はじめに〜お掃除をするうちにお寺は「私がここにいていい場所」になった

はじめまして。

東京の神谷町にある浄土真宗のお寺・光明寺で、平日の早朝、月に2回ほど僧侶の松本紹圭さんが開催する「Temple Morning(テンプル・モーニング)」に参加しています。

「一般人」のユミです。

Temple Morningってなに? なにをしているの? なにが起こっているの? そんなことをこれからゆるりとお伝えできたらいいなと思っています。よろしくお願いいたします。

「ユミさんが唯一の皆勤賞ですね。」——去年、2017年10月5日の朝7時半から始まったこのTemple Morningという「お寺の朝掃除の会」で、松本さんにこう声をかけられたのは、お掃除のあと、オランダ大使館の森越しに東京タワーを見上げ、テラスに流れ込む晩秋の空気を楽しみながら茶話ができたぎりぎりの時、5回目の11月16日だったと思うのです。

そして季節が四つ巡り、皆勤賞は29回を数えるまでになりました。

へえ、えらいね。朝活?いいね。一度やってみたい。「朝、お寺で掃除をしてる」そう聞くと、友人たちは一瞬きらりと目を見開きます。(そのあとにたいてい「早い。起きられない」となるのですが)

「皆勤賞なのです」そう告げると、お坊さんたちは一様にたたみかけるのです。なぜですか?きっかけは?

仏教どころか、洋の東西を問わず伝統があろうと新興だろうと、そこから一歩引いていることが健全だ。「宗教」に対してずっとそう思ってきました。たぶんそれは今も変わりません。それなら「なぜ」お寺の掃除に早朝から参加し続けているのか。実はその問いかけにうまく応えることができずにいます。

月に2回。朝4時に起きて身支度をし、7時にコンビニの熱いコーヒーカップを持て余しつつお寺の階段を昇り、テラスで東京タワーに見下ろされながら街が動き出す音を聴き、意味を知らないままお坊さんと歌うようなお経を読み、お掃除をして、お話を聞いて、ともすると名前もはっきり知らない人たちと、ゆるりと会話を交わして、お寺を後にする。

そんな「箒を持った自分の姿」を、私はいまだに俯瞰できないのです。

それでも思いつく限りの言葉で、お坊さんたちの問いかけに答えを紡ぎ出すものの、膝は打ってもらえないまま、暖簾に腕押しを繰り返している気分だったある日——。うん、やっぱりこれからは「掃除」だな。松本さんの口から確信に満ちたつぶやきが出たのです。

そして2018年9月10日、27回目の「Temple Morning」開催告知ツイートに、松本さんはこう付け加えました。

「Temple Morningを全国のお寺に広げるキックオフMTG」を開いてみます。光明寺で皆勤賞のユミさんや、山梨のお寺で頑張る横山瑞法さん(日蓮宗)と一緒に、皆であれこれアイディア出ししましょう。一度でもMorning掃除したことある人は、誰でもどうぞ!

そうだ。「なぜ」じゃなくて「どうしたいか」それを考えればいい。今の自分を俯瞰できないなら、ちょっと先の未来から自分を振り返ってみよう。そう心がきまった瞬間でした。


——仏教にもお寺にも縁はないけれど、お寺のお掃除をしているうちに「ここは私がいてもいい場所なんだ」と思えるようになりました。日本中のお寺で掃除をさせてもらえたら、日本中に「私がここにいていい場所」ができる。それを増やしたいのです。

そして松本さんが提案する「お寺の二階をつなぐ空中回廊」の一つとして、一般人が自由にお寺の掃除をして周ってたら全国のお寺がつながっちゃった、そんな、獣道を踏み分けるようなことになったらいいと思うのです——

キックオフミーティング当日、光明寺の別館で15人分ほどがフサフサからツルツルまでの頭を寄せ集め、Temple Morningを全国のお寺に広げていく「実験」として、お坊さんは?企業は?一般人は?なにをどうする?と意見を出し合う中、私はそう発言しました。

そこで割り当てられたのが「お寺や、お掃除することで自分に起こるかもしれないなにかについて、ちょっと興味のある一般の人、そして自分のお寺でもやってみようかなと興味をもっているお坊さんたち」に向けてレポートすることだったのです。

「神谷町の光明寺の、そして他のお寺での、Temple Morningの今までと、これからの1年間を。参加したきっかけや仲間の方たちのことを。日誌と合わせて毎回、彼岸寺でご報告させていただきます。よろしくお願いいたします!」

——と、手を挙げてはみたものの、腕は暖簾を押し続けています。

「思ったことをそのまま、自由に書けばいいんですよ」

でも今までなに一つ、わかってもらえた気がしないのです。往生際悪く食い下がると、

「なにをどのタイミングでどう受け取るかは、相手次第だから。大丈夫です」

松本さんは、口の片端をちいさく上げて笑うのでした。

ユミ 山本

自宅兼事務所から東京・神谷町の光明寺まで徒歩1時間30分な、グラフィック・デザイナーです。仏教どころか宗教に関してまったくの「一般人」が、お寺で朝の掃除をする会――Temple Morningのアンバサダー(?)として、ゆるりとレポートします。