お盆のお坊さん、言うほど忙しくない説(後編)

前編ではお盆のお坊さんの一例として、善福寺のスケジュールをご紹介しました。

ひと言でいうと「忙しい」です(と思っています)。7月は墓掃除などの準備、8月は墓参り・棚経参り・盂蘭盆施餓鬼会と休みなく続きます。いや~ほんと体力勝負。年々暑くなっているので尚更です。

やっぱりお坊さんは忙しい?

それでは、他のお坊さんはどうでしょうか。お坊さんそれぞれにお盆の色々な予定があり、忙しくされている様子を見聞きしますが、どうやら2週間みっちり予定が詰まっていて休みなし、というお坊さんが多いわけではなさそう。「休みがあるから忙しくない」と結論するのは乱暴すぎますが、皆さんが言うほどいっぱいいっぱいの忙しさではない気がします。私の場合も、午後は比較的ゆったりできる日もあります。

誰しも自分のことは客観視できないせいか、忙しいと思いがちですが、その原因は何でしょうか。個人的に考える点をいくつか挙げてみます。

随喜(ずいき)に忙しい?

お盆の法要は住職ひとりで勤めるのではなく、近隣や有縁のお寺さまと、数人で勤めるお寺が多いと思います。自坊に出座いただいたお寺へは、お互いさまでこちらも出座します。

このことを「随喜」と呼びます。「他人のなす善を見て、これに従い、喜びの心を生じること。ありがたく思い、大いに喜ぶこと」、つまり、喜んで法要に出座し一緒にご供養するということです。

他のお寺に出座する場合、法要時間に合わせて早めに出向き、1~2時間の法要を勤め、お茶を飲んで(食事が出る場合も)休憩し、自坊に戻ります。

時間が多くかかり、随喜するだけで大変な仕事をした気になってしまいます。確かに法要は体力が要るのですが、前後は控え室で充分に休憩できます。お茶を頂きながらの談笑、それで仕事をした気になって、一日頑張ったような錯覚をしているお坊さんが多いのではないでしょうか。

タバコ吸うのが忙しい?

世の中の喫煙率が減少しているにも関わらず、お坊さんの喫煙率はまだ高止まりしている印象があります。随喜の控え室は、お香ではなくタバコで着物を勲じているかのよう。副流煙も何のその、人がいる場所での喫煙にも抵抗感がありません。世間では分煙スペース以外での喫煙自粛がマナーですが、お互いを注意することがあまりないお寺業界では、控え室内でも大いに煙が漂っています。

結果、控え室ではタバコを吸うのに忙しく、「アイコスいいよ」などの会話がなされ、有意義な意見交換の場になっていないのも残念です。

宅配便ドライバーの方が忙しい?

時間指定配送の限界や再配達の増加など、過重労働で最近よく問題視される宅配便ドライバー。もちろんその労働環境は改善されるべきですし単純に比較はできませんが、朝から晩まで一日何十軒も配達しているドライバーさんに比べ、お坊さんの棚経参りの軒数はまだ少ないのではないでしょうか。

宅配便以上に広いエリアや軒数を参る日もあるかもしれませんが、それもわずか数日のこと。日常的に何十軒と配達するドライバーさんの過酷さには及ばないのでは。そう考えると、数日間の棚経参りも必要以上に大変と思うことはないでしょう。

そもそも2週間だけ

確かに色々な予定のあるお盆ですが、それでも期間や忙しさのピークは数日間。どんなに大変でもこの期間さえ乗り切れば、ひと段落して肉体的にも精神的にも楽になります。

当たり前のように連日遅くまで勤務するサラリーマンと比べれば、先が見えていて随分と楽観できるとも言えます。会社の大きなプロジェクトなら半年や一年に及んだりしますよね。それに対して、お盆はせいぜい2週間、長くても一カ月です。

「暑い=忙しい」という錯覚?

実は、お盆が忙しいという思い込みは、暑さの影響が大きいのではないでしょうか。猛暑の中、汗を流してバタバタ動いていると忙しいような気になっているのかも。

もし仮に涼しい時期にお盆をすれば、お墓参りも棚経参りも法要もかなり体力の消耗が少なく、「実際は言うほど忙しくない」ことに気がつくかもしれません。

また檀家さんも、「お盆はお忙しいですよね〜」と何度も言ってくれるので、お坊さんもそれに甘えて忙しい気になっているのではないでしょうか。忙しいと思い込んで他に何もできないとしたら、もったいないことです。

まとめ

以上とりとめもなく書きましたが、個人的な結論は「お盆のお坊さん、忙しいと思い込んでいるだけ」ということです。

とにかく暑さにまいってしまうお盆ですが、忙しくても何もできない・考えられないという思い込みから離れ、お坊さんが自身がもっと有意義に過ごすことができれば、より良いお盆になっていくかもしれません。忙しい忙しいと毎年同じ繰り返しで終わってしまうのではなく、お坊さんと檀家さんが一緒になってより良いご供養を考え、ご先祖さまに思いを寄せる期間、そんなお盆になることを願っています。

結局、忙しいかどうかは主観の問題ですよね(元も子もない話ですが)。「暑い」と言うから暑い、とも言いますが、口癖のように「忙しい」と言わないよう、自戒を込めての文章でした。

それでは全国のお坊さん、一緒にお盆を頑張りましょう! 合掌

桂浄薫

1977年、奈良県天理市・善福寺の次男として誕生。ソニーを退職後、2007年に僧侶となる。2015年、善福寺第33世に晋山し、和文のお経をオススメ。2014年から、おてらおやつクラブ事務局長を務め、お寺の社会福祉活動にコミット。1男2女1猫の子育てに励む。趣味はランニングと奈良マラソン。音痴と滑舌が課題。