気にしすぎ現代人への処方箋「気にしない生き方」でもう気にしない!

最近、過剰反応の世の中だと思いませんか? インターネット時代、SNS時代で情報は瞬時に全世界に伝わり、すぐに賛否両論さまざまな反応が返ってきます。どんな反応があるのかわかる面白さ、みんなでいろんな意見を共有できる、シェアされて一気に周知される、などプラスの面も大きいものの、逆に、信憑性に欠ける情報も多い、一旦拡散すると訂正や削除が難しい、批判的な意見が集中する、というようなマイナス面も目立ちます。

特に否定的な意見は幅を利かせやすく、だんだんエスカレートして情報発信者やニュースの当事者などを弾劾するほどに世論を形成してしまうケースすら見受けられます。それゆえ、批判に対して過剰に反応せざるを得なかったり、批判を恐れて最初から萎縮してしまったり、そんなことが増えているのではないでしょうか。自分自身の意見を堂々と表明すればいいわけですし、それを批評する自由も当然ありますが、必要以上に他人の評価を恐れたり批判に対してすぐ謝罪したりすることは、自由で活発な議論を損ねる可能性があります。

現代人はとかく周りの目や他人の評価を気にしすぎ。日常の人付き合いのなかでもビクビクおびえながら過ごすような、気にしすぎムードに支配されているといっても過言ではありません。

そんな気にしすぎ現代人に贈る一冊が、料理僧としてメディアにもよく登場する吉村昇洋さんの『気にしない生き方』(幻冬舎エデュケーション新書)。曹洞宗のお坊さんであり、臨床心理士(心理カウンセラー)でもある吉村さんが、ときにお坊さんの顔で、ときには臨床心理士の顔で、柔軟に立場を変えながら現代人の悩みに答えています。実は、本書は数年前に刊行された『気にしなければ、ラクになる。』(幻冬舎)を改訂増補した新書版。新書ならではの手に取りやすさと、女性向けだった前作がより一般化されて身近な話題が多くなったのがポイントだとか。ちょっと中身をのぞいてみましょう。

Q. ミスをしたときに落ち込んでしまう
A. 「100%自分のせい」と思えば、気持ちがラクになります。

実に潔い回答です。「私も悪かったけど、あの人だって・・・」と、つい言い訳しがちな私たちではないでしょうか。その姿を痛感させられたのが、吉村さんが修行された曹洞宗の大本山・永平寺。一切の言い訳が許されないばかりか、連帯責任が当たり前。そりゃあ愚痴も出そうなものですが、そのときに見えてきたものとは?

Q. 家族の死から立ち直れない
A. 今感じている感情をそのままかみしめてください。

最近よく聞かれるようになった”グリーフ”とは、大切な人やものを失くしたときに感じる感情やプロセスのこと。グリーフの最たる場面である枕経やお通夜のとき、吉村さんは遺族の方に「今のお気持ちは?」と必ず尋ねるそう。遺族が混乱してとりとめのないことを言ったとしても、吉村さんは上記のように返事されるのだとか。その意図は?

Q. いつも三日坊主になってしまう
A. やる気だけでは続きません。環境を整えることも大切。

「三日坊主」とは「衝動的に頭を丸めて出家した人が、三日も経たずに逃げ出してしまう」ことから生まれた言葉だそう。修行を積んだお坊さんでもスポーツにダイエットに資格勉強にトライするも、続かずに三日坊主になることもしばしば。でも、お坊さんになれたのは規定の修行だけはなんとか続けられたから。ではなぜ続けられたのでしょうか? 強い意志のおかげ? いえいえ、お坊さんになるという覚悟を支える環境があったから、と吉村さんのご指摘。それを応用すれば、あなたも三日坊主にならずにモチベーションが持続できるかも!

Q. 「どうせわかってもらえない」と諦めてしまう
A. 水が冷たいか温かいかは触ってみなければわかりません。

そして個人的に最も「気にしすぎ」がほぐれたのがこの回答。親と同居し、同じ僧侶として働き、親も老齢でいろんな問題が出てくる頃、という私にとって親との関係は悩みのタネ。意見が食い違うことも多くなってきて、親子でも言いたいことを言えない場面が増えています。そんな私に「変化を望まないほどに安定した関係性は、本音を言うことで壊れるようなものではないはず。思いきってやってみる価値はある」という指摘は勇気を与えてくれます。僧侶として諸行無常を説きながらも、親や家族といった身近な存在は変わらないものと考えていて、それゆえ変化を望んでいない、そんな自分に気づかされます。しかし本音を避けてばかりでは状況は改善しません。禅語の「冷暖自知(れいだんじち)」が示すように、「水が冷たいか温かいかは触ってみなければわからない。過去に縛られずにあなたからアクションを起こしてみましょう」という一文に、新鮮な気づきを得た思いです。

以上ごく一部だけ取り上げてみましたが、ご覧の通り硬軟おりまぜながらの回答は、仕事の場面や日常生活で応用の効く視点にあふれています。他にも「坐禅ワーク」「食事作法」「お掃除」など、禅の作法がわかるコラムも実践的です。

まあ、難しいことは気にしないで、イケてるお坊さんのお悩み相談本をちょっと手に取ってみませんか? いつの間にか気にしすぎていたことに気づくかもしれません。でも大丈夫。「気にする」は「気づき」の一歩手前なのですから。

(桂浄薫)

桂浄薫

1977年、奈良県天理市・善福寺の次男として誕生。ソニーを退職後、2007年に僧侶となる。2015年、善福寺第33世に晋山し、和文のお経をオススメ。2014年から、おてらおやつクラブ事務局長を務め、お寺の社会福祉活動にコミット。1男2女1猫の子育てに励む。趣味はランニングと奈良マラソン。音痴と滑舌が課題。