【祝☆書籍化!本をチラ見せ】信じられない私(1/5)

ご無沙汰しています、英月です。

しばらく連載をお休みしているあいだに…。なんと、「お経さん、ごちそうさま!」が名前も新たに本になって登場です。
内容は、ズバリ!『正信偈』。『正信偈』の解説本と言ってしまうのは、ちょっぴり恐れ多い思いがしますが、親鸞さんが私たちにのこしてくれた大事なギフト。「スーパー・お守り」であり、「オールマイティ・お薬」である『正信偈』が、私とどう関わったのか?私にどうはたらいたのか?そして、それによって、私はどうなったのか。それを10年近いアメリカ生活の話と共に、渾身の書き下ろし!エッセイとしても、楽しんで頂ける内容となっています。
「お経さん、ごちそうさま!」改め、『あなたがあなたのままで輝くための ほんの少しの心がけ』は、現在、全国の書店で絶賛!発売中です。そこで初の単著を記念して、本書から一部抜粋&本が出来るまでの裏側を特別連載。簡単に言うと、映画でよくあるメイキングです。これを知って本を読むと、より一層おもしろくなります。と、思います。
と、いうことで。

第1回目は、「信じられない私」
それは今年1月のことでした。

大行寺で行われた「写経の会」に、一人の男性が参加されました。

ちょっとオシャレな方、という印象の他には、特に印象もなく。ふつーに、会に参加しておられました。
ここで言う、ふつーにとは、写経の前の法話を聞いて、写経をして、その後のお茶会に参加されて、という意味です。特に質問をされるわけでもなく、お配りした資料を読んで、淡々と写経をされる。時折、資料を真剣な眼差しで読んでくださっていましたが、それは他の方も同じこと。お茶の席でも特に饒舌なわけでもありませんでした。その方が、会も終わりに近づいたころ、唐突にこう仰ったのです。
「英月さん、本を出しませんか?」
あまりのことに、ハトが豆鉄砲を食ったようになっている私を尻目に、他の参加者の方たちが勝手に盛り上がってしまい、気付いたら、名刺の交換をしていました。

そうして頂いた名刺には、日経BP社さんの文字。

出版業界に疎い私でも知ってます!「日経ビジネス」「日経トレンディ」そして、「日経ウーマン」。買ったことあります。読んでます!

その日経BP社さんからの出版のお話し。私は瞬時に状況を理解した。
騙されている。
そもそも私を騙して何のトクがあるのかは、分からない。が、冷静に考えておかしい。こんな凄い話しが、私に来るはずがない。

半信半疑ならぬ疑惑しかない私の思考を笑顔で隠して、私は、そのちょっとオシャレな方を見送った。

なぜなら、自分のことのように喜んでくださっている、他の参加者の方たちの気持ちに、敬意を払いたかったから。
その後、みんなが帰ったあとで、失礼にも頂いた名刺を凝視した。透かし模様が入っているわけでもないのに、必要以上に表裏をひっくり返した。そして、私はある結論に達した。
これ、自分で作ったな。
失礼千万である。が、信じろという方が無理がある。経典に詳しい大学の先生でもない、ましてや有名人でもない私に、なぜ?

なぜ?と、戸惑いながらも、その後、何度かメールで連絡を取り合い、京都の大行寺にも打ち合わせに来られた。その経緯はしごくふつーの流れで、なんら疑いの余地はない。本の内容、締切等を決めていく。が、大事なものが一つ欠けていた。契約書である。
アメリカ生活が長かった私は、契約書ありき、の考え方になっていた。それがアタリマエだと思っていた。仕事の大小に関わらず、かならず契約書をつくる。そしてそれを確認し、サインをして、初めて仕事に取り掛かれる。

その契約書がないのである。が、私に聞く勇気はない。実は、ヘンなところで小心者なのだ。
しかし、口約束、メモ書き程度の書面。それだけで、本1冊分の原稿を書く気力、体力はでてこない。動機にはならない。信じられない私は、口約束だけして、書こうとはしなかった。

と、信じられない私だったのですが、『正信偈』にも「信」という漢字は何度も出てきます。では、その「信」は、私にどう関わり、私にどうはたらいたのか?

そして、みなさんにも、どう関わっていくのか?
本文から言葉を抜粋すると、
私たちは「物事や人を信じているのではなく、自分の都合を信じている」んですね。
友人や仕事関係の人でも、自分にとって都合のよい人といえば冷たい響きがしますが、一緒にいることが快いときは信じられる人、一緒にいて不快になり、自分の都合に合わなくなると信じられない人になる。
ね、物事や人でなく、自分の都合を信じているんですね。これは、ありとあらゆることに、当てはまるのではないでしょうか?
これね、自分の都合を信じているのがダメですよ、と言っているのではないんですね。もちろん、褒められたことではないですが。

自分の都合しか信じられない自分なんだ、って気付くことが大事なんです。

気付くと、行動が変わります。行動が変わると、今が変わります。いただいた、いのちが、変わります。そうです。あなたが、あなたのままで、輝くのです。
今回はここまで。次回に続きますので、乞うご期待!

 

撮影:松村隆史

英月

真宗佛光寺派大行寺住職。 銀行員生活を経て2001年に渡米。ラジオパーソナリティを務める他、TVCM、ラジオCMなどに出演。また「サンフランシスコ写経の会」を主催する。 2010年、実家の寺の跡継ぎとなるため帰国。大行寺で始めた「写経の会」「法話会」には、全国から多くの参拝者が集まる。 講演会や寺院向け講習会の講師を務めるほか、テレビで芸能人の悩みに答えるなど、その活動は多岐にわたる。 『毎日新聞』で「英月の極楽シネマ」連載中。 著書『あなたがあなたのままで輝くための ほんの少しの心がけ』(日経BP社) 共著『小さな心から抜け出す お坊さんの1日1分説法』(永岡書店)