国際派のお坊さん大來尚順さん本懐の新刊『カンタン英語で浄土真宗入門』

『英語でブッダ』や『端楽(はたらく)』などの著者、大來尚順さんの新刊『カンタン英語で浄土真宗入門』(法蔵館)が本日7月10日発売されます。

アメリカ・バークレーの米国仏教大学院を卒業後、ハーバード大学神学部研究員を務めた経歴を持つ国際派のお坊さんとして多方面で活躍される大來さんですが、その土台にあるのは浄土真宗の教え。大來さんご自身も、渡米の背景には浄土真宗の教えを英語で伝えたいという想いがあったと語られており、その夢が実現したまさに「出世本懐(しゅっせほんがい:この世に生れ出でた一番の理由)」とも言えるような1冊です。

この本はタイトルからもわかる通り、仏教の中でも特に「浄土真宗」にスポットを当てています。浄土真宗で用いられる独特の用語はよく誤解・誤用されるものも多く、「他力本願」などがその好例です。先日もサッカーワールドカップで日本がポーランドに負けたにもかかわらず、コロンビアの勝利とセネガルの反則数との兼ね合いから決勝トーナメントに進出した際、長時間ボール回しをして乗り切ったという手段が「他力本願」と揶揄されました。それに対して浄土真宗のお坊さんたちがSNSで「『他力本願』ってそういう意味じゃない!」ということを書き込むなど、サッカーとは別の盛り上がり方をしておりました。

「他力本願」という言葉は、他人の力を当て頼りとしたニュアンスが感じられる字面であったり、なんとなく語感もいいので、そのような意味でつい使ってしまうのもわからなくはありません。しかし実際には浄土真宗の教えの根幹に関わる大切な言葉でありますから、「他人任せ」というようなネガティブな意味でなんとなく使うのではなく、きちんと意味を知ることが大切です。

そのような意味でも、大來さんの書は大いに有意義な1冊となることでしょう。本の中に「他力本願」という言葉としての解説はありませんが、「本願」という言葉と「他力」という言葉について、英語・日本語でしっかりと説明がなされています。例えば「本願」という言葉は「Primal Vow」と訳され、「第一の・根本の」「願い」であると解説されます。また一つの翻訳だけではなく「Original Vow」、「根源の願い」という訳も紹介し、その意味をより深めてくださっています。

また「他力」という言葉も一旦は「Other Power」と直訳のような形で紹介しながらも、「Amida’s working/Power」と意味の上での訳も紹介し、その「Other」というのは、実は阿弥陀仏のことを表しているということも丁寧に解説してくださっています。このように、一旦英語という別の言語を使うことによって、一つの言葉をシンプルに、かつ多角的に表現することができるのが、わかりやすさや正しく理解することに繋がってくるように感じられました。

さらに専門用語だけではなく、「法事」や「焼香」、「念珠」という身近な仏事に関する言葉などについての解説や、浄土真宗で拝読される『正信念仏偈(しょうしんねんぶつげ)』の日英対訳も掲載されています。浄土真宗のことについて学び始めたい方はもちろん、真宗のお坊さんにとっても学びの多い1冊となるのではないでしょうか。

日下 賢裕

不思議なご縁で彼岸寺の代表を務めています。念仏推しのお坊さんです。