仏教×現代社会。『日本の未来 アイデアがあればグローバル化だって怖くない』

仏教×現代社会。少し前から「欧米主導の金融資本主義、この行き詰まりを打破するヒントが『仏教』にあるのではないか?」といった言論や書籍が見かけられます。確かに宗教(仏教)とは単なる情報/知識ではなく、よりよく生きるための実践技術であるはず。

「仏教が現代社会と交わると、どんな解が見えてくるのか?」

まさしくこの問いに答えるようなタイトルの本書。スリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)の長老であり、来日して三十年以上=日本をよく知るアルボムッレ・スマナサーラ長老の新著です。

本書で取り上げられる題材は「現代日本人の疲弊感」「TPP問題」「中国等、諸外国との関係」「オリンピック開催について」「少子化問題」などなど、時事ネタも含め多岐に渡ります。

しかし、なんと、第1章の冒頭で「今回のタイトル『日本の未来』は私にとってやりにくいテーマです」――バッサリ「やりにくい」と言われてしまいます。なぜなら、「仏道というのは『今』を生きること」だから。「未来は『今、何をやるか』で決まる」から。

うぅむ、それは分かるんです。分かるんですけど、でも今、何となく日本も世界もこのままではいけないような印象がありますよね…… では、「今」を生きることで現れる理想社会とは、どんなものなのでしょう?

そんな、興味がそそられる問い「資本主義社会に代わる仏教が描く理想社会は?」についても、「ない。」と、これまたバッサリ。

輪廻することを前提に「今」を生きる

仏教を通じて見える世界は、何かを壊して何かを作る世界。

プラスだけでなくマイナスも作られる。そして、すべては無常の法則で変わっていき崩壊する。常に変わりゆく世界の下、すべての生命と共存できるよう穏やかに「回す」……輪廻することを前提に、新しいアイディアを持って「今」を生きること。

「保守的でないこと」「仲良く楽しく対等に競争する商売」は仏教的であると言い、本の中ではスマナサーラ長老のアイディアも色々書かれています。

とても読みやすい本ですので、 「一体、仏教を通して社会を考える/生きるというのはどういうことなんだろう?」  この問いに興味のある方はぜひご一読ください。

最終章では「少子化問題」について「仏教では人間が財産。人類の最大の宝物は子どもであると再び理解すべき」と語られています。が、その前に「パンダが繁殖したくないなら自然にまかせておけばいい」という言葉もありました。

もしかしたら、人間ももう繁殖したくないのかもしれません。

「『子どもがいると不自由』という意識、繁殖能力も衰えており、社会に子どもが少なくなって扱い方さえも分からなくなっている」。

ですが、私はこの世界を次の世代に「最高のプレゼントだよ、思いっきり楽しんでね」と渡したいなと考えています。

「じゃあ、どうしたらいいのかな?」

ぜひ皆さんと一緒に考えながら、実践して進んでいけたら幸いです。

「たった一人でも慈悲の実践をすると、周りが幸せになります」
「世界平和以上の、すばらしい世界が広がります」

Q. あなたにとって彼岸寺とは? A. 仏教てなんだろう寺院、です。 姉弟育児中の元システム屋。仏教に興味を持ち、主に裏方をお手伝いしています。「興味あるけど、仏教てなんだろう」という皆さん、一緒に「なんだろう」しませんか。