お盆のお坊さん、言うほど忙しくない説(前編)

今年もお盆が近づいてきました。準備に忙しくしながら、ふと感じたことを書いてみたくなりました。お盆のお坊さんの様子もお伝えできればと思いますので、ご一読いただければ幸いです。

申し遅れました、私は奈良県天理市の善福寺住職・桂浄薫です。しばらく前まで彼岸寺メンバーでしたが、リニューアルしてから初入山なので少し緊張しております。

盆と正月が一緒に来たような忙しさ

夏といえばお盆(休み)。お盆は日本仏教最大の行事です。信仰が希薄になったといわれる現代においても、お盆には帰省してお墓参りする方は多くいらっしゃいます。正月・GWと並んでサラリーマンが堂々と休める貴重な連休、真夏の暑さにも負けず帰省ラッシュにも負けずお墓参りされるのですから、日本人のご先祖さまを大切にする気持ちもなかなかのものです。

「盆と正月が一緒に来たよう」の意味は「うれしいことが重なること、また非常に忙しいことのたとえ」だそうで、お盆が忙しいと認知されていることが分かります。

一般の皆さんが忙しいのはもちろん、お坊さんのお盆は非常に忙しいと思われているのではないでしょうか。汗をかきながらお墓をまわるお坊さん、スクーターに乗って東奔西走するお坊さん、そんなイメージがあると思います。

でも、「お盆のお坊さんって、そんな忙しいのかな?」 お坊さんである私の脳裏に、そんなギモンが湧いてきました……

お盆の風習は千差万別

お盆の風習や勤め方は地域や宗派によってかなり異なります。

例えば、関西では8月のお盆が一般的ですが、旧暦と新暦の扱いが違うため、関東などでは7月にお盆を行います。ということは、関東はもうお盆が終わったのですね……なんと羨ましい! 話にはよく聞きますが、7月にお盆なんて未だに想像できません。

お寺によってもさまざまで、私も自分の地域や宗派以外のことは皆目見当がつかないのが正直なところ。一概に忙しいか忙しくないか論じることは難しいですが、自分の経験と推測で、お盆のお坊さんの忙しさを考えてみたいと思います。

まずは、お盆のお坊さんの過ごし方の一例として、私のお盆のスケジュールをご紹介することから始めてみます。

お盆って、いつ?

そもそも、お盆っていつからいつまででしょうか。最近は会社のお盆休みのイメージが強く、一般的に8月13日~15日前後を指すことが多くなりました。

しかし私のお寺やその近辺では、お盆とは8月1日~15日あたりを指します。お盆休みや自宅に精霊棚を出す数日間だけではなく、夏の約2週間という幅のある期間をお盆と考えます。

私のお寺・善福寺は、奈良県天理市にある浄土宗のお寺です。善福寺のお盆は三つの期間に別けることができます。

お盆① お墓参り:8月1日~8日(ピークは土日と7日)

前半は、お墓参りの期間。お墓参りの日が決まっている墓地もあれば、お墓参り自体はいつでも出来ても墓地にお坊さんが控えている日は限定されているところもあります。その方が多いかも。善福寺では1日~8日の間に住職や手伝いのお坊さんが控えているので、頼まれればいつでも墓前でお経をあげます。

お参りは涼しい午前中に集中します。午後はかなり少なくなりますが、暑い中控えているだけでも体力を消耗します。伝統的に地元の方は7日に参る人が多いものの、最近は土日に集中する傾向が強くなっています。

お盆② 棚経(たなぎょう)参り:8月9日~14日(ピークは13日と14日)

外回り、檀家さん宅の精霊棚へお参りします。棚(の上のご先祖さま)にお経をあげに行くので「棚経参り」と呼びます。皆さんがよく見るスクーターに乗ったお坊さんは、きっと棚経参りの移動中でしょう。

毎月のお参りには伺っていないお宅でもお盆だけは参ることがあり、この数日間で近隣府県の檀家さん宅をほとんどお参りします。一日に何十軒も参ることになり、必然的にお経は短くなり、移動時間の方が長かったりします。慣れない道を走って迷ったり、渋滞につかまって遅れたり、神経をすり減らします。

棚経参りのピークは、地元を歩いて周る13日と14日。檀家さん宅が密集している町中では隣から隣へ次々にお参りしていきます。善福寺では下駄で歩く伝統があり、疲れにも増して足が痛くなります。

お盆③ 盂蘭盆施餓鬼会(うらぼん・せがきえ):8月15日

お盆の総仕上げです。いわゆるお盆の法要で、各家のお塔婆を読み上げてご供養します。

暑い中たくさんの方が参列されて、お塔婆が読み上げられると焼香してお帰りになります。法要にはご近所のお寺さまも出座いただき、5〜6人のお坊さんで1時間半くらいお勤めするので、汗だくになります。

この法要が終わってひと安心するのも束の間、午後から「送りの墓参り」のラッシュが始まります。

そもそもお盆は、ご先祖さまをご自宅へお迎えする行事。15日夕方には、お迎えしたご先祖さまをまた浄土へお見送り(ご先祖さまをお墓へ戻す意味で「送りの墓参り」と呼びます)します。それで、お盆中に2回墓参りされる方が多いのです。

以上が善福寺のお盆の大まかな流れです。

上記に加え、他のお寺の法要に出座したり、時にはお葬式もあったり、イレギュラーな出来事も入り混じりながら15日間が過ぎていきます。

後編へ続く

桂浄薫

1977年、奈良県天理市・善福寺の次男として誕生。ソニーを退職後、2007年に僧侶となる。2015年、善福寺第33世に晋山し、和文のお経をオススメ。2014年から、おてらおやつクラブ事務局長を務め、お寺の社会福祉活動にコミット。1男2女1猫の子育てに励む。趣味はランニングと奈良マラソン。音痴と滑舌が課題。