「気にする」は「気づき」の一歩手前です

彼岸寺の人気連載『禅僧の台所』の吉村昇洋さんが初めての単著『気にしなければ、ラクになる。』を発行されました。「髪型が決まらないと一日がユウウツ」から「シングルライフの老後が不安まで」と言うとずいぶんザックリしていますが、20代後半から40代の女性が「気にしすぎてしまうこと=とらわれ」を64の項目でピックアップ。禅僧であり、臨床心理士でもある吉村さんがていねいに寄り添い、「とらわれ」のほぐし方を提案してくれるという本です。

私もこの本の構成・編集に関わらせていただきました。今年の春、はじめて広島にある吉村さんのお寺を訪ねたとき、吉村さんはこんなことをおっしゃいました。

「気にしているっていうことは、気づきの一歩手前にいるってことなんですよね」

「気にする」というと、なんだかくよくよしていて良くないことのようなイメージがあります。でも、「気にする」を一歩進めてつきつめていくことができれば「気づき」へと突き抜けることができるのです。吉村さんの言葉を聴いて「あ、きっといい本ができるな」と思うことができました。

本のなかには、人から見たら「そんなささいなことが気になるの?」と思うかもしれない項目もあります。逆に「そんな重たいことにどう応えるの?」というような、人生の深い悩みもありました。でも、吉村さんはどんなときもまずはじっくり悩む人の気持ちを理解して寄り添い、できる限り具体的に悩みから抜け出す方法を案内してくれました。

そして、今「気にする」を「気づき」へと変えていけるように背中を押すような本ができあがったのです。個人的に面白かったのは「友だちをねたんでしまう」という項目の回答。吉村さんは、「ねたみかたが足りません。ねたんで、ねたんで、ねたみきってください」と言いきっていました。中途半端がよくない。覚悟を決めて思いっきりねたんでみたら、かえってネガティブな感情を消す作業になりますよ、と。

「意外に思われるかもしれませんが、「ねたむ」ベクトルへ振りきってしまうことがバランスのとれた状態を取り戻す一番の近道になると思います」

そうなんです。単なる悩み相談本とか、そういうものではない面白さがこの本にはあります。主に女性向けに作られてはいますが、男性が読んでも充分面白いと思います。まずは、書店で見つけたらぱらぱらとめくってみてください。吉村さんらしい、端的な切り口と明るい語り口でついつい読みすすんでしまうと思いますよ。

『気にしなければ、ラクになる。 』吉村昇洋著
心理カウンセラーの禅僧が気にしすぎ現代人におくる説法集!
仕事、恋愛・結婚、人間関係、将来の不安……日々の些細な悩みから人生の迷い ・とらわれまで66のトピックに、吉村さんがていねいに応えてくれる一冊。もや もやした気持ちになったとき、思いつめてしまったとき、悩みすぎて眠れない夜 などに読んで、心をラクにしてみませんか?

お坊さん、地域で生きる人、職人さん、企業経営者、研究者など、人の話をありのままに聴くインタビューに取り組むライター。彼岸寺には2009年に参加。お坊さんインタビュー連載「坊主めくり」(2009~2014)他、いろんな記事を書きました。あたらしい言葉で仏教を語る場を開きたいと願い、彼岸寺のリニューアルに参加。著書に『京大的文化事典 自由とカオスの生態系』(フィルムアート社)がある。