【出版記念イベントをレポート】精神科医・名越康文さんの結論「答えは仏教の教えにある」

「どうせ死ぬのになぜ生きるのか?」この問いに答えられる人がどれだけいるでしょうか。答えを与えてくれるのは宗教、道徳、倫理、あるいは心理学や生物学などの科学? そもそも疑問にも思わずに生きている人が大多数でしょうか。答えを持たずとも生きていけますしね。

しかしながらこの疑問に向き合ってしまった人、それがテレビでもお馴染みの精神科医・名越康文さん。なんと最初は10歳のとき。それから40年以上を経てたどり着いた結論が「答えは仏教の教えにある」とのことですから、名越さんの新刊『どうせ死ぬのになぜ生きるのか – 晴れやかな日々を送るための仏教心理講義』(PHP新書)をチェックせずにはいられません!

その発刊を記念して、名越さんのトークイベント「名越康文先生を囲む会」が大阪で開催されました。イベントも本の中身もさることながら、まずはこのイベントを主催する書店のことに触れたいと思います。

大阪市内の隆祥館書店は昔ながらの「町の本屋さん」といった佇まいの小さな書店。しかし店内はなかなかの蔵書量、しかも営業時間は朝の8時半から夜の24時までというから驚きです。朝の通勤前はもちろん、残業や飲み会の後でもフラッと立ち寄れます。店を切り盛りする二村知子さんはお客さんと話すなかで本の嗜好を覚え、次回にはオススメの本を紹介してくれるというカリスマ店員。さらに、毎週のように作家と読者が交流できるイベントを開催していて、有名作家が招かれることも珍しくありませんし、ここからブレイクのキッカケを掴んだ作家もいるとか。インターネットで本が買える時代に、町の書店の可能性をこれでもかと示してくれています。お寺の活性化のヒントにも大いに参考になりそうですね。

▼ 隆祥館書店
http://atta2.weblogs.jp/ryushokan/

▼ 書店は斜陽産業なんかじゃない、作家と読者をつなぐ「美人カリスマ書店員」の”感性”と”実行力”(1/5ページ) – MSN産経west
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/130519/wlf13051918010030-n1.htm

そして今回11月19日(水)19時の「名越康文先生を囲む会」には、著者の知名度のせいか隆祥館書店の集客力のお陰か、平日にも関わらず会場は100名を超える人が集まり、すごい熱気で溢れかえっていました。女性が少し多いような気がしますが、老若男女さまざまな方が手にしたばかりの新刊に目を通しながら名越さんの登場を待ちます。名越さんが現れると大きな拍手、名越さんは満面の笑顔、もう聴衆の心をつかみにきているよう。テレビで見るままのスタイリッシュな服装、包容力を感じさせる大きな背丈、関西弁で聴衆に問いかける姿など、ある種のカウンセリングの雰囲気に飲み込まれそうになります。それも名越さんの魅力ということかもしれませんね。

トークは、本の中身について二村さんが率直な疑問を投げかけながら進行。二村さんの質問に「そんなん言うたらボクの本読む気なくすやん」「絶対NHKではされへん質問やわ〜」「今更そんなこと聞く?」などツッコミを入れながら、徐々に名越さんの考える仏教の実践、つまり瞑想について話が展開しました。おぼろげな記憶に残ったコメントを抜き出してみます。

・3分か1分でも日常の空いた時間にスッと瞑想してみる
・リラックスしようとする瞑想は失敗する
・自力では説明できないピンチに陥ったときが本気になるチャンス
・幸せは目の端で捉える
・今世で出会う人とは前世からの因縁がある
・輪廻転生でとんでもないことしてきた、この人生が少しでもマシなことをするチャンス

などと話題は移るなかであっという間に1時間。しかしこれからが本番とも言うべきスペシャルゲストの登場。なんと、思想家・武道家の内田樹さん、宗教学者の釈徹宗さん、文筆家・カフェ店主の平川克美さんを交えてのクロストークとなりました! それぞれお一人でも何時間でも話を聞いてみたいのに、四人が居並ぶ姿は圧巻。短い時間でもそれぞれの言葉・思想が聞けて非常に興味深いものとなりました。またまたおぼろげな記憶からコメントだけ記しておきますね。

・名越さんがクリニックからメディアに移ったのは、集団的治療へ舵を切った。テレビの視聴者みんなまとめて面倒を見るつもり(内田樹さん)

・仏教心理学をする人で密教をベースにする名越さんは稀有な存在。心理学・精神学は自我を機能させる方法論、名越さんはそれでは解決しない問題に直面して、仏教しかないと気づいた。自我が虚構であると気づかせる仏教(釈徹宗さん)

・心理学も仏教も心の暗がりをのぞき見ちゃったことが始まり。自分は自分のことをよく知らない(平川克美さん)

以上、ざっくりとしたレポートとなりましたが、少しでも雰囲気、先生方と聴衆の熱気が伝われば幸いです。ぜひ本を手に取ってもらいたいですし、機会があれば隆祥館書店やそのイベントに足を運んでいただければと思います。 合掌

隆祥館書店Facebookから写真を拝借しました

私、写真の中央で釈さんの後ろで丸坊主が丸かぶり

なぜ私たちは悩みや不安からいつまでたっても解放されないのか。それは「どうせ死ぬのになぜ生きるのか」という問いに答えられないために、一つひとつの悩みの根底にある「漠然とした不安」が解消されないからではないか。

(桂浄薫)

桂浄薫

1977年、奈良県天理市・善福寺の次男として誕生。ソニーを退職後、2007年に僧侶となる。2015年、善福寺第33世に晋山し、和文のお経をオススメ。2014年から、おてらおやつクラブ事務局長を務め、お寺の社会福祉活動にコミット。1男2女1猫の子育てに励む。趣味はランニングと奈良マラソン。音痴と滑舌が課題。