迦族による無礼に憤慨し、釈迦族が住むカピラ城に3度攻め込みましたが、そのたびにお釈迦さまの説得を受けて兵を引き揚げていました。

ところが4度目に攻め込まれたとき、お釈迦さまは宿縁を悟り、相手を説得しませんでした。その結果、コーサラ国の軍隊はカピラ城の中で残虐の限りを尽くし、釈迦族は殲滅されてしまいます。このとき、お釈迦さまは「7日後にヴィドゥーダバとその軍隊は死ぬだろう」と予言し、その予言通り増水した川に彼らは流され、死亡したそうです。

ここで一つ強調しておきたいことは、このエピソードの中で、宿縁を悟ったお釈迦さまは怒っていませんし、ヴィドゥーダバに復讐したわけでもありません。それにもかかわらず、「4回目で怒った」と解釈されては、お釈迦さまとしてはおそらく非常に不本意なことでしょう。

お釈迦さま以外にも数多くの仏様がいらっしゃいますが、3回や4回の無礼で腹を立ててしまうような心の狭い方々ではありません。例えば、阿弥陀仏はどんなことがあっても決して見捨てない(摂取不捨)の仏様だと言われています。というわけで、「仏の顔も三度まで」より、「仏の顔は何度でも」というほうが仏様の表現としては正確であることを知ってもらいたいということで今回この作品が大賞に選ばれました。

逃げてもいい

この大賞以外で個人的に印象に残った作品を一つ紹介させていただきます。それは、仏教伝道協会賞を受賞した広島県の浄土宗妙慶院清岸寺の作品「置かれた場所で 咲けない時は 逃げてもいいよ 咲けるところへ」です。

『置かれた場所で咲きなさい』という本が以前ベストセラーになりましたが、置かれた場所で結果が出ないことも当然あり、そのことに悩んでいる方々も現在大勢いるのではないかと思います。この言葉を私が連載をしているダイヤモンド・オンラインで紹介したところ、100回近い連載の中で過去最大のページビューがありました。

コロナの影響で自殺者が増加しているというニュースを聞き、この掲示板を通して「逃げることは恥ではない」、「自死を選ばずに生き続けてほしい」ということを訴えたのですが、まさかここまで大きな反響があるとは思っていませんでした。この言葉が多くの人の心に刺さるということは、それだけ追い詰められている人が多いということでしょう。現在の社会が非常に閉塞した状況にあることを強く実感させられました。


※その他の受賞作品につきましては、こちらからご覧いただけます!

https://www.bdk.or.jp/kagayake2021/publication.html


おかげさまで今回の「輝け!お寺の掲示板大賞2021」も大変多くの寺院関係者や撮影者の方々、協賛のみなさまのご協力により無事終了いたしました。2020年の新型コロナウイルスの発生以後、世間の空気はそれ以前と非常に大きく変わりました。そのような状況の中、「お寺の掲示板大賞」が継続できていることは本当に有難いことです。ご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。

来年も7月1日から「輝け!お寺の掲示板大賞2022」を開催する予定ですので、よろしくお願いいたします!

浄土真宗本願寺派僧侶。1976年生まれ、福岡県出身。早稲田大学社会科学部・第一文学部東洋哲学専修卒業。早稲田大学文学研究科東洋哲学専攻修士課程中退。 築地本願寺内の(一社)仏教総合研究所事務局に勤務の後、2011年~2017年までドイツ・デュッセルドルフのドイツ惠光寺において、ヨーロッパ開教や日本文化を発信する事業に携わる。2017年より(公財)仏教伝道協会に勤務。 2018年に「輝け!お寺の掲示板大賞」を企画し、話題を集める。著書に『お寺の掲示板』(新潮社)。連載に「「お寺の掲示板」の深~いお言葉」(ダイヤモンド社「ダイヤモンド・オンライン」)などがある。