働くすべての人へ。大來尚順さん新著『端楽(はたらく)』

『英語でブッダ』の著書、そしてゴールデンで放送中の『ぶっちゃけ寺』に出演されていることでもお馴染み、大來尚順さんの新著が届きました。タイトルは『端楽』と書いて「はたらく」と読みます。

大來さんと言えば、英語が堪能なお坊さんというイメージですが、今回は大來さんのビジネスマンとしての経験が活かされた一冊となっています。タイトルの「端楽」という言葉は、あまり見慣れない熟語ですが、「はたらく」ということの本質は、「端(はた)」、つまり自分の周りの人たちに「楽(らく)」をもたらすことにある、というところからきているのだとか。

本の構成は3つのパートからなっています。第一章では「調子が【悪い】と感じる時」、第二章では「調子が【いい】と感じる時」というテーマが設けられ、「諸法無我(しょほうむが)」や「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」といった仏教の言葉を元にして、働く人へのエールとアドバイスを送るという形で綴られています。

中でも特徴的なのは、仏教の言葉をただ単に解説するにとどまらず、働く人に向けた味付けがなされている点です。なんとなく自分の生活とかけ離れたものであると感じがちな仏教の教えですが、現役のビジネスマンとして働いておられる大來さんの挫折や失敗、そして成功といった実体験を通して味付けされていることで、より味わいやすく、身近なものとして受け取ることができます。中にはかなり「ぶっちゃけ」られている事柄もあり、「あるある」と共感しつつも、これまでの自分の働き方を見つめなおすきっかけも与えてくれることでしょう。

そして私が個人的に注目したいのは第二章です。仕事が上手くいっていない時に励ましてくれたり、支えとなる言葉だけでなく、物事が順調に進んでいる時にこそ、今一度冷静に自分と周囲を見つめ直すことを教えてくれる。そこに大來さんのお坊さんとしてのまなざしと、真摯な歩みを感じることができました。

そして最後の第三章では、取り上げた仏教の言葉に、より丁寧な解説がほどこされ、仏教の考え方に触れるための入門書としてもお読みいただけます。仏教の言葉から自己の在り方を振り返りつつ、そこからもう一度、仏教の智慧を味わい直し、それをまた日常に活かしていく。そうやって何度も何度も、仏教の教えと自分の姿と行きつ戻りつ、味わいを深めていける、スルメのような一冊となっています。

忙しさの中に、つい見失いがちな「はたらく」ことの本当の意味。ぜひこの『端楽』をお読みいただいて、仏教の智慧とともに、「はたらく」ことを見つめ直していっていただけたらと思います。

 

日下 賢裕

不思議なご縁で彼岸寺の代表を務めています。念仏推しのお坊さんです。